第2話 友達はゲイ

 僕の体調は悪くなる一方。辛い。どうしよう。友達に相談してみようと思い床に放置してあるスマホを手に取った。相手は男性。名前を探し出し発信のボタンを押した。今は20時30分過ぎ。先程スマホを見た時、そう表示されていた。数回呼び出し音が鳴り、繋がった。

「もしもし」

声が小さいのは自覚している。

『もしもし。剛輝さん? 元気ない声出してどうしたのさ』

「最近、調子悪くて困ってるんだ。亮君、話しだけでも聞いてくれない?」

友達の名前は有馬亮ありまりょう。本人から聞いていることがある。それは彼がゲイだということ。でも、僕は偏見は持っていない。でも、本人は……。

『俺の話も聞いて欲しい、良い?』

と、亮君は言った。

「うん、聞くよ。僕の話は後でもいいから亮君先に話して良いよ」

『ありがとう。実はね……。職場で嫌なことがあってさ……』

亮君は電話口ではあるが声のトーンが明らかに低い。相当落ち込んでいるようだ。

「うん、何があったの?」

『あのね、新しく入社してきた子と仲良くなって俺のこと話してみたの。そしたら……』

彼は洟をすすり上げて嗚咽を漏らし始めた。

「あらら……。無理して話さなくてもいいんだよ?」

『……いや、聞いて欲しいんだ……』

僕は黙って聞いていることにした。

『気持ち悪いって言われた……』

我慢しきれなくなったようで号泣している。

「ゲイのこと話したの……?」

『……うん……』

「そっかあ、ちなみにいくつの人?」

『18』

「若いね。もしかしたら、そういう性の人初めてだったのかもね」

亮君は黙ってしまった。それから、

『俺、信用出来ると思って話したのに……』

僕は言葉を選びながら話した。

「まあ……そういう人もいるってことだよね」

彼は溜息をついた。そして、

『それはわかっているんだけどねえ』

「最近さあ、LGBTっていうニュースやってるの知ってるよね?」

亮君はうんうん、と頷いている。

「そういう人達は僕の友達の中にもいるから会ってみる?」

『うん、会ってみたい。でも、それってどういう意味?』

彼は少し冷静さを取り戻したようだ。

「いやあ、ただ偏見がないからいいかと思ってね」

『なるほどー』

「じゃあ、声掛けておくね。いつになるかは未定だけど」

『ありがとう!』

会話に少し間があり、亮君が話し出した。

「剛輝さんの話って?」

「あ、うん。さっき調子悪いって言ったけど具体的な症状があってさ。それは、誰もいないはずの場所で声が聞こえるんだ」

「え! 霊の仕業?」

亮君は驚いている。

「それはわからないけれど……名前を呼ばれたり、ネガティブなことが聞こえてくるんだ」

彼は考えている様子で、

「うーん、お祓いに行ってみたらは?」

「そうだねえ、それって神社? それともお寺?」

「多分、お寺かなあ」

彼は土木作業員をしているので訊いてみた。

「亮君の職場で僕みたいに困っている人いる?」

再び考え出した。

「聞いたことないけど、もしかしたらいるかもね」

「行ってみようかな、お寺」

「うん、試しに行ってみてもいいかもね」

言ってから電話を切った。いつ行こうかなと僕は考えていた。


 ついつい長電話になってしまった。時刻は21時30分頃。約1時間話し込んでいた。亮君のような性の悩みがある人は世の中にたくさんいるのかもしれない。それと、僕のような悩みの人も。不意にさっき話していた言葉が聞こえてきた。


オイシンデクレ


ネエネエ


まただ……。こういう言葉が聞こえる度に僕の心はナイフで引き裂かれたように傷つく。今夜も眠れそうにない。困った。そう思いながらベッドに潜り込んだ。

















 

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