第5話 いとこはレズビアン

 今日は土曜日。僕の体調は相変わらず良くないまま。幻聴も聞こえる。そんな中、母が言うには家にいとこがあそびに来るらしい。

 僕はベッドから這い出て、床に置いてあるスマホを取った。時刻は13:02と表示されている。

「はー、調子悪いなぁ……」

というのを吐息とともに漏らした。そのとき、家のチャイムが鳴った。いとこの千奈津が来たかな、と思った。母が玄関に出て、応対しているようだ。その声は二階にいる僕の部屋まで聞こえてきた。

「千奈津ちゃん、いらっしゃい。久しぶりねぇ」

母は嬉しそうだ。

「こんにちは! おばさん! お久しぶりです」

「お母さんは?」

「あ、今車にいます! たぶん荷物を持ってくると思います」

千奈津のお母さんというのは、母の妹のこと。

「そうなんだ。ちょっと、おばさん見に行ってくるね! 二階に剛輝いると思うから行ってごらん。最近、よく分からないけど元気ないから、元気にしてあげて」

言ってから、玄関から出ていく音が聞こえた。その後、階段を登ってくる足音が聞こえた。きっと、千奈津がやって来たのだろう。

今はあまり人に会いたくないなぁ、と思ったが言えない。足音が二階まで来たのが聞こえた。ノックがコンコンと二回鳴った。

「剛輝?」

返事をしないでいない振りをしようとしたけど、開けられたら最後だと思ったので、

「はい」

と返事をした。ドアが大きく開かれ千奈津が入って来た。

「久しぶりね。おばさんから聞いたよ。最近、元気ないんだって?」

相変わらず活発な子だ。

「そうなのさ、幻聴っていう症状があるよ」

彼女は不思議そうな顔つきになった。

「幻聴? 聞いたことはあるけど、よくわかんない」

「そうかぁ」

お互い少しの間、沈黙になったけれどすぐに、

「あたしはそういうのよくわからないけれど、気にしないことじゃないかな」

僕は、気になるから言ってるのに、気にしないとかはできないと思った。なので、

「気になるから言ってるんだよ」

そう伝えた。すると、

「そうなんだ。じゃあ、気の持ちようではないの?」

「そうだね。そういうのではないよ」

千奈津は腑に落ちない様子だ。と、いうことは幻聴も気の持ちようと思っているのか。違うのに。

「話し変えていい?」

「うん、いいよ」

「あたしね、好きな人がいるの」

お! この話しになったか、と思った。

「どんな男?」

「え? あたし、男って言ってないよ」

頭に疑問符が浮かんだ。どういうこと?

「剛輝に言ってなかったっけ?」

「何を?」

「あたしね、レズビアンなの」

僕は初耳なので驚いた。

「マジで?」

「マジだよ。大マジ。びっくりした?」

返答に詰まったのでいや、そんなことないよ、と嘘をついた。

別に偏見はないし、差別はしないけれど今後どう接すればいいかわからなくなった。



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