第6話 初対面の女子...年上!?

 隣町スイゲツ。

主に武器や防具と言った、冒険者用の道具を

売買して栄えてる街。

春兎は三人と一緒に、 スイゲツへと到着していた。


「おぉー。 春兎兄ちゃん! 大きいねこの街!! 」

「春兎さん春兎さん!! 私こういうとこ来たことないのでワクワクします! 」


 魔王の娘ことアレッタと大人しいと思っていたヒナが興奮気味に街を見渡す。


 —―ここでいつもなら元気にはしゃいでくるのがフレイなのだが。

・・・そういえば大人しいな。何かさっきから静かだし。


「フレイ?? 大丈夫か? 」

「ひゃい!! 」


 突然声をかけられて驚いたのか、

フレイは少し慌てて返事をした。


 ――それにしてもひゃいって、 そんな可愛い返事も出来るんだな。


 そんなことを思っているとフレイの顔が心なしか一段と赤くなった気がした。


「わ、わわ私ちょっと疲れたから宿で休んでくるわね!! 春兎悪いんだけど宿代 先に貰ってもいい?! 」

「それは構わないが大丈夫なのか? 」

「だ、大丈夫よ! じゃあ三人で楽しんで!! あっ! 任務クエスト

 忘れないでよ!! 」


 早口で告げたフレイは足早に宿へと向かって行った。


 —―フレイの奴、 本当に大丈夫か??

まぁ本人が大丈夫っていうなら大丈夫だろうし、 それに今は任務を優先して・・・

二人の顔を見ると早く散策したいとばかりの顔を浮かべていた。

・・・この街でも見て回るか。


 三人は受取人の元へと足を向けた。


――――――――――――――


 一方その頃、 三人と別れ一早く宿へと来ていたフレイは顔を

真っ赤にしてベッドへダイブし枕に顔を埋めていた。


「危なかった!! もう少しで私の感情爆発するところだった!!

 てか何よさっきの春兎!! 急な不意打ち食らわせてこないでよ!もぉ―――! 」


 フレイは顔を埋めながら興奮気味に、 先ほどの出来事を思い出していた。


「表情豊かで可愛いって・・・ キャアーーー!! 照れるじゃん!

  照れるじゃんか!! 」


 実はフレイは道中ある魔法を試していた。

それが【心声聴マインドタップ


 対象の相手の心の声を聞くことが出来る。

フレイはアレッタの心の声を聞くことで目的を知ろうとしたが、

残念なことに操作が誤り春兎へとかかってしまったのだ。

本来、 この魔法は男女共に通用する魔法だが、

彼女は、 どういうわけか男性限定でしか使うことが出来なかった。

その結果、 特に聞きたくもない春兎の心の声を聞いたわけだが、

偶然、 最後に春兎が思ったことを聞いてしまってこの始末。


 「うー。 まさか幸運度がここまで影響を及ぼすなんて。

  何で春兎の心の声なんか・・・ 声・・・ うわぁあああ! 」


 ドンドンドンドンと壁に頭を打ちつけ冷静を保とうとする。


「大体何であんな一言で、 この私がこんな照れなきゃいけないのよ! そうよ!

たまたま偶然間違って聞いてしまっただけかもしれないじゃない!! でもさっきも私を心配して、 それに声が可愛い・・・ って、 あぁああああああ!!! 」


 ドンドンドンドンドンドンドンドンと

さっきよりも激しく頭を打ち付ける

幸いにも完全防音な部屋なので周りから苦情がくることはなかったが、

壁が不自然に凹んでる。


「一回落ち着け私。 このままじゃアイツに、 チョロ神とか言われるに

 決まってる・・・って誰に説明してんだ私は!

 とりあえず解除されるまで動かないほうがいいよね 」


 フレイは一度眠るという選択肢をした。


―――――――――――――――――――


 三人は受取人の元へと来ていた。

そこで春兎は思った。


 俺はこういう星の下に生まれたのだろうか。

三人が対峙している相手。

小学生と言われても何ら遜色そんしょくのない、

なんていうか、 んーと。


「子供?? 」


 ジトーッとした目で目の前の少女が春兎を見ていた。


「春兎兄ちゃん、 初対面の人に失礼だと思う・・・ 」

「えっ俺今声に出してた? 」

「えぇ。 思い切り声にでてました 」


 ヒナとアレッタに言われて慌てて春兎は謝罪の弁を述べた。


「ゴメンッ! 別に悪気があって言ったわけじゃなくて、

気を悪くしたのなら本当にゴメン!! 」


 すると目の前の少女が溜め息をつきながら口を開く。

 

「ハァ。 いいですよもう。 この見た目ですし仕方ないのは私も

 分かっているので。 それでも誤解はしないでください。

 私はあなた方よりも年上です。 ざっと180歳くらい 」

「ひゃ!? 待て待て待てどういうことだよ! 」

「私、 妖精族なので。 身長あまり伸びないんです 」


 後ろの二人に補足を求めた春兎だったが、ヒナは元氷狼、

そういう知識があるわけでもなく代わりにアレッタが説明してくれた。


「彼女が妖精族なのは間違いないですよ。

流れる魔力の波長がそれと類似してますので。

身長が人間よりも伸びないという点においても特徴の一つです。 」

「私の魔力が分かるんですか。 何者なんです? あなたは。 」

「私はアレッタ。 まお・・ んんんんんんんんnnn!! 」



 春兎は慌ててアレッタの口をふさいだ。 そりゃもう全力で。

そして小声でアレッタに耳打ちする。


「ばかっ。 ここで正体ばらしてどうするんだ! 魔王の娘とか絶対に言うなよ! 」


 激しく頷いたアレッタを解放し、 春兎は額の冷や汗を拭いていた。


「もうっ! 春兎さんたら危うく窒息するところでしたよ! 」

「それは悪かった。 けど・・・ 」


 分かったと目で合図を送るアレッタに一安心をした直後、

妖精族の女の子から耳を疑いたくなる言葉を聞くことになる。


「えーと大丈夫ですか? アレッタ=シルベットさん 」

「アハハ。 大丈夫です、 気にしないで。 あれ? 私アレッタとしか

言ってませんよね? 」

「貴方のことは知ってますよ? 魔王のところの娘さんですよね?? 」

「なっ! 人違いですよ~ やだな~。 」

「隠さなくても良いですよ。 私もだてに長く生きてませんし。

それくらいは分かります。 別に正体を他にバラすようなこともしませんし。 」

「でも、 さっき何者って言ってませんでしたっけ? 」

「すみません。 少し反応見て見たかったんです。 テヘペロ。 」


 ――まさかの妖精族の登場の上にアレッタの正体が即バレするとは。

流石の俺も驚いているが、 一番驚いているのは・・・

妖精族のこの女の子?? がテヘペロって言ったこと!!


 すると不意に袖をもう一人の女の子に軽く引っ張られた。


「春兎兄ちゃん。 そろそろ、 行こ? 」


 振り返るとヒナがこっちを見ていた。


 —―んんん! 何その表情! やめて可愛すぎて直視できない!

お兄さんロリコンじゃないのに、 そっちの道に引きずり込まないで!!

て、いけないいけない。 真面目にそろそろ散策するか。


「アレッタ? 無事に荷物も届けたしそろそろ行くよ? 」

「分かりました。 春兎さん 」

「行くってどこかへお出かけですか? 」

「えぇ。 この街を少し散策しようかと 」

「だったら私が案内してもいいですか? 」

「そりゃあ嬉しい申し出だけどいいのか? 何か用事とか。 」

「それなら大丈夫です。 私も退屈していた所なので 」

「そうか。 なら頼むわ、 えーっと 」

「クイナです。 クイナ=ベル 」

「よろしくクイナ 」

「こちらこそ 」


 こうして四人は街の散策へと向かった。



――――――――――――――


「本当にここに魔王の娘がいるのか 」

「えぇ。 えぇ。 確認したから間違いありません。

 しかしフェンリルの旦那は何をやっているんですかね 」

「あのボンクラは必要ない。 相手が話がわかる相手ではないということが

 分かってない馬鹿だからな。 それに俺ぁ別に魔王の娘なんか興味は無い、

 ついでに奪い取るつもりだからな 」

「なるほど。 あらかじめ街の奴らが標的と? 」

「でなけりゃあ俺がわざわざこんなクソみてぇな街に来るわけないだろ。

 幹部が一人オークナイトがな。 それとあいつらは連れてきてるな? 」

「えぇ。 えぇ。 来てますとも。 部下のオークざっと100体近くの森にて

 潜伏済みでございます 」

「そうか。 では行くぞ。 俺らに歯向かう奴は全員皆殺しだ。

 男は殺せ、 女は生け捕りだ 」

「了解しました。 ではそのように 」

「行くぞ。 人間ウサギ狩りの始まりだ—―」


 二体の魔物は街の入り口付近で話を終えると、

森に潜伏していたオークを街の中へと解き放った。









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