episode14 トゥルーな彼はK

 壱は目を覚ます。合コンからのクラブ、しかも何も収穫なしという疲労感が募り、夕方まで寝ていた。その時、己の未熟さを実感した。

 ふとテレビを付けると街頭インタビューでクリスマスに彼女が欲しいものという内容でアンケートを取っている番組が放送されていた。



 そうか、もうそんな時期か、、12月なのだ。世間はクリスマスに向けて動いているというのに壱は何の成果もないままである。

 次はどうしようかな、と思っていた矢先、壱の携帯が鳴り、一件のメッセージが入る。

 雅からである。内容は前に街コンで知り合った女の子と合コンをセッティングしたとの事だ。しかも来週末である。

 壱は1人、家で嬉しさのあまり、隣の住人に聞こえる程の大きな声で叫んだ。


 詳細を聞くと男女3対3の合コンということだ。雅は当然ながらワンナイト軍団に招集をかけ、壱と雅は確実に行ける事が決まった。

 しかし、中はその日は都合が悪く、了は社畜という事だ。つまり、前の合コンと同じく人数が足りないという事だ。

 なんとか当てを探したが、丁度都合がつく人がいないのだ、、、

 そして、なんとか絞り出した人は、以前壱が街コンで知り合って何度か一緒に活動した田山康平である。彼は、もちろんトゥルーな人間であるので、合コンの方向性は違ってくる。

 しかし、合コンは開催したいし成功させたいので人数比が合わないのは避けたい。なので、康平に連絡をしてみた。


 すると、、、



 行くわーーーーー!!!!



 メールでも分かる程に気合が十分で返事が返ってきた。

 なので、康平を誘う事になった。雅と康平はこれが初対面になるので、合コン開催時間が19時30分であるが、30分前に集まって顔合わせしたい事を伝えた。

 それから、合コンまでの日々をドキドキしながら過ごしたのだ。異色のメンバーの合コンなので、どんな化学反応が起きるかわからなかったからだ。

 ワンナイトな男とトゥルーな男、つまりまぜるな危険である。


 そして、いよいよ合コンの日を迎える。仕事を早々に片付けて、待ち合わせの場所に小走りで向かうと雅が着いていた。後は康平が来るのを待つだけである。

 すると康平より連絡が入った。

 なんと、遅れるということだ。なので、先に店に行ってくれときた。

 なぜ、合コンの時、必ず誰か遅れてくるのか、不安がよぎる。

 そんな愚痴を言っていてもしょうがないので、店で待つ事にした。

 遅れる事20分、「ごめんごめん」と言って康平が入ってきたので、雅のことを簡単に紹介して話を少ししてもらう。もちろん、康平には壱と雅がワンナイト軍団という名で活動しているという事は話していない。


 その後、すぐに女の子達が到着する。「こんばんは〜」と3人の女の子達の登場である。お酒を頼み、早速自己紹介を始める。壱はまた、しょうもない挨拶をしてしまった。

 女の子達も街コンで知り合った子達ということもあり、街コンの様な挨拶が繰り広げられる。


 壱はまた女の子達に勝手にニックネームを付けた。今回の女の子の幹事で駆け出しのシンガーソングライターの〝ソング〟 大人しそうな新米看護師の〝ナース〟 ガールズバーで働いている〝お水〟の3人であり、全員22歳である。


 簡単に自己紹介を終えると早速、康平が、、



「タバコふかしたくなるな〜吸っていい?」とまたもやタバコを吸い始めたのだ。

 これが口癖で飲むとタバコを吸いたくなる体質だという事を思い出した。


 合コンの開始直後に康平のタバコの煙を吸う事になるとは思わなかった。だが、そんなのはお構いなしかの様に雅が合コンを仕切っていく。

 席の順番は雅、壱、康平の順で女の子はナース、ソング、お水の順番に座っている。

 雅はまず女の子3人の関係性を聞いた。すると高校時代の同級生という事だ。もちろん、女の子の方からも壱達3人の関係性を聞かれた。


「雅と俺は今日初めて会ったんだけど、壱とは夏にビアガーデン行った時に隣に座ってた人でたまたま意気投合して仲良くなったんだよね」


 康平めっちゃ喋るーー!


 忘れていた。康平の特徴として、タバコが好きなのと街コンの時にめっちゃゴリゴリに話をしていた事を。

 その後もゴリゴリに話をする康平、気がつくと康平は正面に座っているお水とばかり話をしており、他の4人は完全に蚊帳の外である。

 その暴走を止めることができない、壱達はとりあえず、残っている4人で話をする。

 雅、お得意の恋愛トークにて女の子の恋愛事情を聞き出す。ソングは彼氏が半年くらいいないという事を聞き出す事に成功したが、ナースに関しては、「うーん、結構いないかな」という曖昧な発言をしてくるばかりである。

 もしや、一度も彼氏が出来た事がなかったり、男性経験が無い可能性が出てきた。

 壱はこの活動で色んな女の子を口説けるようになる事を目指してはいるが、流石に男性経験の無い子を口説くのは申し訳ないと思っているので、その疑惑があるだけで、ナースは無いと思ってしまった。


 本当に未経験かは、実際のところわかんないのだが。

 この状況でナースを口説くのは無くなり、ソングははっきり言うと、壱のタイプではない。お水は康平と話をしている。

 もう帰りたくなっている。早く時間よ、過ぎろ過ぎろと願っている。

 雅もなんとか話を繋いでいるという感じで、楽しんでいるのは康平だけである。


 2時間が経ったところで、店を出ることにした。壱と雅は連絡し合い、一次会で解散する事を決めていた。

 会計が終わり、店の前に集まる男女6人、ここからどうやって解散の流れに持って行くのか、、難しいところである。



 しかし、この男が動いた。



「明日早いよね。じゃ気をつけてね」


 そう、女の子は何も言っていない、仕事があって明日、朝早いとかは何も。ただ雅が勝手に決めつけて発言したのだ。そのまま、すっといなくなる男達。女の子達と解散した後に康平とも別れる。

 康平は物凄く満足気な表情で帰って行く。


 壱と雅も疲れ切っており、家路に着いた。


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