episode16 成長の兆し

 爆音が鳴り響く、クラブのフロア。

 クリスマスイブに集まるパリピという人種、音に合わせて踊り出す了、ハイレベルなダンスをする。

 了の勢いは今年一かもしれない。しかし、まだ22時なので人の入りは良くない。23時を超えてからが勝負である。

 それまでの間、体力を温存しつつ作戦も練り、勢いを落とさないようにした。


 23時を回り、徐々に人が入ってきた。さぁ女の子に声かけるぞ!

 誰が先に声掛けるのか、やはりこの活動の核となっている壱か?もしくは、トーク力のある雅か?はたまた、ワンナイト発言の多い中か?いや、勢いのある了に違いない。






 全員地蔵ーーーーー!!



 あんなに口では意気込んでいたのに、いざ声かけるとなると地蔵である。

 次こそは声かける、声かけると言いながら永遠に声かけ出来ないやつである。

 そんな時であった「ウーロンハイ飲んできます」と中がウーロンハイを注文し、飲み始める。すると、「2人で来たの?」

 見事に声かけ成功である。その後少し話してはくれるが、塩対応になってしまう。しかし、それをみた了が1人でいる子に話しかけたいと言い、声かけしに行ったのだ。

 5分くらい話をしてから帰ってくる。彼氏がいるらしく連絡先交換まではいかなかったらしい。

 しかし、行動する事が大事!中と了の姿勢を見て壱と雅にもスイッチが入り、声かけしまくる。

 3組に話しかけ、話をしてくれてはいるが、連絡先交換とまではいかなかった。


 24時を回り、人もどんどん入ってくる。クリスマスイブという事もあり、サンタのコスプレをしてる女の子もいる。

 サンタコスプレの女の子に服装をいじって声かけて見ると反応はかなりいい。「お姉さんどこの煙突から来たの?」と声かけるとかなり反応がいいのだ。とにかく笑ってくれている。

 その隙をついて、プレゼント待ってます!と追撃する。すると女の子は今日は持ってないと言う。そこで壱は頭を働かせた。

「今度でいいよ、プレゼント持ってきて欲しいから連絡先交換しよ!」


 と連絡先交換を促し、見事に連絡先ゲットする事に成功した。

 心の中で叫んだ。

 連絡先をゲットして、女の子と別れ、また違う子に話しかけに行く。


 アイドル風の女の子がいた、中々可愛いと思い声かけた。「アイドルにいそうだよね」しかし、友達とフロアを移動中のようでありがとうの一言だけ交わして居なくなってしまう。

 声かけるタイミングをミスってしまった。


 だが、勢いを失わないうちに声かけを続ける。

 かなりの数声をかけた、他の軍団メンバー3人も同様だ。


 そして、フロアの様子を見ていたその時である。めちゃくちゃ背の大きな男が横切った。

 壱はまさか!?と思い、彼の後を追いかけ、顔を確認した。


 すると見覚えのある顔であった。


 四天玉三郎だ!!!


 以前、街コンで会い、女の子とホテルに行きまくっていたあの男だ!

 ふと四天の隣をみると可愛い女の子と一緒にいる。街コンでも女の子を楽しませていたが、クラブに来ても女の子を楽しませているのか!

 そして、ふと思った。しばらく街コンで見ていないので、戦う場所を街コンよりレベルの高いクラブに移したのだと。

 すると四天はおもむろにクラブの入り口に向かって歩き出し、外に女の子と出て行ったのだ。壱は四天の実力に関心すると共に自分の実力の無さに悔しさも覚えた。

 くそ、と思ったその時だ、さっきのアイドル風の女の子が隣にいた。

 このチャンスを逃してなるものかと「あれ?友達は?」

「はぐれちゃったの。ちょっと一緒にいていい?」


 ラッキーな展開来たーー!


 そして、そのまま手を引いてフロアの端っこの方で2人きりで話をする。お互いの事を話し合い、クリスマスにも予定が無くて寂しいという情報まで聞き出した。

 手を繋いだまま、20分程話をして、壱は勝負に出る。


 キスをしようとしたのだ。


 しかし、、、


「嫌っっ!」

「え、嫌だった?」

「だっていろんな人見てるもん」

「2人きりなら良いの?」

 少し間が空いて、、「うん」と頷く。


「じゃ2人きりになれる場所に行こうよ」

「友達いるから友達に聞いてからでもいい?」

 と言い、友達に連絡し始めたのだ。


 これは、グダられるパターンのやつだ、、


 そう思ったその時だ。




「友達行っていいって」



 まさかの展開である。壱は雄叫びを上げた。もちろん心の中でだ。


 そして、クラブの入り口まで行くときに、またもや見覚えのある顔が、即田香恵と財留夏菜である。彼女達は前回、壱達が合コンで失敗した事を知っている。そんなダメな男だと思われている香恵と夏菜の前で女の子を連れて外に出る瞬間を見せれて、優越感に浸った。

 そして、クラブを後にする2人。しかし、時刻は深夜3時で、ホテル街は満室である。クリスマスイブという事もあって。

 しかし、なんとかホテルに辿りつきたいと思い、クラブのあるすすきのから徒歩で15分程で着く、中島公園のラブホテルに行く事にした。


 その間も手を繋ぎながら、相手の気持ちを冷まさないように話しかける。

 この時期の札幌の夜はかなり冷え込んでおり、気温は氷点下である。

 そんな中、子供の頃はおばあちゃんに人間カイロって言われてた程、体温暖かったから俺で暖をとっていいよと、意味不明な会話で乗り切る。

 そして、なんとかホテル前まで着き、緊張しながら中に入り、部屋を選ぶパネルの前まで行く。

 すると、一室空いているではないか!嬉しさのあまり、ハグをしてしまう。そして、その勢いのまま、ホテルの部屋に入って行くのであった。




 その頃、雅は、深夜3時を回った頃から覚醒し始め、3時から20声かけをし、連絡先も5件ゲットする。しかも1つは、逆ナンからのゲットであった。


 そして、中は深夜3時を過ぎてもウーロンハイの力は健在である。しかし、連絡先交換はできていない。中が諦めかけ、最後の声掛けにしようと女の子に話しかける。

 すると、女の子といい感じになったのだ。手を取り、正面から女の子に巻きつくという展開。そして、両手を取りフォークダンスかの様に踊りながら連絡先を交換したのだ。



 最後に了は女の子に無視をされた事により、メンタルがズタズタになっており、フロアの端っこにいた。完全に戦意喪失していたのだが、目の前に現れた可愛い女の子が了と同じブランドの服を着ていた。同じブランドという共通点をキッカケに女の子と仲良く話すことに成功した。

 しかし、彼氏がいるという事で連絡先の交換は拒否されてしまう。

 そのまま、女の子はもう帰るからとフロアを後にする。そして、1人たたずむ了。

 しかし、

〝うぉー〟

 了の中で何かが吹っ切れた雄叫びの様な音がした。

 気づけば足が動いていた様だ。向かった先はロッカーで「ちょっと待ったーー」と結婚式で花嫁を奪いに来る男の決め台詞の様に叫ぶ。

 タイプでもっと仲良くなりたい事を素直に伝える。すると、そこまで言ってくれるならと連絡先を交換する事に成功したのだ。


 全員が色んな思いを背負ってなんとか結果を残したのだ。


 その頃、壱はホテルで一戦交え終え、就寝についていた。


 朝になり、女の子と解散して、メールにて全員がしっかり結果を残した事を知り、皆んなでたたえあったのだ。

 これで、年を越せる。そして、来年に向けての思いを抱きながらそれぞれの年越しを行う。

 壱は田舎の実家で過ごす。




 そして、年が明け、またクラブに行き、女の子と連絡先を交換して飲みに行った。そのままホテルに何度か行く事も出来るようになったきた。

 雅も順調に3回に1回のペースでホテルに行けていると報告もあった。

 中は月一で活動出来ているし、了は転職し、有休消化中に女の子とめっちゃ遊んでいた。

 確実に皆、成長している。

 しかし、了は転職した会社がまたブラック企業で再び社畜になってしまった様だ。



 いろんなことが起き、気づけば春を迎え、壱は25歳となった。4月になり、以前合コンした愛佳から再び、連絡が入り、合コンをまた開催したいとの事である。前回と違う子を連れてきてくれるという事で、壱の方も前回のメンバーと変えなくてはいけなくなった。愛佳には雅は来るという事は了承してもらった。しかし、後2人のメンバーを違うメンバー誘わなければいけなくなった。

 だが、そんな当てはない、合コン開催も急遽で後1週間しかなかったのだ。

 悩んだ末に出した結論は、、、



 街コンで男の仲間を探そう!


 こうして、クラブに行き始めてから行かなくなった街コンに参加して、男の友達も作ろうと壱と雅の2人で参加する事を決意したのだ。

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