21話 彼女との時間

 あたしは荒井由香にキスをした。付き合って1週間。由香の唇はもちもちして感触がいい。由香はあたしの胸を触った。あたしは思わず吐息を漏らした。


 あたしこと横浜千奈津は由香のことが好きでたまらない。きっと由香もあたしのことが大好きなはず。自信はある。


 最近では毎日のようにお互い満足がいくまでこのような行為をしている。あたしたちはレズビアン。男は嫌いというより興味がない。ノーマルの女から見たら理解できないと思う。だって、彼女達は男が好きだから。


 由香は今あたしの住んでいるアパートにいる。時刻は午後2時頃。真昼間からするこういう行為はやめられない。夜のようにベランダにはレースだけじゃなく、カーテンも閉める。さすがに誰かに見られるのは恥ずかしい。見せ物じゃないし。


 薄暗い部屋の中でする行為は興奮をかき立てられる。


 私達はお昼ご飯を食べていない。さすがに空腹感を覚えた。

「ねえ、由香」

「うん?」

「お腹空かない?」

「あ。そういえば朝から何も食べてない」

 何か作ろうか。

「うん。ありがと」

 あたしは起き上がり、服を身に着けた。


 冷蔵庫を開けて卵を2個取った。それとハム、ブロッコリーも出した。目玉焼きにした。ハムは焼いてブロッコリーは食べやすいように切り、茹でた。

 それらを2人分皿に盛り付け、部屋の中央付近に置いてある白いテーブルに並べた。ライスは朝、由香が来るかもしれないと思って少し多めに焚いておいた。お茶碗にそれぞれ盛ってテーブルの上に置いた。お味噌汁はインスタントのものにした。


「由香、できたよー」

「あ、ありがとー」

 少し眠そうな由香。可愛い。それは言わなかったけれど。言うとこっちまで恥ずかしいから。

 彼女も服を着てこちらにやって来た。

「いい匂い!」

「大したもの作った訳じゃないけどね」

「ありがとう!」

「何も、改まって言うことじゃないよ」

 あたしがそう言うと、

「今度はわたしが作って食べさせてあげる」

 と、由香は嬉しいことを言ってくれた。

「うん。楽しみにしてる」

 いつもは少しお金がかかるけれど、外食ばかりしていた。それか、コンビニのお弁当か。AV女優でもある由香はレズビアン専門の作品に出演している。あたしもレンタルして観たことはあるけれど、凄い過激。あたしたちのやっていることで果たして満足しているのだろうか。訊いてみてもし、満足できてないと言われたら怖いので訊いていない。そんなことは言わないかもしれないけれど。こういう簡単な料理でいいなら今度からそうしようかな。

支出も少し控えたいし。


 あたしと由香は向かい合って食べ始めた。

「うんっ! 美味しい!」

 彼女は絶賛してくれた、嬉しい! また今度作ってあげよう。


 遅いお昼ご飯も済ませ、食器洗いをした。

「あっ! そういえば」

「ん?」

 唐突に由香は声を上げた。

「明日、撮影だわ」

「そうなんだ。がんばってね」

 あたしは密かに思っていることがある。由香には内緒だけど、AV女優を辞めて欲しいということ。理由は、他の女と絡むのも嫌だし、彼女の病気にも良くないと思う。由香が抱えている病名は「うつ病」 病気を良い方に向かわせるのに歯止めをかけているような気がする。仕事とはいえ、その気もないのに撮影を行うなんてストレスの塊じゃないか。でも、本人はどう思っているかは訊けていないからどうすることもできない。由香にどう思ってる

か確認してみようかな。あたしはそうすることにした。

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