第9話 好奇心とは恐ろしい!!

 「はい。確かにパーティ申請受理させていただきました 」


 受付の女性の確認が取れたところで、 今後の方針について

近くのテーブルで談義することになった春兎達。

あの騒動の後、 一通り街を見て回りその日のうちに帰ってきた。

というのも魔王の娘である彼女をこれ以上あの場所に滞在させるのは

危ないと感じたからだ。


 (色んな意味で・・・)


 ――しかしアレッタが魔王の娘であることが誰も知らないなんてな。

それに加え・・・


「春兎さん、 遅かったですね。 ・・・ 私の顔に何かついてます?? 」


 机のほうから少女が一人歩いてきた。


「今更だけど、 何で付いて来たの? 」

「面白そうだったからです!! 」

「いや、 理由を聞き・・・ 」

「面白そうだったからです!!! 」


 ――駄目だこりゃ。 パーティに入りたい理由を面白いの一言で

一点突破してきやがる!!

うん。 薄々気づいてた。 諦めるしかないなって。

まさか彼女自身クイナ使えるだなんて思うわけないじゃんか。



「遅いぞ! 春兎! 私を待たせるとはいい度胸だな!! 」

「あー。 はいはい。今行くって」


 机ではすでにフレイ、 ヒナ、 アレッタが待機していた。

ヒナとアレッタは仲良く話をしているようで、

お互い魔物繋がりって解釈で良いのか分からないけど、

仲がいいのはいいことだと春兎は思っていた。

そして待ちくたびれたのか、フレイが急かしてきたので

一旦、 クイナと共に座席につくことにした。


「えーっと、 改めてたった今からこのパーティに加わることになった二人を改め   て紹介するか。 まずはアレッタ 」


「あ、 はい!! 改めてアレッタ=シルベットです! 皆さんのお役に立てるように 精一杯頑張ります! 一刻も早く魔王様のように—―ンンンンン!! 」


「魔王討伐のために頑張るんだよな!! 」


 アレッタが何か余計なことを言いかけたので春兎は急いで彼女の口を塞いだ。

まさかいきなり死亡フラグ立ててくるとは思わなかったのだ。

いきなり口を塞がれたのか、 驚いて彼女はジタバタしてる。

それに気づいてすぐに手をどけた。


「悪かったとは思うが、 お前今何て言おうとした?? 」

「え? 早く魔王様のように強くなりたいって・・・ 」

「自分が何で狙われてるか知ってる?? 」

「え?そりゃあもちろん—―あっ 」

「気づいたならいいんだ。 気を付けてくれ 」


 ――全く、 天然なのかドジなのか知らないけど危なかった。

だけどその点を除けば十分に戦力になるんだよなぁ。

彼女がいれば戦闘も卒なくこなせそうだ。


「ちょっと春兎さん私の自己紹介がまだなんですけど 」

「え、 あーはいはい。 どうぞ 」

「雑!? 私の紹介雑過ぎじゃないですか!? 私泣いちゃいますよ!? 」

「いやー、 だってまさかクイナがパーティに入るなんて思ってなかったし 」

「私だってパーティに所属したいとは思ってました。

けど何故か他の皆さんは私を入れてくれなくて」


 ――そうだったのか、 それは少し可哀そうだな。

あの街にいたことも気になるけど、 まぁ今は聞かなくていいだろう。

 

 クイナを紹介させている間、 俺は飲み物を取りに席を外れた。

それを追うように、 後ろからトコトコとヒナが歩いてきた。

ヒナと横に並び一緒に飲み物を取りに行く。


 —―何か随分懐かれたかな??

 

 ヒナと飲み物を取りに行った矢先、 気になる言葉が耳に入った。

それは違うテーブルに座ってる他のパーティなのだが。

話していることは妖精族という言葉が出てきてる時点で

クイナのことだとすぐに確信した。

そこで飲み物をつぎなから話を盗み聞きしてると、


 『なんであの最悪の妖精がここにいんだよ 』

 『誰だ! アイツをパーティにいれた頭の愉快な奴は! 』

 『せっかく離れたと思ったのに、 何の仕打ちだ! 』


 気になって仕方が無かった春兎は、

声を潜めて話していた方へ足を向ける。


「今の話、 詳しく聞かせてもらっていいですか? 」


 春兎がその席へつくと、 先ほどまで話していたパーティの

様子が明らかに変わった。


 どうやら自分のパーティが魔王幹部フェンリル率いる部隊を

倒したという事実。 更にはオークナイトを退けたことが

既にギルド館内に広まっていたらしい。

実際には春兎とフレイ、 ヒナが倒したということになっており、

パーティ登録されてなかったアレッタはもちろん、

クイナも倒したという認識には至っていなかった。


 ――まぁアレッタの場合は、 むしろそのほうが都合がいいのかもしれないが。


 とりあえずのクイナことについて改めて聞きだした。


 聞きだしたら次々とクイナがパーティに入れない理由が浮上してきた。

初めはいくつかパーティを転々していたらしい。

他の皆も最初は特に問題は無いと思っていたのだが、次第に自分の魔法や新作の武器を試したいがために勝手にクエスト(しかも高難易度)を取ってきては、

無策に突っ込んで度々メンバーを困らせていたらしい。

もちろん回復職が追いつくわけもなく、 結果クエストは失敗。

そんな彼女に【突撃罪の暴妖精ディザスター・タイラント

というあだ名がつけられたという話だった。


 ――それにしても色んなフラグが立ちそうな二重名前ダブルネームなことで、

そりゃあそんだけ自己中やってれば誰もパーティに入れたくないのは納得がいく。

しかも酷いときは一日に三回以上も高難易度のクエストを

受けていたとか、 更にパーティを一つ壊滅まで追い込んだとかそうでないとか。

流石にそこまでいくと他パーティが哀れに思えてくる。


 大体の事情を聞いた後、 何故か話を聞かせてくれたパーティに感謝されたが、

事の一端を知ってしまった後で、 どう反応していいか分からずに返した笑顔が

多少引きつってしまったことは多めに見てもらいたいところだ。

ひとまず話を聞き終えた春兎は飲み物を持ちながら、

ヒナと一緒に席に戻ることにした。


 ――それにしてもさっきのパーティ凄くバランスが取れていたな。

あの場にいたメンバーだけ見ると男女の比率が二対一だったが見た感じ、

攻撃職アタッカー守備職ディフェンダー回復職ヒーラー

いったところか。

何より皆、 戦闘向けですってあたりがカッコ良かったな。

それに引きかえこっちのメンバーはというと、

超攻撃型が約三名(アレッタ、 クイナ、 ヒナ )

俺は除くとして、 ポンコツ(フレイ)が一名。

しかも皆、 童顔低身長ということもあって

やんちゃな小学生の相手をしている気分になってくる。

しかもそろそろ不名誉なあだ名が俺にも付きそうな気もしてくる。

ロリ冒険者だ、 ロリマスターだ、 それだけは勘弁してほしいが。


 深くため息をつくと隣で歩いてるヒナが心配そうに見てくる。

決してロリコンでは無いと信じたいが、 ヒナが可愛すぎて辛い!そんなことを思いつつも問題ないと出来るだけ優しく話を返し、 二人で席に戻る・・・

しかしそこに三人の姿は無かった。


 —―嫌な予感しかしない。


 ヒナは春兎の袖を引っ張ってクエストボードの方を指さした。

なにやら三人で盛り上がっているようだが、

少しは周りの目も気にしてほしい。と思いつつも様子を見守っていると、

一枚の紙を手に取りフレイは両手で高らかに上げる。

その様子を見てた他の冒険者が何を選んだのか気になったのだろうか、

三人の前に行った・・・ は良かったが3秒もしないうちに離れて行った。

この時点で悪い予想がつく。

そして真っ先に俺のパーティ担当者である、

アリナ=クロベルの元へ行き受領印を貰う。彼女も印を押すのを渋っていたことから

予測するに中々な発狂物任務クレイジークエストなのだろうなと心の中で静かに思っていた。

席でヒナと座ってる春兎を見つける全員満面の笑みで走ってきた。


 ――さてどんなクエストを持ってきたのだろうか。


「見てくれ春兎! 私たちに超絶ピッタリなクエストだ! 」

 

 フレイが春兎に紙を見せブイサインをかます。


「どれどれ・・・ 」


 紙にはこう書かれていた。


【天災害獣討伐 難易度不明

 ・炎帝ケルベロス ・黒獣キマイラ ・害獣王ワームの討伐。

 報酬 白銀貨 10万枚

 

※超高難易度によりレイドパーティ推奨。】


 理解が追いつかなくて、 何度も読み返していたところ

一人の女性が近づいてきた。

このパーティ管理担当であるアリナ=クロベルだ。


「春兎さん、 今からでもやっぱり取り消しましょうか? 流石にパーティ作ったば  かりでこれは無茶かなって。 それにパーティ一組で挑むような

任務ではありませんし・・・ 」


 ――そうなんですよね! レイドパーティが必要なほど危険なんですよね!


  出来れば取り消したい気持ちと共にチラッと三人のほうをみやると、

 既に乗り気で今にも飛び出していきそうな勢いだった。


 ――はぁ。 まぁアイツらに比べたらこっちのほうがマシか。


 「いえ、 受けます。 クエスト」

 「本当に大丈夫なんですか? 」

 「まぁ、 なんとかなりますよ。 それに 」


 先程から横についてるヒナを見ると彼女は春兎に向かって

 軽くうなずいていた。


「大丈夫。 春兎兄ちゃんは私が守る 」


「分かりました、では天災と呼ばれる彼らの詳しい生息地について 説明させ     ていただきますね 」


 春兎含むパーティメンバーはクロベルから詳しい説明を受けた後、

 近くの宿へ向かうのであった。





 


 

 






 





 






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