第9話 密会

 翌日になり、僕は出かける支度を始めた。三浦加奈さん。どんな看護師だったかな? 自転車でこの町の一番大きなスーパーマーケットに着いた。


 加奈さんは、僕を見つけだしてくれるだろうか。こちらからはどんな顔をしているか覚えていないので見つけられない。


 店の外で太った体に、ブルーのTシャツにシャツを羽織りブルージーンズ姿で待っている。今は四月。北海道の春はまだまだ寒い。髪型は、髪の毛の量が少ないので、思い切って丸刈りにした。この方が少ない髪を大事にとっておくよりも、潔いかと思って。


 僕を選んだ理由を会ったら訊いてみよう。こんな僕の何がいいのか。


 暫く待って、赤い乗用車が店の駐車場に入ってきた。そして、かなりの車がある中から空いてるスペースを探し出し駐車した。こちらを向いて白い歯を、見せている。


 この女性が三浦加奈さん? 水色のワンピース姿で、清潔感たっぷり。可愛い。


 手を振っているので間違いない。彼女だ。僕は思ったことがあるので訊いてみようと思っている。


 心地よい陽射しが降り注ぐ。近付いてきた彼女は、

「こんにちは!」

と、小さくお辞儀をした。僕は緊張してきてぎこちなく、

「こ、こんにちは。どんな看護師さんだったかと思ってたよ」

と言った。そして、

「僕のような患者と会って、大丈夫ですか?」

「まあ、大丈夫っしょ!」

軽いノリだ。年齢はきっと僕より若いだろう。

「山宮さんは26歳だよね? あたしより2つ上だ」

「そうなんだ。じゃあ24歳だね。それと、僕の連絡先よく分かったね」

そう言われて加奈さんは戸惑っている様子。次に発した言葉は、

「カルテを見たのよ」

「なるほど! その手があったか」

「内緒だからね、今日会ってることも」

僕は首を縦に振りながら、

「うん、わかってる。そんなに、おしゃべりじゃないし」

加奈さんは笑顔になり、

「なら、良かった」

「うん、どうして僕を選んでくれたの?」 

恥ずかしそうにしながら、

「優しそうだと思ったから」

「立ち話も何だから、カラオケに行こう?」

と、加奈さんは誘ってくれた。

「うん、別々に行くの?」

「まさか。帰りここまで送ってあげるから、あたしの車で行こう?」

そうしてくれるとありがたい、と思って、

「うん、よろしくお願いします」

と、頼んだ。

加奈さんは、微笑んでいた。その笑みにどんな意味があるのだろう。


 加奈さんの車まで行き、

「悪いけど後ろに乗ってもらっていい?」

「良いけど、なんで?」

彼女はまた微笑んだ。その笑みの意味を知りたい。

「同じ職場の人間と会わないとも限らないじゃない?」

僕はやっぱりか、と思い少し気分を害した。でも、仕方ないか。僕は気分を切り替えるために何を歌うか訊いてみた。どうやらJ-POPらしい。「僕と同じだ」と言うと、

「へー! そうなんだ。好みが合うね」

車に乗りながら喋り、すぐに発車した。






 


 

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