無名な彼女は魔王の娘!?

夜月 祈

始まりの街―パーティ確保へ―

第1話 自称神様の軽めの謝罪

――人は死んだらどこへ行くのだろうか。

 少なくとも行く場所が必ずしも

 良いところではないというのは確かだ。

 何故そんなことを言うかって??

 まさに俺が今その状況だからだ。

 まず状況がおかしい。 寝室で寝ていたはずなのに、 死んだことになってる。

 認めたくはない。 しかし、 現に今説明されてる最中なのだ。

 誰に説明されてるって、 自称神様を名乗る幼女に説明されている。


「おい、 聞いているのか!! せっかくこの私が説明してやってるいうのに 」

「お前じゃない、冬月ふゆつき 春兎はるとだ。あんたこそ何者だ」 

「だからさっきから言ってるでしょ? 私は神様なの。

偉いのよ?? あがめなさい!! 」

「仮に神様だとして何で俺はこんなところにいる。

 夢ならさっさと元の世界に戻せ 」

「仮にじゃないってば!! てか戻るのなんて無理よ。

あんた死んじゃってるし 」

「だから何で死んだことになってるんだよ 」

「そ、それはぁ・・・ 」

 

 —―目の前にいる自称神様はバツが悪そうに目を逸らす。

 てかコイツさっきからまともに目を合わせようとしない。

 

「怒らないから理由を聞かせろ 」

「本当に怒らない?? 」

「あぁ。 怒らない大丈夫だ。神に誓う 」


 ――もっとも誓う相手が目の前にいる自称神様に当たるのが

 納得いかないが。まぁ本当に死んだなら過ぎたことをとやかく言っても

 仕方ない。 きっと俺の身に何かあって不慮の事故に巻き込まれたんだろう。


 だから―――


「私の手違いで死なせちゃった。 ごめんね?? 」

 

 ――そうそう。 だからたとえ目の前の自称神様に手違いで殺されても・・・

 はっ?? 待て待て待て。 うん。 待て。

 

「お前今なんて言った?? 」

「もぉ。 一回で聞きなさいよね。

 ワ・タ・シが間違ってあんたを死なせちゃったって言ってるの 」

「なるほどなるほど。 あんたが間違って俺を死なせてしまったと 」

「そうそう。 いやぁ我ながらミスったかなって・・・ あれ?

 何で肩震えてるの?? もしかして落ち込んでる?? 落ち込んじゃってる?? 」


 ――手違いで殺された?? んな馬鹿な話あってたまるか。

 しかもこんな生意気そうなクソロリ神に??

 大体間違って死なせたってんのに何で開き直っちゃってるの??

 

 春兎は段々怒りが込み上げてきた。


「まぁまぁ。 そぉ落ち込まないで。 私が直々に謝りに来てあげてるんだから 」

「・・・ったのに 」

「え? 何だって?? ちょっと何でそんな怒ってるの?? 冗談だよね?

怒らないって神である私に約束したものね?? うん。 信じてる私信じてるから。 」

「普通に生きていけると思ったのに… いきなり死ぬわ。 死んだ理由が自分の間違   いだって?? ・・・ このぉロリ神がぁあ!!!!! 」


 自称神様であるロリ神を捕まえてイライラを発散させる

 その所業まさに鬼のごとし。


「やめてやめて! 頭グリグリしないでぇー!! ウギャアァアアアア! 」


 とりあえず春兎は一通り満足したので解放してやったが彼女のほうを見ると

頭を押さえながら何かブツブツ呟いている。


「・・・もうお嫁にいけない 」


 ――いや、 聞こえてるし。 そもそも神様に結婚とかあるのかよ。


「ハァ。 悪かったって。 元々お前が悪いにしても少しやりすぎた 」

「す、 少しどころじゃないわい!! 」


 ――お、 おぉ急に元気になったな。 まぁこれだけ元気があれば問題ないだろう。

 さてと肝心な話に戻すとするか。


「で? 俺は一体どうなるんだ? そもそもまだ何で死んだか聞いてないし、 家族の   こととか色々聞きたいんだけど 」

「うっ。 ・・・ グリグリしない? 」


 ――さっきの本当に痛かったのか。ちょっとやりすぎたな。


「あれはもうしないから 」

「実は、 私ちょっと暇してて魔法の練習してたんだけど何がどうなったのか、

 君たちの世界に影響与えちゃってね。 」

「ほうほう。 それで?? 」


 ――どうせその魔法が俺に当たって死んだとかそんなもんだろう。

 

「その世界滅ぼしちゃった。 テヘペロ」


 ――ハァアアアアア!?!?

 滅ぼしちゃった。じゃねーわ!!!

 一大事件だよ!

 てか、 何気なくだしてくるテヘペロに余計またイライラしてきた。


「待って待って。 まだ話の続きがあるから。

もちろんその世界は修復したわよ。 今では全部元通りにしたから 」

「そうなのか。 それならそうと早く言えばいいのに。 ・・・ で何で俺だけ死んだ ことになってるの?? お兄さん怒らないから言ってごらん?? ん?? 」

「ちょ、 そんな急かさなくてもちゃんと話すわよ。

 私たちのせいで死なせてしまった人間には説明する義務が生じてるから 」

「それなら早く聞かせてくれ 」

「最初は全員復活させる予定だったんだけど記入漏れが生じてね。

君だけ生き返る時間に間に合わず・・・で、

このままじゃやばいと思って私が、 君が関わった人間の記憶をちょちょいと

弄って、 君に関する記憶を全て消去したわけ。 」

「えーーーーっと。 つまり・・・」

「君は元々生まれてこなかったってことになるわね! ドヤァ」

「・・・ドヤァじゃねーだろー!!! 何さらっと、とんでも発言してくれるんだ  このやろう!!! じゃああれか、 俺はもう元の世界に戻れないってか!

これから俺はどうなるんだよっ!! 」


 流石に事態を呑み込めずに、 再び自称神様の頭をグリグリしだす。


「ウギャアアアア!!! 死ぬ! これ軽く死んじゃうから!! 痛たたたた!!!

 あぁ!! 見える! 見えるから!! おじいちゃんの顔が見えるからぁ!!! 」


 ――とりあえず断末魔の叫び見たいなのが聞こえたので放してやった。

 っておじいちゃんって何だよ。


「私はー死にましたー。 後のことはー頼みましたー 」


 ――いや、 死んでるの俺なんだけど。


「コントはいいから。 俺はこれからどうなるんだよ 」

「よっくぞ! 聞いてくれました!!!! 」


 ――コイツ立ち直り早いな・・・。


「お前には今から魔王討伐のために異世界に行ってもらう! 」

「随分なテンプレ設定だな。 ありきたりな話過ぎるんだが 」

「仕方ないでしょ!! そういう世界にしか転移出来ないのよ!! 」


 ――残念極まりない台詞セリフだな。

高校生に魔王討伐させるのもどうなのよって話なんだが。


「はいはい。 で? まさか装備も何も無しにこのまま行けと?? 」

「まぁそこは、ちゃんと考えているわ!何でも望みを一つだけ叶えてあげる!

って言いたいけど特別に三つまで叶えてあげるわ!! 」

「何でも?? 」

「そうよ。 でもその中には武器はもちろんお金なども含まれてるから

 慎重に選ぶことね 」

「ふーん 」

「ちなみにランダムにすると適当に選ばれるから 」

「あー、 じゃあランダムで 」

「オッケー! ランダム…って。 え?? 本当に? 」

「何か考えるの面倒めんどくなってきた。 服はこの高校の服でいいし金は何とかなるだろ。 運は良いほうなんだ 」

「本当に?? 取り消しは出来ないわよ!? 」

「あー、 おけおけ。いいからやってくれ。

 魔王討伐って言われた時点で色々諦めた 」

 「本当に知らないんだからね!?

 【我、 神はここに誓う。 この者の適正となる望みを与えたもうことを】 」

 

 ――へぇ、一応神様っぽいこと出来るんだな。


 春兎が感心してると空中に文字が浮かび上がった


  ★この者に与える祝福をここに掲ずる。

 一、アレッタ=シルベット

 一、フレイ

 一、鍋のフタ



 ―――――—――――――以上をこの者の祝福とす。


 春兎は順番にそれらを確認していった。

 

 —―アレッタ?? これは、 どう考えても人物だよな??

次のフレイ、 これは武器なのか?? 判断できん。

そして最後・・・ どう考えたっておかしいでしょ!?

鍋のフタって何!? ランダムのふり幅が大きすぎる!!

これで戦えと!? 鍋のフタで魔王と戦えと!?ツッコみどころ満載だな馬鹿やろう!!

 

 確認していると背後から自称神様が後ろから覗きに来た。


「なに落ち込んでるのさ! だーからランダムは、 やめなってあれほど!

まぁ? 決まっちゃったものは仕方ないよね!! 精々頑張って!! 」

「ちょちょちょちょ! 待て待て待て待て!!! 流石に分けわかんなさすぎだろ、 これは! 武器が鍋のフタってどういうことだよ! それにアレッタとかフレイとかよくわからん武器まで出てきて! 」


 それを聞いた瞬間、 自称神様の顔が引きつったのが春兎には分かった。


「どうしたんだよ自称神様。 腹でも下ったのか? 」

「ね、 ねぇ? 今何て言ったのよ?? 」

「え? 鍋のフタが武器・・・ 」

「その後よ!!! 」

「アレッタとかフレイとかいう、 よくわからん武器まで出てくるって 」

「・・ れ・・ しよ」

「何だって?? 」

「それ!! そのフレイっていうの私よ!! 」


 ――おいおいおい、 いきなり何を言い出すのかと思えばこのアホ神は。

 グリグリしすぎて頭のネジでも緩んだか??


「そんなわけないだろ。 どこの世界に自称神をパーティに加えたがる

 やつがいるんだよ 」

「嘘よ嘘よ。 こんなの信じない。 何で私がパーティ組まなきゃいけないわけ。

 行きたくない。 引きこもってたいよー 」


 ――って聞いてないし。 

うん。 こいつ、 鍋のフタより使えないかも。


 そんなことを思った矢先、二人の身体が光りで包まれていく。


「ちょっ! 私はグータラ生活したいのに!!

何で魔王倒しに行かなきゃいけないのよ! 」


 ――お前、 普段からニートなんじゃねーか! このやろ!!

 するとそこへもう一人綺麗な女性が現れた。


「それは、 あなたがその方に迷惑をかけたからです 」

「げっ。 お姉ちゃん 」


 ――姉!?!? 神にも姉妹っているのかよ!!

 てか姉妹でこうも違うのか・・・ 胸の辺りとか。


「あっ! あんた今変なこと考えてたでしょ! 」

 

 ――こいつ変なところ鋭いな。


「考えてねーよ。 タイミング的にもう時間じゃないか? 」


 ――後少しで消えるところで一個だけ質問してみた。


「あの! アレッタって何の武器ですか! 」

「え?? アレッタって確か・・・ 」

「私が何で行かなきゃ行けないのよ!! 」


 ――コイツ! 人が話してる時に割り込みやがって。


「あなたはついでにグータラ癖を直すいいわ 」

「え!? 俺の話は!? 」


 後何秒かで消えそうなところで

 その女性は答えた。


「そうだったわね。 アレッタ。 彼女は――― 」


 かろうじて聞き取れたのは断片的なもので完全に

 聞くことは出来なかったが彼は何か嫌な予感がしていた。

 そして隣のロリ神は終始、 うるさかった。


 そして春兎は異世界へと旅立った。

 自称神様のロリ少女を連れて――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る