友情
瑠璃とさとるが、おねぇコンビ、ブラック&ブラックに絡まれている時だった。
どこからか、2人の少年が駆け付けた。
1人は、息を切らせた、武。もう1人は見知らぬ少年だった。
「お前ら、何しとる。さっさと失せや!」
武は鬼のような形相で、ブラック&ブラックに殴りかかろうとする。
「きゃーーー! 顔はやめてー、顔はー。」
「やかましいわ!」
あっという間に、殴る瞬間背負い投げに姿勢を変え、ブラック&ブラックにダメージを与えた。
見知らぬ少年は、瑠璃とさとるを見ると、
「大丈夫か、2人とも。」
と声をかけた。
「るーちゃん達には指一本触れさせへんで!」
ドスのきいた声で、武は怒鳴った。
「なによぉー小僧が! あいたたた。」
「兄貴、あれは・・、いたたた。」
「えっ、あら、まずいじゃないのよっ。」
ブラック&ブラックは武の顔を見ると、
「お、おぼえてらっしゃいーー!」
と、退散した。
走って来たのか、武の息は上がっている。しかし、深呼吸すると、
「あんたら、大丈夫やったか。」
と、瑠璃とさとるに声をかけた。
「うん、僕はなんともないけど、るーちゃんが転んで怪我を・・。」
と、さとるはすまなそうに言った。
武は腰に下げているポーチから消毒薬と、絆創膏を出すと、手慣れたように瑠璃に応急手当てをする。
「わーい、たけちゃんありがとう。」
瑠璃は武に抱きついた。
「え、いやいや。すまんなるーちゃん、怖い思いをさせてもうて。」
武は照れくさそうに言った。
「でも、何であたしたちが追いかけられてるって分かったの?」
「僕もそう思った。」
瑠璃とさとるは不思議がった。
「あ、それはな?」
と、武が振り返ると、見知らぬ少年の姿はなかった。
「あれ? どこ行った?」
武も不思議がった。
武が言うには、見知らぬ少年が、たこ焼きを買い上げて、こう言ったそうだ。
「あんた、るーちゃんの友達だろ! 誘拐されそうなところを見たぞ。
急げ、俺についてこい!」
「あんた誰?」
「るーちゃんの友達・・。」
色素が薄いのか、やや金髪、色白の少年は続けて言った。
「それから、るーちゃんを1人で歩かせるな。誘拐しようとするやつは、これからも出てくるから気をつけろよ。」
「なんでそれを俺に言うんや。関係ないやろ。」
武は、先程の執事の誘いを断ってしまったことで、不機嫌だった。
「関係あるから言ってるんだよ。」
「えっ?! まさか本当に・・・。」
「心当たりがあるならついてこい!」
「と、いうわけでその少年について、走ってきた。」
と、武は言った。そして、
「さっきの二人組、見覚えがある。俺にも他人事じゃなさそうだわ。」
と、すまなそうに、2人に詫びた。
「うわー、困ったね。もしその言葉が本当なら、るーちゃん1人外に出すの危険じゃない?」
「あたし、さっきのお兄ちゃんは知らないよう。でもお外行きたいよ」
「えっ?」
武とさとるは顔を見合わせた。
「それにしても、何で僕まで狙われたんだろう。」
と、さとるは言った。
「それも心当たりがある。」
武は謎めいた言葉を口にした。
「え?! 何?」
「今は言えん。すまんな。」
そして、武は、もう一度深呼吸して、さとるに向かってこう言ったのだ。
「なあ、2人で、るーちゃんの護衛やらんか?」
「あ、僕も同じことを言おうと思ってた。」
さとるは、思わずこう言った。自分は大丈夫だが、この不憫な子は放っておけない。
「何や、俺ら気が合うな。」
武はさとるの肩をポンポンと叩いた。
「ところで、あんた、るーちゃんの友達?」
「いや、さっき知り合ったばかり。」
「わいもや。」
武とさとるは笑った。
「まあ、ええわ。オレ、三河武。よろしくな。」
「僕、天上さとるっていうんだ。よろしく。」
こうして二人の間には友情が生まれたのだった・・・。
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