episode10 遭遇は危険な香り

「あれ?私の事わかります?」


 壱は振り返る。どこかて見覚えのある顔だ。そうだ!俺が通ってる美容室の美容師だ!

 そう、壱はクラブのフロアで通ってる美容室の美容師に遭遇してしまったのだ。彼女の名前は即田香恵そくだかえ、壱より三個下の21歳である。物凄い気まずい、なぜならシャンプーもしてもらった事がある人なのだ。しかも壱は、美容室ではただの人で最低限の言葉しか話さない。そんな物静かな壱のイメージを持っている香恵は壱がクラブではっちゃけているのを見て驚いている。


 今日もクラブにやってきた。これで5回目のクラブになるのだが、それまで、雅と壱の2人で女の子の家に行ったくらいの成果しか上がれていなかった。なので、ちゃんと連絡先を交換したく、壱と雅の2人で臨むことになった。そんな時に行きつけの美容室の美容師、香恵と遭遇したのだ。香恵は美容師の女友達と一緒に来ていたのだ。「こんばんは〜」そうして挨拶してくる彼女の名は財留夏菜ざいるなつな、香恵と同じ22歳である。

 香恵と夏菜は結構クラブに来るようだ。4人で数分程話してクラブを周回する。


 今日こそは地蔵になるもんかと気合を入れているが案の定、地蔵気味である。こんなのを毎日続けていてはキリがない。そう思った時、1人の子と目が合う。目が合ったので勇気を振り絞り、そのまま声掛けをする。彼女の名は水原愛佳みずはらあいか、壱より二個下の22歳の歯科衛生士である。身長150㎝後半のギャル系であった。挨拶を軽く済まし、話しかけると比較的反応がいいのだ。そこから、かなり食いつきもよかったのでキスまで行こうとしたのだが、抜群の反射神経をみせる愛佳。難なく回避されてしまう。しょうがないのでトークで和む事に切り替えていくことに。愛佳は病院に併設されている歯科で働いており、その病院の階段の踊り場で性行為をしてる人を目撃した事があるらしいのだ。そんなワンナイトな行動をする人がいる職場で勤めているとの事だ。運悪くその場に出くわした愛佳は、すいません、気にしないでという風にやり過ごしたという。いや、やり過ごせてはいないか。そんな話まで引き出す事が出来たので、そこからバンゲをするのだ。

 ※バンゲとは、連絡先を交換する事で、番号ゲットの略である。


 気づけば深夜3時を回っており、その日はそのまま何もなく、途中で再び香恵と夏菜に絡まれたりもしたが、上手く逃げて、クラブを後にする。

 壱は、香恵のいる美容室に長いこと通っており、香恵と関係を持ってしまうとその後、美容室に行きにくくなるので避けていたのだ。



 次の日になってからバンゲした愛佳に連絡をしてみる事に、するとすぐに連絡が帰ってきて飲みに行く約束を取り付けたのだ。

 初めてちゃんとクラブで女の子から連絡先を聞き出す事に成功したのだ。ここまでに達するまでに苦労した。

 そして、初めてクラブで知り合った子と後日飲みに行く事になる。

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