第5話 畑を作ろう
両替可能。
ということはこの五円玉を一円玉五枚に変えることが可能?
恐る恐るそこに書かれた文字を指で触れてみると、瞬時にオレが握っていた五円玉が消えると代わりに一円玉が五枚現れた。
「わっと」
なるほど。こういう風に両替可能なのか。
さすがは異世界。というよりもここでは日本円が『神の通貨』なるものだから、このように魔法のアイテムみたいになっているんだろうか?
まあ、そんなのはこれまでのことからも今更か。
ひとまずこれで両替という問題に対する解決は出来た。
では、改めて今度は畑を作ってみよう。
そう思いオレは豪邸のすぐ隣にある平地に向け一円玉を投げる。
イメージは単純に『畑』。
さあ、どうなる。
期待に胸を膨らませるオレの前で一円玉が地面に消えると同時に平らな地面が次々と掘り返されていき、今度はそこから小さな芽が出ると次々と苗へと成長していく。
そうしてわずか数分足らずで、目の前の土にきゅうり、トマト、ピーマン、ナス、人参といったメジャーな野菜が出来上がった。
野菜の種類は五個。数はそれぞれ百個近く。
な、なるほど。これは軽く一つの農園だ。
そう思ったオレは早速出来上がった畑のデータを確認してみる。
【畑】
1円を使うことにより生み出された畑。
できる野菜は五種類。数はそれぞれ百前後。季節に関係なく十年ほど常に一定数が実る。
なるほど。
1円で野菜畑を作った際はこうなるのか。
五種類というとちょっと少なく感じるが、それが常に百個前後実りっぱなしとなると、その恩恵はデカイ。しかも十年。
正直、これだけでも十分やっていけそうな気はする。
が、これだけで終わるのはもったいない。
それとこのデータを見て、少しひらめいたことがあったため、オレはそれを試すべく、すぐ隣の平野に再び一円玉を投げる。
「それ」
今度のイメージは明確に『リンゴ』である。
一円玉が地面に向け消えると、そこから巨大な樹が瞬く間に立ち上り、枝先に無数のりんごを実らせる。
おおー。さっきも見たが、こうして一瞬で作物や樹が出来るのはすごいなー。
関心しつつオレは枝先に実ったリンゴの実を一つ手に持つ。
色は綺麗な朱色であり、皮からも香ばしい匂いが漂っていた。
思わずそのまま皮ごとかじって見る。すると、
「美味い!」
あまりの美味しさに思わず叫んだ。
というよりも、こんな美味しいりんごは生まれて初めてであった。
りんごと言えば酸味があり、人によってはあの酸味が少し苦手という人もあるが、このりんごに関してはその酸味が全く気にならない。
程よい甘さで、なにより皮自体にも味があるようでそのまま食べても全然美味しい。
気づくと手に持ったりんごを全て平らげていた。
こりゃいいわ。毎日でも食べたいくらいだ。
そう思いつつオレはりんごの樹に記されたデータを確認する。
【リンゴの樹】
1円を使う事によって生み出された高級りんごの樹。
枝先から数百を越える実を常に実らせる。このりんごには生命力や魔力を回復させる効果がある。
さらにこの樹に実るりんごは決して枯れることはなく、永遠に実り続ける。
やはりそうか。データを見てオレは思わず拳を握る。
先ほど、野菜畑のデータを見た際、採れる野菜は十年ほどと書かれていた。
ぶっちゃけ十年ならまたその都度、一円玉を消費して畑を作ればいいのだが、どうせなら永続的に実る食物というものも作ってみたかった。
なので、一つの果実に絞って通貨を使った場合はどうなるかと、このりんごの樹に試してみた。
結果は見ての通り。味や食べた際の能力の回復の他に、永遠に実り続けるという効果も付いていた。
やはり、この『神の通貨』は普通に使うだけでなく、一つ絞って使った場合はその効果が大きく上昇する。
これをうまく使えば、色々な応用が出来そうだ。
そう思いながらオレは枝先に実ったりんごをおいしく食べながら次は何をするか考えるのであった。
残り通貨:13743円
【創造物】
豪邸×1
村×1
野菜畑×1
リンゴの樹×1
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