放浪者H&Nの旅日誌 ~planetrip~
波ノ音流斗
プロローグ 信時視点
「受験生ってめんどいなぁ~。」
なんてぼやきながら、俺は帰路についた。
いつも鍵の置いてある(というか隠してある)ところから鍵を取り、鍵を開けて家に入った。2階に上がって俺の部屋に入り、いつも重くて肩が痛くなるかばんを真っ先に下した。
俺は
俺はかたっ苦しい学ランを脱ぎハンガーにかけ、そのほか制服一式を脱ぐ。タンスから服を取り、着替えをし始める。いつものように着ているつぎはぎ柄の長袖シャツにコールテン生地の長ズボンをチョイスしたが、ちょっと寒そうだとグレーのパーカーを追加で取って着た。
これから友達んちに行ってゲームを謳歌するわけだけど、我ながら受験生だし勉強をしないとまずいと思う。まぁ学力はそこそこ上だけど親も先生も「勉強しろ」とか、「受験生の自覚を持て」とかうるさいからなぁ~とか、妹より家の中での力が下だから親や妹どものキゲンもとっとかないとなぁ~とか、進路の前に将来の夢が思い浮かばないなぁ~とか、理由はかなりある。でも、将来のこと考えるたびにお先真っ暗になって自分だけで悲しくなるし、そもそも性格悪いし、友達少ないし、自暴自棄だし⋯⋯って考えているうちに結局ゲームへの現実逃避に収まっている。こんな自分が嫌なのに、それらを治せず人のお世話になっているのが凄くふがいない。
⋯⋯このまま考えてるとぶっ倒れそうなので、ここは気持ちをきりかえよっと。などと考えながら、友達の家にゲームをしに行く準備をした。愛用の黒いワンショルダーにゲーム機を、ポケットにはチャリの鍵と家の鍵を入れた。そしてケータイを取り、俺は友達にメールを打った。そいつは本当に友達なのか?と迫りくる心の中の俺をおさえつつ。
『今から家出るから。チャリで下り坂だからすぐだと思う。』
こいつ見るの遅いからなぁととりあえずこれを送ったところで、家を出ようとした。そういえば家の鍵をかばんにまだ入れなくてよかったよな⋯⋯なんて考えた。
その時だった。
「⋯⋯ハオ⋯⋯。」
空虚な部屋に、突然響く声。
突然の空耳にかなり動揺する。
それもそうだ。その声は、体にスッと溶けていく儚さを覚えつつ、それでも聞き慣れていて耳に残る、そんな声だった。
ん?なんだ?今なんか聞こえたような⋯⋯
俺は軽くパニックに陥った頭で頑張って考えようとする。
あれ?ハオって誰だ?絶対に聞いたことないはずなのに、聞き覚えのあるような⋯⋯。
考えてるうちに端のほうから視界が白くなっていった。
なんだ?とは思ったが、それ以上に大きく心に残り離れない疑問はそれを考えさせる時間を、刹那も与えてはくれなかった。
ハオって誰だ?誰だったっけ⋯⋯?ハオ、ハオ⋯⋯。
どこか、沈むような感覚に包まれた。
その後、午後5時ごろに仕事から帰ってきた母親によって俺は、心肺停止の状態で発見された。
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