日本円から始まる異世界造り

第22話 村を見てまわろう

「そういえば名前を名乗っていなかったな。私の名前はケインだ」

「ケインさんですか。オレは神野透。で、こっちがケルちゃんにアメジストです」

「どうもー」

「よ、よろしく」

「こちらこそ、よろしく」

　オレの紹介に続くようにケルちゃんとアメジストが挨拶する。

　その後、まずオレ達はケインを連れて近くの村に移動する。

　そこでは農作物を収穫した村人達がいつものように作業している姿があった。

「お、これは領主様。わざわざお越しいただき、ありがとうございます」

「こんにちわ。サムソンさん。いつも農作物の収穫お疲れ様です」

「いえいえ、これも領主様のおかげですよ。我々はそれを広げ、収穫しているに過ぎませんから」

　村人からの挨拶をいつもどおり笑顔で受け取るオレであったが、しかし、そんな何気ない風景に対しケインはひどく驚いた様子であった。

「と、トオル君。ここでは農作物が収穫出来るのかね！？」

「え、あ、はい。そうですね」

「そ、そんなはずは……！？　ここは確か平原以外なにもない土地だ。これだけの農作物を取るなんてできるはずがないぞ！」

　そう驚くケインの前では村人達が収穫した麦や米など、様々な農作物が荷台いっぱいに積まれていた。

　ああ、まあ、確かに最初ここはなにもなかった土地だからな。

　それを知っている人からすれば、驚いて当然か。

「まあ、色々あってオレやこの村の人達で稲とかを植えて農作物を採れるようにしたんですよ」

「な、なんと！？」

　オレの説明に驚くケインであったが、それに頷くように村人のサムソンが頷く。

「本当ですよ。そちらのお兄さん。まあ、正確には我々は領主様が作ったものを広げて、効率的に収穫してるだけですけどね。ちなみに農作物だけじゃなく、近くには牧場や川なんかもありますから、肉や魚にも困っていませんよ」

「な、なんだと！？」

　サムソンの発言にさらに驚くケイン。

　彼はそのまま「今の話は本当なのかね！？」とオレに食いつく。

「ええ、よければ見てみますか？」

「あ、ああ！　ぜひ頼む！」

　あまり熱く迫るため、村の案内はひとまず置いておいてオレはケインを連れて近くの牧場へ移動する。

　そこでは牛をはじめとした様々な動物を柵ごとに管理している牧場があった。

「おー、領主様。こちらにいらっしゃるなんて、お久しぶりですねー」

「もー」

　オレ達が近づくと牧場を管理している管理人の一人が近づき、気さくそうに話しかける。

「ニールさん。久しぶりです。牛の調子はどうですか？」

「見ての通り、順調ですよ。今朝も新しい子牛が三頭も生まれましてね」

「本当ですか！　それは順調ですね」

「ええ。あ、ちなみに鶏も増えてきたんで、昨日街のギルドに頼んで新しい鶏小屋も建ててもらったんですよ。見てください、これ。立派なもんでしょう！」

　そう言ってニールが指した方向には家と呼んでいいほどの立派な鶏小屋が出来ていた。

　「よければ、中を見ていきますか？」と誘われたので中に入ってみると、そこには無数の鶏達が例の鳴き声を上げながら、足元の藁を踏みしめていた。

「これは、やっぱりすごい匂いですね」

　入って最初に感じたのはやはり鼻を突く動物の匂い。

　いくら中が広いとはいえ、百匹以上の鶏がいる空間はさすがに動物の匂いが蔓延している。

「ははっ、確かに慣れないとこの匂いはキツイですよね」

　しかし、さすがは動物の世話に慣れているのかニールは慣れた様子で笑っていた。

　そのまま鶏のいる方へ近づき、なにやら地面にうずくまっている鶏をどかすと、そこから生まれたばかりの真新しい卵を数個持ってくる。

「ほい、領主様。よければ、これもらってください。産みたてですから、美味しいですよ」

「お、それじゃあ、遠慮なくもらいますね」

　オレはもらった卵をそのままアメジストに渡し、彼も「こ、今晩の料理に使いますね！　ご主人様！」と目を輝かせた。

　なおケルちゃんは野生の本能が疼くのか、目の前でたくさんウロチョロしている鶏を見ては尻尾を激しく動かし、ウズウズした様子を見せている。

　とりあえずオレ達はそのまま鶏小屋を出て、再び牧場の方へと向かう。

　そこでは柵の向こう側で、たくさんの牛や動物達が平野を思い思いに過ごしていた。

「し、信じられん……。先ほどの鶏の数……。しかも、この牧場の広さと牛の数……こんな広大なものがこの場所にあったなんて……」

　驚くケインであったが、しかし彼の驚愕はそこで終わらなかった。

「領主様。こちら、先ほど採れた羊の毛皮です。よければ、触ってみますか」

「お、いいですね」

「なっ！？」

　ふわふわと目の前に差し出された羊の毛を触るオレ。うーん、こいつはまた上質だ。いい服ができそうだと感心していると、それを見たケインが慌てた様子で近づく。

「と、トオル殿！　わ、私にもそれを触らせていただいていいだろうか！？」

「へ？　あ、ああ。いいですけど」

　なにやら慌てる彼に手に持った毛皮を渡すと、ケインは再び驚きに口を開ける。

「こ、これほど上等な毛皮を採れる羊がいるなんて……！　というか、この牧場にはどれだけの動物がいるのですか！？」

「いやー、まあ、色々いますねー」

　驚く彼に対し、オレは多少はぐらかしながら答える。

　その後もケインの驚きは止むことを知らず、一通り牧場を案内した後には信じられないといった様子で頭を抱えるのであった。