第7話 ハオ、ソワ視点・宿と記憶にて
んんんんーーー!!
わたしはベッドから降りて大きく伸びをしました。少し節々や足などの筋肉はまだ痛みを残していて、昨日動きすぎて疲れがまだとれていないようだとすぐにわかりました。
それでも、ここ『ガルドシティ』から出ていかないといけない。同級生⋯⋯いや、友達のために旅に出ないといけない。少し寂しいけど、ここを超えるほどに恋しい信時さんの住んでいるところへ帰るのです。こういう気にさせたのもエリナさんやハクさん、蓮さんや⋯⋯地獄の(失礼)母親たちです。
「⋯⋯気合い入れていきましょう。今日は旅路の始まりです。」
わたしはそんなことを呟きました。
「⋯⋯よく寝れた。」
私はベッドの上で上半身を起こしてそうつぶやきました。
私は窓から街を眺めた。相変わらずここの風景と街の人たちはまぶしくいい風景だなぁなんて考える。
それでも私のジョブ上、この住み着いたら幸せであろうこの街とも別れて旅に出ないといけない。そのためなのかは分からないけど私は、昨日より長くその景色を眺めていた。我ながら『目に焼き付けている』という言葉が似合うなと思った。
そしてその前に、ハオさんと信時君の関係を探らないと。私の勘は、ここでは鋭いから、きっとそのはず。あと⋯⋯私の名前も。
わたしは髪をとかし、まだ慣れない下着をつけ長袖を着ました。
私は赤いローブを着て白髪を結い、眼鏡の位置を中指で整えた。
わたしは左手にエリナさんに言われた包帯をして、
私は腰にシャングさんからもらった杖を付けた。
そしてわたしは昨日買ったグレーのパーカーを羽織って、しっかり整えて、
そして私は腰の杖の位置を再度確認して部屋を出た。
「「ガチャリ」」
(ん?誰かいるのでしょうか?)
わたしはドアが開けられる音の方を振り向きました。
(誰だろう?)
私はドアが閉められた音の方を向いた。
「「⋯⋯え?」」
わたしと白髪の少女の声が
しっかりとハモった。
⋯⋯わたしはあまりにも唐突すぎて、理解が追いつきませんでした。ここまで速く友達に出会うとは⋯⋯。
⋯⋯ここまで速くハオさんに会うとは⋯⋯。
「⋯⋯あの、すみません。」
私は沈黙を破った。でも次の言葉が出てこない。あまりに急すぎて。
わたしはふと思って口にしてしまいました。
間違っていることへの疑いも持たずに。
「⋯⋯
あまりに速いしその人ではないという自分もいましたが、それでもどこかで確信していました。おそらく結果は⋯⋯
私は、言葉を失った。
その代わりにあふれてくるのは、信時君との思い出と、それを圧倒的に上回る感情。⋯⋯あってたんだ。私に⋯⋯いや、蒼さんに数学を教えてくれていた、あの信時さんだったんだ。
ある映像が流れた。
(「まじで?⋯⋯この問題解けんと後々大変だよ?えっとね⋯⋯ここは3番目の公式を使って展開。⋯⋯こっちの数字を移項して、⋯⋯で、因数分解。⋯⋯」)
昨日私が観客席にいたときに思い出した記憶の断片。あの雨音やにおい、声色などしっかりと思い出していた断片だったが、それでも前回とは違う内容が混ざっていた。というか続きがあった。その記憶の続きが脳内に流れた。
(「⋯⋯そうそう、解けたじゃん。さすが蒼。」)
誰からの言葉よりも心に響いた、心から嬉しかった1言。
本当に⋯⋯信時君なんだ⋯⋯!
わたしはその姿を、茫然と眺めていました。
ただ立って眺めていたわけではありませんでした。わたしは、テレパシーによって蒼さんの記憶を覗いていました。決して意図的ではありませんよ?勝手に脳内に流れてくるんですから。
でも、嫌な人として覚えられていると思っていましたが、違ったことに唖然としていました。「唖然」という言葉を使いましたが、決して悲しいわけではありませんでした。テレパシーって、たまに褒められたり嬉しいことがあったりするんですね。
あのろくでもない男、母親を間接的に殺したあの男が、信時さんがこうして人の役に立っていたことは、とてもうれしいことでした。
⋯⋯1人目が見つかって⋯⋯人の役に立ってて、よかったです。
「⋯⋯信時君!!」
わたしは急に抱きしめられました。その窮屈さとふわっと後追いでかかった香りにしどろもどろになってしまいます。え、えぇ⋯⋯。
「⋯⋯わたし、男ですよ⋯⋯?」
わたしはつぶやきました。
「寂しかったよ~!」
⋯⋯読者の皆さん。誤解しないでください。あのろくでもない信時という男に、彼女なんていませんよ?でもそのせいもあって、わたしはどぎまぎしていました。もちろんこんな体験していませんから。
蒼さんはわたしの胸の中で泣いていました。テレパシーによると、やっぱり寂しかったようです。わたしの記憶が正しければ、こんなに蒼さんは感情を顔に示さなかったはずですし。⋯⋯とりあえず⋯⋯
「⋯⋯離してもらえます?苦しいです、蒼さん。」
「⋯⋯私はもう、蒼じゃなくて『ソワ』だよ?」
「⋯⋯なるほど、道理でよくしゃべりますね。」
わたしは少し皮肉を言いました。あo⋯⋯ではなくソワさんは、
「⋯⋯まぁね。この、胸こんなに育ちあがって。」
「やっぱり私の知っている蒼さんではありませんね。確か蒼さんはそんなこと言いませんでしたよ?」
ソワさんはもう笑っていました。
「⋯⋯そうだったかな?そんなことないよ。抱きしめたときこれ邪魔なんだけど。」
「あまり知りたくない事実が聞こえた気がしますが⋯⋯。というかわたしだって好きでこんな重いのつけてはいませんよ。」
「⋯⋯じゃあなんで信時君は女なの?」
「私の名前ももう『ハオ』です。」
「⋯⋯じゃあハオ?なんで『さん』ってつけるの?前みたいに『ソワ』って言ってよ。」
「性格上無理ですね⋯⋯。」
わたしがそう言って次の言葉を聞こうと待っていると、
「いやぁ~。嬢ちゃんたち話が盛り上がているねぇ。」
「そうですね!早くしないと旅に出るの夜になりますよ?」
2人が廊下の角から顔を出しました。まぁテレパシーで気づいていましたが。
「エリナさん。⋯⋯誰ですあなた?」
「あ、俺はシャングだ。自己紹介を兼ねて朝飯を一緒させてもらうよ。」
「蒼さんのジョブを見た『
「ええ、そうします。」
「私も。」
こうして、わたしとソワさんとエリナさんとシャングさんで朝食を食べながら、私の事情とソワさんの事情をそれぞれ話しました。でもまぁ何度も話していて何も面白くないのでここはカットです。というかソワさんの事情がヘビーすぎるような気がしますが⋯⋯。
「⋯⋯ということは、ソワさんも旅に⋯⋯。じゃあ結果ご一緒する形になりますね。まぁ元からそれがわたしの旅の趣旨なのでまぁいいですが。」
「そうなるね、嬢ちゃんなら安心だぜ!」
「⋯⋯そうそう。これからもよろしく、ハオ。」
「ならよかったです!丁度ハクさんのやつが!」
「「⋯⋯え?」」
「おう。そうだな!」
わたしとソワさんがはもり、その後に続くようにシャングさんが納得していました。どういうことなんでしょう?
その後食事を終えた4人は、昨日わたしが狂った中庭に行きました。中庭では、ハクさんが何かつけて立っていました。ハクさんはわたしたちに「ども。」と言ったので、わたしも「おはようございます。」と言いました。
ハクさんの腹から尾の手前にかけて付けられているその何かは、前の方に座席、後ろの方に荷物が付いていました。座席というのもただ背もたれと両手で持つリン
グがついているだけと簡易的ですが、それが前後2つ付いていました。なるほど、そういうことですか。わたしとソワさん両方が乗れるんですね。ソワさんも分かったようで納得していました。
「ハクさん!つけてみてどうですか?」
「ん。悪くはねぇなぁ。」
良かった。これですぐに出れますね。
「ハオさんの荷物とシャングさんが持ってきたソワさんの荷物はもう入っています!すぐに出れますよ!」
((⋯⋯エリナさんもシャングさんも仕事速いなぁ。))
わたしもソワさんも感心していました。
「ささ!急ぎましょう!」
((あ。せっかちだからか。))
わたしとソワさんが納得しました。というかさっきからわたしとソワさんの考えていること一致しすぎでは?
ところがそれを考えている間もなくわたしたちは旅の支度をさせられて、気が付く頃にはわたしとソワさんはハクさんに乗って、エリナさんはハクさんより一回り小さい馬に乗って、シャングさんと一緒に城門の前にいました。
「んじゃ。旅頑張れよ!」
シャングさんは手を振っていました。『
まぁ、戻ってくるだろうなぁ。元の世界に戻る前にもう1度狼のお肉食べたいし。
まぁ戻ってくるでしょうね。きっと。
こうしてわたしたち(わたし、ソワさん、エリナさん、あとハクさん)はあわただしい旅路を突き進み始めました。まぁ不安な半面、楽しみです。
その頃、ある国の城内で、
「我、シナはあなたに忠誠をつくします。」
そういう少女が1人。その少女とわたしが一戦交えることは知る由もありませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます