第14話 牧場と稲作を作ろう

 さて、村人の創造も終わったし次はどうするべきかと悩むオレにすかさずセバスが助言をする。


「主様。次はやはり牧場と稲作の創造がよろしいかと」


「あ、やっぱりそうか?」


「はい。村人達に一から作らせるのもありではありますが、まず最初にそうした形が出来ていれば村人達もすぐに収穫に入れますし、村の発展も早くなります」


 うん、確かに。あとはその牧場や稲作をどう成長させるかは村人達に任せていいと思う。

 オレはまず最初の形を作り、それを提供していくのが良さそうだ。

 セバスの意見に頷くとオレは何人かの村人を連れて、村から少し離れた平野へと移動する。

 ええと、このあたりでいいか。

 オレは財布を取り出し小銭を確認する。現在の金額は12520円。

 うーむ、一円玉がないか。では、十円玉を両替。

 すぐに現れた十枚の一円玉のうちの一つを使い、牧場をイメージする。

 一円玉が地面に落ちると同時に平野を囲むように柵が生まれ、その中に牛、ヤギ、羊といった牧畜用の動物達が次々と生まれる。

 おお、これは便利。

 しかし、異世界だからなのか、オレの知る牛やヤギとは少し形や色が違うものが多かった。


「おおー! 動物が生まれたぞ!」


「すごく広い牧場だー!」


「これが領主様のお力なのですね! すごいです!」


 背後ではオレの創生を間近で見ていた村人達が興奮した様子で騒ぎ出す。


「とりあえず、これで牧場は出来ましたので、よければ皆さんの内、何人かはこの牧場の担当をしてもらっていいでしょうか?」


「はい、もちろんです!」


「牛の世話は我々にお任せください!」


「ヤギや羊は世話はオレがします!」


「オレも!」


 と村人達が次々と手を挙げて、そのまま牧場の中へと入っていった。

 うん、とりあえず牧場に関しては彼らに任せて良さそうだ。

 では、お次は稲作。


 オレは再び何人かの村人を引き連れて、牧場から少し離れた平野に移動する。

 再び財布から一円玉を取り出すと『稲作』のイメージを浮かべながら、それを投げる。

 すると平野に田んぼが生まれ、そこに次々と水が張っていくと、地面から稲がものすごいスピードで成長する。

 それは文字通りあたり一面、稲作状態となり、前に田舎で見た広大な敷地に稲が敷き詰められていた光景を思い出す。これは圧巻だ。

 村人達もその光景には驚いたようで、はしゃぐというよりも息を飲んだ様子だ。

 だが、すぐさま目の前に広がる稲を見ると、その目に期待と興奮を浮かべる。


「領主様、こちらの稲。本当に我々が育ててよろしいのですか?」


「勿論ですよ。皆さんのために作った稲ですから。ぜひ、これらを栽培して、いいお米を作ってください」


「はい! もちろんです! ご期待に応えてみせます!」


 オレからの声援に残った村人達も一致団結し、そのまま稲に向かうと状態を確かめ始める。

 ひとまず、これで村人達へ送るものは出来たかな。

 それを少し離れた場所で見ていたケルちゃんとセバスが近づいてくる。


「さすがはご主人様! すごいです! これで村も発展しますよ!」


「ええ、私も同意見です。主様の創生能力は素晴らしい。これでなら国造りもそう遠くはありませんよ」


「いやー、まだまだこれからだよ。ケルちゃんもセバスも、これから力を貸してくれ」


「もちろんです! ご主人様!」


「及ばずながらお力になります」


 オレからの頼みに笑顔で応える二人。

 とりあえず今日はこんなところにして、一旦館に戻るとするか。


◇  ◇  ◇


「ただいまー」


「お帰りなさいませ。ご主人様」


 館に戻ると三人のメイドがオレを迎える。

 それは先ほど、この館の警護と支度を任されたメイド達であり、彼女達はオレの帰りを待っていたのか玄関を開けた先で、頭を下げて待っていた。


「ご主人様、お食事の用意ができておりますが如何いたしますか?」


「そ、それとも先にお風呂に入りますか?」


「なんでしたら私達がお背中流しするっすよー!」


「え、ええと」


 何故だかオレの体にべったりまとわりついて、そんなことを聞いてくるメイド三人に思わずたじろぐ。というか、顔すごく近いです!

 やがて、困惑するオレとメイド達の間に顔を赤くしてケルちゃんが割って入る。


「こらー! 近いぞー! さっきも言っただろう! 私の目が黒いうちには私を差し置いてご主人様と勝手にイチャコラするなー!!」


「えーっ」


「ケルベロスお姉様、ケチです……」


「そうっすよー。私らだってご主人様にお仕えするメイドっすよー」


「うるさーい! いいからアンタ達は黙って家事やってなさーい!」


 ケルちゃんのそんな理不尽な命令に不承不承ながらも従い、すごすごと散っていくメイド達。

 ある意味、助かった……?


 そんなことを思いつつも、そういえば彼女達にも名前をつけてあげなければと思い出した。

 それから、塔の監視に行った六人にも後で挨拶をしておかないと。


残り通貨:12518円

【創造物】

豪邸×1

村×1

野菜畑×1

りんごの樹×1

魚達がいる川×1

動物達の森×1

聖剣×1

ケルベロス×1

執事×1

メイド×9

塔×6

村人×50

牧場×1

稲作×1

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