第2話 街に入れば笑いもの!?

 二人は街の外れに来ていた。

先程の転生で異世界に飛ばされたのだ。

始まりの街にしてみれば、

それほど小さくもなく見たところ人も活気があるようにも思える。


 ――さてと着いたのはいいけども、

これからどうするか。 その前にだ...


「おい、 いつまでそうしてるつもりだ。 ここに来た時点で諦めろ。

自称神様のグータラ生活はもう終わりだ 」

「・・・ んで 」


 ――何だ? 声が小さくてよく聴こえん。


「どーしてよ、 どーして私がこっちに飛ばされなくちゃならないのよー!

 まだ見たいテレビもあったのに! ゲームだってクリアしてないのにー!! 」


 ――うるさっ!! こいつ人の側で叫ぶんじゃねーよ!

てか待ておい、 生意気ロリ娘。仕事はどうした仕事は。

さっきから聞いてる限りクソニートじゃねーか!!

てか待てよ。 こいつ普段から仕事してないんじゃないのか??

だとしたらこっちの世界飛ばされるのも当然だろうな。


「もー! こーなったら!! 」


 ――お? 何だかやる気になったぞ??

こーなったら何なんだ一体??


「行くわよ! 早く魔王討伐して、 ゲーム三昧なんだから!! 」


 ――ようやくやる気になったか。まぁ、 動機が不純してるが。


「行くって言ったってどうするんだ?

 まだ何をしていいかも分からないんだぞ?? 」

「それは、 あれよ、 とりあえず街の中で聞き込みよ!

 えーっと、 名前何だっけ?? 」


 ――こいつ、 頭に何も詰まってないんじゃないか??

仕方なく思った春兎は、 ため息をつきながらもう一度自己紹介をし始めた。


「ハァ。 冬月 春兎だ。 その空っぽの頭に覚えさせておけよ。 ロリ神幼女。 」

「おけおけ~。 んん?? 今の悪口じゃない!? 誰がロリよ!!

合ってるの神って所だけじゃない! 馬鹿にしてるでしょ!? 」

「いや、 だってな~ 」


 そう言いながら春兎は冷ややかな目でロリ神ことフレイの身体を見渡した。


「ちょ! 何見てるのよ! セクハラ!? セクハラじゃない!?!? 」


 ――こいつうるせぇ!!

よくその貧乳で言えたものだ。

あの姉とここまで違うのか。


「大丈夫だ。 俺はそんな特殊な、 まな板性癖持ち合わせてない 」

「特殊ってどうゆうことよ!ロリってこと!? てか今私の悪口言ったでしょ!

 あるわよ!! 胸くらい! これでもBは! ・・・ ってなに言わせるのよ!!! 」


 ――Bって。 逆に何だか可哀かわいそうになってきた。

どうしよう悲しすぎてこの子直視できないよう。


「ちょっと、 何であんたが悲しそうにしてるのよ! おかしいでしょ!!

 悪口言われてるのこっちなんですけど!? 」

「あぁ。 ちょっと可哀かわいそ過ぎてな 」


 ――といけない、いけない。話が脱線してしまった。

今やるべきことは他にある。


「なぁロリ神様 」

「...フレイ!! 私の名前! 次ロリ神なんて言ったら、 去勢してやる! 」

「仮にも女子がそんなこと言うもんじゃないぞ 」

「仮にじゃなくて、 女性よ!!! てか子供扱いするなー!! 」


 ――こいつ、 随分とうるさくなったな。

これならさっきの落ち込んだままで良かったんじゃないか??


「じゃあ改めてフレイ 」

「様をつけなさい!! 」


 ――このやろう!! 調子に乗りやがって!!

気づいたら俺はまた、

この生意気ロリ神様の頭をグリグリしてた。


「ウギャァァア!! 頭! 割れる! 痛たたたたた!!! 」

「んでフレイよ。 行くのはいいとして。 街に入って何するんだ? 」

「ふふん! そんなことも知らないの?? 」


 ――どうしよう軽くイライラする。

けれども話が進みそうにも無かったので

何とか堪えてフレイの話を聞くことにした。


「街に入ってギルド商館へ行きパーティを設立。 後に任務クエストを受注しながら魔王討伐に向けて準備する。 そんなところかしらね 」


 ――どうしよう。コイツが急にまともに見えてきた。

しかしそれは困ったことになったな。

いや、今はそのことは置いておこう。

とりあえず街の中に入るか。


「よし、 じゃあ早速街にはいるか 」


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「へぇ。 思ったより広い街だな 」

「ねね。 さっきから街の人たちの視線が妙に刺さるんだけど、

 もしかして私の溢れ出る魅力のせいかな?? 」


 ――この馬鹿はとりあえず無視しておくとして。

視線が集まってる理由は大抵想像できる。

まず俺らが余所者であること。

そりゃあ見慣れないのが来れば視線も来るわな。

ただ余所者がきたくらいじゃ視線はそこまで集まらない。

となると後の三点だな。

俺が高校の学ランを着ていて、その服が珍しいという点。

そしてその俺が、 このロリ神を連れている点。 (プラスコイツさっきから煩いし。)

最後、俺の武器が鍋のフタという点!!

分かってたよ!! 何となく皆からクスクス笑われてたの知ってたよ!!

仕方ないじゃん! もらった武器がこれなんだもの!!

こりゃあ先が思いやられそうだ。


 そんなこんなで春兎とフレイはギルド商館に到着した。

しかし中に入ると見事に周りの視線が二人に刺さっていた。


「ねぇ、 ここの人たちもさっきから見てきてるんだけどやっぱり私の溢れ出る魅力に気づいちゃったのかな 」


 小声で話しかけてきているフレイ軽く受け流しつつ春兎は

受付の前に来た。しかしどうにも相手の様子がおかしいと気づく。


 ――目の前の受付のお姉さん??

さっきから何笑いを堪えてるの??


「え、 えとギルド会館へようこそ。 こちらのご利用は・・・ ぷっ。

 はじ、はじめ、ぷふぅっ! はじめてでひょうか! 」


 —―そこまで笑うか! 最後言えてないし!

鍋のフタを武器にしてるのをそこまで笑っちゃう!?

話が進まない!!! とりあえず話だけでも進めてくれ!


「では、 軽く紹介させて頂きますね。 まずギルド証を発行していただきます。

このギルド証はレベルが上がるにつれこちらに記載されていく仕様でございます。

そして次に任務クエストでございます。

こちらは一人からでもパーティで受けても構いませんが、 より高度な任務は

パーティを組むことをオススメします。

最後にパーティ募集についてですが、 掲示板を利用することが可能ですので是非ご、 ごか、 ぷふ! ご活用くださいませ!! 」


 ――我慢してたのかよ!逆によく笑うの我慢できてたな!感心するわ!

しかも最後、早口になってたし。

まぁいいや。聞きたいことは聞けた。後はそのギルド証とやらを発行して、

適当にやればいいわけだな。


「とりあえず、 ギルド証を発行してください 」

「わかりました。 少々お待ちくださいませ 」


 そう言って受付の女性は、 ほんの数秒でギルド証を発行した。


「あの、 本当にその武器で行くつもりですか 」


あーやっぱりそれかー。


「まぁ何とかなるんじゃないですかねー 」


 話すのが面倒になった春兎は適当に流して任務掲示板クエストボードへと

向かうことにした。

親切なことに受付の女性は、フレイの分まで発行してた。


「おー! 私の分まであるのね! まぁ神である私のことだからきっとステータスは全て限界到達カンストしているに違いないわ!! 」


 ――自分で神っていうあたりどうなのよ。

まぁでも神様のステータスってのは、ちょっと気になるかも。

どれ程強いものなのか。

もしかしたら魔王倒せるレベルなんじゃないのか?


「・・・えっ 」

「おい、どうしたロリ神様。そんな目を見開いて 」

「ロリ神言うなっ! ちょっと、 これ!! どういうことなのよ! 」


 そう言ってフレイは春兎にギルド証を見せてきた。


 ―― うわぁこれはヒドイ。

何がヒドイって、 限界到達カンストどころか、

ほぼ全ての能力値が逆の意味で限界ギリギリなんだけども。

まぁでも、 そりゃそうだよな。 引きこもりニートっぽいし。

魔法適性20パーセントって一体何ができるんだよ。


「きっと何かの間違いよ! 抗議してくる! 」

「やめとけアホ。行ったところで変わらんし、

日頃の行いが表れたってことだろう 」

「うっわ。 何その上から目線。

ムカつくんですけど! そういうあんたはどうなのよっ! 」


 フレイはギルド証を取り上げて、

自分のと見比べていた。


 —―まだ俺何も見てないんだけど。


「・・・ はぁ!?!? 」

「おいおいおい、 今度はどうしたってんだよ 」

「何でアンタのほうが基礎能力値が私より高いのよ! 」

「体格の差だろ 」

「何で魔法適性値50パーセントもあるのよ! 」

「それは知らん 」


 ――魔法適性半分って中途半端過ぎて逆に凄いのか分らんな。


「いいから返せ。 俺だってまだ見てないのに 」


 まじまじと見てるギルド証を取り返し、

改めて自分でも見ていた。


 —―確かに基礎能力は、 こいつより高いな。

魔法適性も本当に50パーセントって書いてある。

てことは、 このロリ神よりは、 マシな魔法を使えるということに・・・ ん?


 春兎は不意に魔法備考欄の方に目をやった。

そこには注意書きで小さくこう書かれてた


 『※但し鍋のフタに関する魔法のみの習得とす 』


 ――おいー!! 鍋のフタはもういいんだよ!

このに及んでまだ鍋を引きずるか!

引きずりすぎだろバカやろー!

鍋のフタに関する魔法って何!?

あんなの防御力上がったって、スライムにすら勝てやしないでしょ!!


「おーい! 生きてるかー!! いいもの持ってきてやったぞ! 」


 ――心の中で葛藤している間にどうやらフレイは

一人、 任務クエストを取りに行ってらしい。

そう言って見せてもらった内容は、


 【我と試そう!! 筋肉の美学!! 】


「うん。 却下だ 」

「どーしてさ! 報酬も悪くないよ!? 」

「嫌だよ! なんだよ! 筋肉の美学って! おまっ、よく見たら下のほうに、

一週間筋肉と語ろう合宿とか書いてんじゃねーか! いかにもヤバい雰囲気

漂わせてんだろ! もうちょっとマシな任務持って来いよ! 」

「ふふーん! そんなこと言うと思ってこれを受注してきましたー 」


 —―何だ。 さっきのは冗談かよ・・・

はっ? 今何て言った? 何か聞こえたぞ今!

 

「見て見て! これを受けに行ったら受理された! 」


 ――コイツ! 人に断りもなく勝手に決めやがった!

まぁ受付も流石に俺らじゃあ無理難題な任務なんか出さんだろう。

どれどれ・・・


【※パーティ必須。 氷狼アイスウルフ10体討伐。難易度☆☆☆】


 ――判断基準が分からん!!パーティ必須ってことは、

相手が強いんだろうけど☆が三つなんだよな。

ゲームだったら、 普通レベルだけども。


「ねね! これにするべきよ! 」

「何か考えがあるのか? 」

「だって・・・ 氷狼って一度見て見たいじゃない?? 」


 ――あ、 駄目だこれ死亡フラグ立っちゃってるかも。

俺と、 このクソガ・・・ フレイで討伐できるんだろうか。

先が思いやられてきた。



 諦めた春兎は軽く頭痛を覚えながら氷狼を討伐するために

フレイとともに一度街を出るのだった。


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