第8話 動物を作ろう

 さて、森の入口まで戻ってきたが、次はどうしようか。

 オレは財布を取り出すとそこにある金額を確認する。

 現在お金は13731円か。一円玉が残り一枚なので、また両替した方がいいだろうか。

 いや、その前にこの森を完成させよう。

 そう思ったオレは改めて目の前に広がる森を見る。


 先ほど森の中を確認したが、川の時と同様に動物は最小限の種類しかいなかった。

 しかし、それだけでは寂しいので、やはり森の生き物は作っておくべきだろう。

 あと食料確保のためにも、やはりそうした動物は必要。

 とはいえ、仮に鹿とか作ったとしても果たしてそれをオレが狩って、調理できるかはまた別問題だが……。

 ひとまず、実際に動物が作れるかどうか試しておいて損はない。

 先程は魚を作ったが、やはり魚と動物とではまた別問題。

 なによりこの異世界でどのような動物が生まれるのか興味がある。

 そう思ったオレは十円玉を取り出し、森の中へ投げようとするが、その瞬間ふと気づく。


 待てよ。森の動物ということは熊とか狼とか、そういう危険な動物も生まれるのではないだろうか?

 いや、動物だけならまだしもここは異世界。下手すると魔物とかが生まれるのでは?

 そう思ってオレは思わず投げようとした十円玉を握り締め、悩みだす。


 いやいや、待てよ。

 投げる際に『安全な動物』と明確にイメージして創造したらどうだ?

 さっきも川の際、『食用の生き物』とイメージしたら、生まれた魚達は全て食用だった。

 ならば、これの応用で危険のない魔物として創造すれば問題ないのでは?


 まだ憶測に過ぎないが試してみる価値はあるはず。

 オレは改めて十円玉を握り締め、森めがけそれを投げ込む。

 イメージは勿論『安全な動物』。


 十円玉が森の中へ消えると、特に目立った変化はなかった。

 しかし、これまでの事を考えれば、これで森の中に様々な動物が生まれたはず。

 オレは確認のため、恐る恐る森の中に入っていく。

 唾を飲み込み、気持ち忍び足で歩いていたが、すぐさま先程はいなかった奇妙な動物を目にすることとなる。


 それは鹿のような生き物であったが、ふわふわの体毛が生えており羊のような印象を受ける。

 角はなく、のんびりとした様子で地面の草を食べていた。

 オレはその生き物にそーっと近づくが、足元の枝を踏み、大きな音を立ててしまう。


 やばい!?

 思わず身構えるオレであったが、鹿はこちらをじーっと見つめたまま、もしゃもしゃと地面の草をまた食べ始める。

 特に動じない……?

 というかえらくのんびりした動物なのか?

 そのまま近くまで来るが、やはり鹿はこちらを警戒するでも驚くでもなく、むしろ物珍しげに近づくとオレの服の匂いを嗅ぎ始める。

 う、うん。なんだろうか。

 前に鹿に会いに行った時の事を思い出す。あの時はこちらの鹿せんべいをよこせと鹿の迫力に圧倒されたが、こちらの鹿は地球のよりもおっとりとしており、ふわふわの体毛のおかげがそれほど威圧感はない。

 やがて、オレの匂いを嗅ぐのに飽きたのかまた地面の草を食べ始める。

 オレは思わずその羊鹿の頭や背中を撫でるが、羊鹿は特に嫌な気はせず、むしろ先ほどよりも上機嫌にオレが背中などを撫でるとゴロゴロと猫のような声を出し始めた。


 うむ。案外、可愛いかも。

 そんなことをやっていると森の奥から今度はカピバラのような毛むくじゃらの生き物がトテトテと数匹固まって、こちらに近づいてくる。

 そいつらは羊鹿よりも行動的でオレを見つけると足元に群がり、じゃれつき始めた。

 時折「きゅるるるる」とカピバラのような鳴き声を出すので、思わず頭や背中を撫でると、その場で腹ばいになり甘え始める。


 おお、なんて可愛い奴らだ。

 どうやら先ほど十円玉を投げる際にイメージした通り、この森に居る動物達は大人しく安全な生き物ばかりのようだ。

 他にも森の奥を見ると羽の生えた牛や、ドラゴンの尻尾のようなものを生やした猪など様々な生き物を目にした。

 そうして、その日は森の中を散策しながら過ごすのであった。


 しかし翌日、思わぬ事態が起きた。


残り通貨:13721円

【創造物】

豪邸×1

村×1

野菜畑×1

りんごの樹×1

魚達がいる川×1

動物達の森×1

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