作戦

たけちゃんとるーちゃんの光景を、隠れて一部始終見ていた執事長の北条さんと、執事の藤原さんは話し合った。

「瑠璃様のボディーガードを、あの少年に頼んでみようか。」

「気さくで優しそうだから、いいんじゃないか。」

たけちゃんは眠そうに空を見ている。

「あー、暇。」

2人の執事達は物陰から飛び出した。

「よし、今だ!」

北条さんは、努めて丁寧にたけちゃんに話しかける。

「もしもし、そこのあなた。暇そうならボディーガードになる気はありませんか。」

たけちゃんは、店の外へ出てきて聞いた。

「え、誰の?」

「さっきの少女、瑠璃様のボディーガードナイトです。」

たけちゃんは驚いた。

「瑠璃様って、なんや。」

「瑠璃様は、新堂財閥のご息女。外に出れば危険がたくさん待ち構えています。

私共だけでは手に負えません。ボディーガードになって下されば、それ相応のお礼は差し上げましょう。」

藤原さんも口を挟んだ。

「あなた様が、側にいて下されば、心強いのですが・・。もちろん他にもボディーガードは探すつもりでございます。」


するとたけちゃんは態度を一変。厳しい表情を見せた。

「ふざけるのもええかげんにしーや。引き受けられへん、そんな話。」

スタスタと店の中に入っていく。

「何が財閥じゃ、どアホ!」

フンといった表情で、2人の執事を見つめた。

「気が変わったらすぐ来てください。いつでもお待ちしております。」

北条さんは、うやうやしく名刺を差し出した。

すると、たけちゃんは目の前で名刺をビリビリと引き裂いた。

「帰ってや! ここはアンタらの来るところやない。」

「そこをなんとか・・・。」

「やかましい!」

2人の執事は、トボトボと帰って行った。


るーちゃん、堪忍な・・・。


たけちゃんは心の中でそう思った。

しかし、

「あの少年、一筋縄ではいかないようだな。」

「だが、計算通りだ。」

と、執事達が満足げな会話をしていることに、たけちゃんは気が付かない・・・。






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