episode 6 出会い

 ラブホテルから出てくる1人の男。


 猫神壱である。

 彼は悠々とホテルから出てきて、その場で女の子と解散している。

 相手は街コンで知り合った子である。街コンに行き始めて、半年以上が経ち、11月という冬の訪れを感じさせる時期になってきたのだ。


 街コンに行きまくり、街コンに10万以上を注ぎ込んできた。とにかく経験を積んだ壱は、女の子と飲みに行き、たまにホテルに行けるようになったのだ。

 何か大きく変わったという訳ではないが、圧倒的な経験がものをいっていた。女の子を楽しませるテクニックが上がった訳ではないのだ。テクニックがないので、経験上から同じ場面に遭遇したり、これは行ける。と思った同じ状況の時とかに強くなっただけである。

 ただ、それだけでも壱にとっては大きな一歩である。女の子と飲みに行って、男女の関係になったのはこれで3人目である。確率でいうと1割を下回るほどだ。



 言っておくが壱はただ、男女の関係になるのが目的なヤリまくり野郎になりたい訳ではない。1番の目的として、理想の美人な彼女を作る事が目的である。なので、理想の人に出会う為に多くの女性と出会う。そして、理想の人と出会った時に失敗しないようにどんな女性でも口説いて楽しませる事が出来る男になっておく必要がある。そう思って女の子と遊んでいる。


 そして、今日も街コンに行く。




 そこで、壱の人生を大きく変える男と出会う事になるとは、、、



 壱はいつも通りに街コンのサイトで良さそうなのはないか調べていた。そこで1人参加の少し小規模の街コンイベントを見つけた。

 これに参加してみよう。そう思った。次はどんな人と出会う事が出来るかワクワクしていた。いつも街コンに行く時はワクワクが止まらない。そして、何も策なんて考えない。

 少しは考えた方がいいとは思うが、この時の壱はただ街コンに行くという事自体が楽しかったのだ。



 そして、街コンに行く日の朝を向かえる。土日は基本休みで、今日は土曜日なので、いつも通りの休日の過ごし方をする。まずは、朝9時に起きてから動画サイトを見ながらゴロゴロし、11時頃になったら朝昼兼用の食事、つまり、ブランチをしてから少女漫画をベットに寝そべりながら見る。その後は、14時頃からスポーツジムに通い筋トレをして、シャワー浴びてから念入りに髪型を整え、着ていく服を選ぶ。そして、18時に家を出て、電車に乗り向かう。

 今日は19時からの開催である。

 開催場所のビルに向かい、街コンサイトに書かれていた3階までエレベーターで登る。するとそこには、十数名ほどの男女が入り口の前で並んでいた。このビルの3階はとても狭く、10人も人が集まれば窮屈になるのだ。


 なぜこんなに並んでいるのかというと、受付開始の18時45分を回ったのにもかかわらず、入り口が開かないからである。

 この状況はとても辛い。出会いを求めて街コンに来た男女がイベントが始まる前に集まってしまったのだ。気まずいっていうもんではない。

 壱はとにかく端っこに行き、人目につかないようにした。そして、5分程経つとようやく入り口が開き、受付が開始される。

 しかし、なんて手際の悪いイベント会社なんだ。と思った。だが、イベントは始まるのでとりあえず楽しもうと思った。


 入るとすぐにカウンターで飲み物を頼むシステムである。壱はお決まりのハイボールを注文する。そして、席に案内してもらえるかと思いきやなんと自分達で自由に席に座るシステムであった。

 こうなると男達は獣になる。とにかく可愛い子のいる席や女の子の多い席に行きたがる。先に受付をして、飲み物を手に入れた男達は一目散に席に着く。壱は、入り口が開くまでの間、隅っこにいたので当然受付の順番は後になり、座れる席も限られてくる。

 とりあえず座ろう。そう思い、空いてる席に座る。そこで悲劇が待っている。



 席に男しかいない!!!!!



 女の子達は大勢で群れたいもので、かたまって自由に席に座った。イベント自体、男の割合も多いのもあるが、やばい展開である。

 他の席を見ると女の子4人に対して男3人とかの席が多い。席も時間ごとに回っていくとの事だが、女の子がいない席があること自体あってはいけない。しかし、壱の隣の席はまだ空いている。ここに女の子が来てくれれば、と思いながら待つ。

「隣いいですか?」そう言って座る。



 男ーー!!


 心の中で叫んだ。しかし、これこそが運命の出会いであった。彼の名は衛藤雅えとうみやび。壱と同い年の24歳で今流行りのIT系の仕事をしていた。

 彼が壱の隣に座り、男だらけの街コンがスタートした。



 と思ったが、雅が口を開いた。「女の子いた方がいいよね。俺、他の席の人に交渉してみる。」というと、他の席に行き、女の子に半分こっちの席に来て欲しい事を伝えたのだ。

 なんと行動力のある男だ!壱は雅を尊敬の眼差しでみた。しかし、普通の人がこんなに行動出来るものなのか?そこで、1つの疑念が生じた。



 まさか、イベント会社側の人間なのでは?




 つまり、サクラではないかと感じたのだ。1サクラ疑惑。そして、壱は雅の街コンでの動きをマークした。そして、街コンがスタートする。

 街コンでは、男の誰かが話し回す役割の人がいないと沈黙が生まれるのだが、ここでは雅が回す。

 女の子には、街コンは普段から来るのかやアイドルに似てるとか荷物が多い子には、荷物持ち?などの過去の街コンでは見たことのない切り口で攻めている。しかも、沈黙なんて生まないくらいの勢いで、弾丸トークとはこの事かと思い知った。


 終始盛り上がっているではないか、そして、時間が来たら「せっかくだからみんなで連絡先交換しよう」と雅からアナウンスされる。2サクラ疑惑である。

 そして、席を移動して、別の女の子と話していく。しかし、そこでも雅のトークに驚かされる。女の子が話した話題全てに反応しているのだ。どういう事かというと、女の子がドライブの話をしたら、バイク乗るという事を伝え、好きなアイドルがいるといえば、そのアイドルの話しが出来、終いには、女性誌をよんでおり、女性のモデルに詳しいときた。壱は驚きを隠せずにいた。との話題にも付いてきているのだ。これだけトーク出来るということは、イベント会社側が用意したお笑い芸人なのではないのか?3サクラ疑惑である。3サクラが溜まり、桜の木が一本咲いた。



 その後も雅の勢いは止まる事を知らずに突っ走る。他の男性陣は雅のトークの合間に相槌を数度入れるのが精一杯である。雅が途中でトイレに行った時には、誰かが話を繋ぐのかと思いきや沈黙である。やはり、中々先陣を切ってトークを繰り広げるのは難しいという事だ。それを普通にやってる彼はただ者ではない。

 長い沈黙は続き、ふと店の入り口の方を見ると雅が戻ってきており、なんとスタッフと会話をしているではないか。街コンに来てスタッフと会話する事なんてあるのか?これは、やはりと思い4サクラ疑惑である。

 そして、最後の席の話も終わり、イベント終了のアナウンスをされる。雅とはそんなに話す事は出来なかったが、一体何者なのか知りたくなり、女の子を二次会に誘うとかよりも先に雅に話しかけようと思ったその時である。



 雅がいない!!!



 そう。雅は街コン終了のアナウンスがかかって他の参加者が荷物や上着などを身に付けている2分程の時間で姿を消したのであった。これは、何かある。そう思った。つまり、5サクラ疑惑である。サクラ疑惑が5個も溜まり、もはやサクラ満開で花咲か爺さんと同じである。


 雅にかなり翻弄され、その日はそのまま家路に着いた。家に着いてからも謎めいた雅の事が気になって仕方がなかった。雅とも連絡先を交換していたので、連絡して見ることに。


 すると、返事が返ってきた。なんと、次の日も街コンに行くとの事だ。よければ一緒に行きますか?と誘われ、壱は当然行くことにした。それで、雅の正体がはっきりすると思った。その日の夜は緊張して中々眠れなかった。

 次の日を迎え、仕事を終え、雅との待ち合わせ場所に向かう。そして、合流する。


「どうも〜」と雅に話しかけられる。壱は、あの時の街コンでの事が気になって仕方がなく聞いてみる事にした。「街コン結構行くんですか?」と言うと、雅は「最近結構行ってますよ。色々あって」その色々が気になったがそこはスルーした。そして、2人で街コン会場に向かう。


 今回の街コンはフリースタイルの街コンで、自分から話しかけないといけない。以前、この手の街コンに行った時はもじもじしてしまい、話しかけれなかった。だか、雅は速攻で女の子に話しかけている。その勢いに圧倒された。案の定2人組に話しかけてくれたので、片方の女の子と話をする壱。数分話して連絡先を交換する事が出来た。「よく、声掛けられるね。」と壱が言うと「まぁみんな出会い求めてる人達だし、声掛けるのが当然のイベントだからね」と雅が言う。やけに説得力を感じ確かに!と納得した。


 その後も何組かに話しかける事に成功し、久しぶりに楽しいと感じる街コンであった。2時間のイベントが30分くらいかなと感じるほどに。イベント終了のアナウンスが流れると雅は二次会誰か誘おうと言ってくるのだ。

 この時、雅のサクラ疑惑は薄れた。街コン側のサクラの人間なら二次会に行かず、サクッと帰るはずだからだ。なので、二次会に行く事を承諾して、1番話を長くした2人組に二次会に行くのを誘う事にした。

 雅が先陣を切って、女の子達に話を進めてくれている。さすがの行動力である。

 そして、雅のおかげで飲みに行く事が可能となった。壱はもう雅に全てを託すだけであった。雅に着いて行くとそこは、バーであった。壱はバーに来るのは人生で初であった。



 Bar 日本男児の会議室

 中に入るとお洒落な空間が広がる。単品で飲み始める。最初はお互いの情報交換を少し交えてから下ネタも話していく。すると女の子からワンナイトラブをした事があるとの話を引き出した。さすが、雅!尊敬の眼差しの壱。その後も下ネタトークも繰り広げられるが、これといって何も起きずに2時間ほど話をして、店を後にする。

 外に出て、次どうする?という話をもちろんするが、雅の勢いが無くなっている。街コンまではかなり攻めていたのに。と思いながらもそのまま解散となってしまったのだ。


 解散した後に壱と雅が2人で会話する。すると雅は「カラオケっていう選択肢もあったけど、グダるとだるいからね」と何も考えていない訳ではなかったようだ。更には、お酒を飲む量が少なく、テンション自体女の子が落ち着いてたのも良くなかったなと、振り返りをしっかりして、反省しているのだ。

 壱は今まで、失敗しても楽観的な事が多かったので雅から反省する事を学んだ。


 そこから少し話を続けるが、雅は4年近く彼女がいないようで理想の人と付き合う事を目標にしてるとの事だ。



 俺と同じだ!!


 壱は雅が自分と同じ思いで活動している事を知る。その時点でサクラ疑惑は吹き飛び、サクラ満開の花咲か爺さん状態であったが、サクラは散って、逆花咲か爺さん状態となった。

 そして、壱と雅はお互い理想の彼女を作る為に誓い合うのであった。



 それからの日々、雅と2人で街コンに参加し、二次会にも行けるようになるが、それ以上の進展がないまま半年が過ぎる。




 そして、ここから壱の物語は大きく動き出す事になる。

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