episode13 合コンは戦場

「まだかな〜」と心配する壱。今日は待ちに待った合コンの日だ。だが、合コンメンバーの1人である了がまだ来ないのだ。

 後、10分もすれば、女性陣がやってくるので、ワンナイト軍団の3人はソワソワしている。「もう一度連絡してみるかな」と雅が連絡してくれた。

 連絡した直後であった。



〝ドタドタドタ〟と3日何も食べていない象が目の前に置かれたキャベツを取りに行ってる時の様な足音が店内に響き渡る。

 象が来たぞー!!!!と叫ぶ寸前、目の前に現れたのは、アフリカ象!!



 ではなく、あわてた了!!であった。


 そう、了は合コンに遅刻してなるものかと、20分かかる店までの道程をわずか5分足らずで走ってきたのだ。自衛隊で足も鍛えられていた。時刻は18時50分であり、まだ女の子達は来ていない。

 なんとか間に合ったのだ。「了さんお疲れ様です。間に合って良かったです」了は息を切らしており、返事するどころではなくなっている。

 とりあえず、作戦会議を簡単に4人でする事になった。「もちろん、目的はお持ち帰りでしょ?」雅が口火を切る。「当然です!開始1時間でホテル連れ出してやりましょう」中がめちゃくちゃワンナイトな発言をする。やはり、中は見た目の大人しそうな感じと違い、ワンナイト軍団の中で1番ワンナイトな男である。

 了も息を切らしながらホテル連れ出しを狙う事を了承する。その後も5分程話し合う。


 そして、ホテル連れ出しをするにあたって、一次会で男女いい感じのペアを作る事を目標にした。結束が高まったところで幹事の愛佳から連絡が入り、店の前に到着したとのことだ。


 いよいよ女性陣が入ってくる。

「お待たせしました〜」そういって入ってくる。そして、目の前に女性陣が座る。なんと、レベルが高い!しかも、全員歯科衛生士だという。

「愛佳久しぶり!とりあえず飲み物頼んでね」言っておくが愛佳と壱には男女の関係がある。ワンナイト軍団のメンバーは知っているが、もちろん女性陣は知らないだろう。

 まずは、全員飲み物を頼み、その間に自己紹介して行く、初合コンの壱はつまらなく、ありきたりな街コンの様な自己紹介をしてしまった。つまり、年齢、職業、出身地などである。やってしまったと思っていると男性陣全員、街コン風挨拶を醸し出す。変な安心感である。全員一緒なら怖くないと同じである。

 その後は女の子の自己紹介だが、壱はこっそりその女の子達にニックネームをつけた。


 女性メンバーの紹介だか、まずは、ギャル系歯科衛生士の〝愛佳〟4人の中で1番おしとやかな感じ溢れる清楚系ギャルの〝清楚〟 4人の中で1番モテそうな感じがある〝モテ子〟 4人の中で1番のギャルでギャルオブザギャルの〝ガチギャル〟の4人である。


 そして、壱のどこにでもある普通の「カンパーイ、よろしくお願いします」で幕を上げる。すると、「よろしくお願いしますって童貞かよ!」とガチギャルがいきなりぶっこむ。一瞬凍りついた壱。だが、合コンで持ち帰りしたいという熱い思いが凍りついた体を溶かし、動けるようになった。いきなり過ぎて、ワンナイト軍団の4人は愛想笑いが出てしまう。

 しかし、そんな事は無かったかのように、ガチギャルは平然としている。



 ワンナイト軍団の方は雅が中心になって話を進めていく。流石は雅、話の振り方が上手く、女の子の基本情報を引き出す。

 だが、今のところただ飲み会である。1時間が経ち、ある事に気づく、しばらく中の声を聞いていないという事に。ふと中の方を見ると、、、



 酔っ払い地蔵ーー!

 ※説明しよう酔っ払い地蔵とは、酒で酔ってしまい、地蔵の様に固まって動けない事を言う。



 中はカシオレを2杯飲んで酔っ払っていたのだ。中の飲んでいるカシオレはアルコール30%のカシオレなんかではなく、どこにでもある普通のカシスオレンジである。

 そう、中は驚くほどに酒が弱かったのだ。なので、2杯目を飲み始めてから、中の声を聞いた者はいない。最後に話したのは、自己紹介の時の「中といいます。バンドでボーカルやってて、マイクが無いと調子出ません」である。

 顔はもう、林檎と間違えるほどに赤くなっており、明らかに酔っているのがわかる。そんな瀕死の中にガチギャルが追い討ちをかけるようにいじり倒す。中は何を言われても反論出来ずにいる。


 そんな状況を変えようと壱は席替えを提案する事にした。男女交互になる様に座り、壱の隣には愛佳と清楚が座る。

 まだ、清楚とはちゃんと話していなかったので、これを機に話して見る事にした。すると、どんな質問をしても〝うん〟や〝はい〟の返答のみで終わってしまうという典型的な話せないタイプ、いわゆるコミュ障というやつだ。このやろう。と一瞬思ったが、それでは昔の壱のままである。

 話すのが苦手な子をどうやったら話すようになるか、返答を多くさせるかである。単純に壱の女の子を楽しませる力が足りないだけである。

 実力不足で隣の愛佳と話す事にした。



 しかし、ここで忘ある事を思い出した。中が酔っ払い地蔵になっていたので、なんとか女の子と話が出来るように席替えしたのだが、席の順番としては、愛佳、壱、清楚、中の順に座っているのだ。どういう事かというと、話せない清楚と酔っ払って無言になっている中が隣同士になってしまったのだ。

 2人の空間が異様な空気になった。2人の空間だけ、2年付き合って来て、マンネリ化が続いており、雰囲気作りの為にプラネタリウムに来た倦怠期のカップルと同じような様な雰囲気に包まれた。

 つまり、上手くいけばお似合いのカップルという事だが、2人は無言なので、何も起きない。

 その後、この合コンで中の声を聞くことはなかった。


 ふと、前を見ると了はガチギャルにいじられている。雅はモテ子と話しているが、盛り上がりにかけるようだ。

 つまり、全員の方向性が違うという事だ。気づけば、2時間が経ち、21時を回る。そして、二次会もなく解散となった。当然だ、なんの爪痕も残していないのだから、、、



 そして、4人はモヤモヤした気持ちを払拭しようと、クラブに向かった。

 そこで、まさかの美容師の香恵と夏菜に再び会ったのだ。彼女らは結構クラブに来ているらしい。そして、合コンで失敗した事を話すと笑われてしまう。

その悔しさをバネに女の子に声かけていくが、合コンの疲労で全員パフォーマンスが低下しており、女の子と繋がる事なく朝を迎える。

 4人は始発までネットカフェで反省会をした。その時、了が正式にワンナイト軍団に入団する事となった。

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