第5話 無名な彼女は魔王の娘!?
ヒナが仲間に加わり三人で改めて
もちろんヒナの分のギルド証も作って貰っていた。
三人が挑む任務は、 【難易度☆ 隣街への配達】
隣街へ荷物を届けに行く仕事だ。
二人は既に馬車の前で待機している。
今回の任務をこれにしたのには理由があった。
一つがヒナに人間の姿に慣れてもらうためであって
次に戦闘になった場合ヒナを守れる自信がないこと、そのためにも
簡単な任務を重ねながら徐々に連携を高めていくつもりだ。
そして重要な理由がもうひとつあった。
「あ、 やっときた! 何手続きに手間取ってるのよ! 」
文句をブーブー垂らしながらフレイは歩いてくる春兎を急かしてきた。
彼はため息をつきながら目の前の彼女を見る。
最後の理由というのはフレイが絶望的に幸運度が低いことであった。
たかが難易度☆の任務、しかしこいつと一緒に受けて平和に終わるわけがないと思ったので、だったらどのくらいまでなら影響を受けないかそれを見るためにも
受けた。しかしその考えはすぐに打ち砕かれることとなる。
「春兎ちょっと手をだしなさい 」
「手?? 何でだ? 」
「いいから早く! 」
何が何だかわからないまま手を差し出す。
それを心配そうに見つめるヒナの視線にも気づかずに。
フレイは俺の手を握るなり魔法を使った。
「【
焦った春兎は瞬時に手を振りほどいたが、魔法はかかった後で既に遅かった。
「やった!! 成功よ!! 見た!? ヒナ! コイツの慌てぶり! 」
「おい、 ロリ神。 今度は俺に何をした 」
「ふふん!! 」
――何故か誇らしげにどや顔してくるあたりぶっ飛ばしたくなる。
春兎は若干イライラしたので、 グリグリを決行した・・・
しようとしたが、石に
—―石に躓くなんて。最悪だ・・・
それもよりにもよってコイツの目の前で。
「春兎兄ちゃん大丈夫・・・? 」
心配そうに近寄ってくれたヒナが、今の魔法について話す。
—―全く可愛いなー。 ヒナは!
先程、 任務の手続きをしてる間に俺にグリグリの仕返しを決行するべく
習得してた技を見せてやると言っていたらしい。
その技が能力交換。 どういう技なのか未だに分からない。
能力・・・ 能力・・・ ん?
春兎は慌てて自分のギルド証を見た。
【幸運度マイナス50】
――はっ? はぁああああ!?!?
思わず春兎は叫んだ。 そりゃあそうだ。
幸運度がアイツのを下回ってしまったから。
幸い他は、 ほとんど変化なし。
フレイのほうを見ると、 まだドヤ顔を決めていた。
「ちなみにお前の幸運度はいくつだよ 」
「私? フフン! マイナス30よ! 」
――ドヤ顔して言えるレベルじゃね――!!!
てか待てよおい。
「お前俺の幸運度盗ったんじゃないのかよ 」
「とったわよ! そしたらこうなったのよ! 」
――まさか幸運度が魔法にも影響してしまうとは・・・
哀れなりロリぺったん。
「あー! 今また私の胸見て変なこと考えてたでしょう! 」
「ロリぺったん 」
「声に出して言うなー! 」
二人のやり取りを聞いていたヒナが
春兎の方へやってきて、そろそろ行かないと間に合わない旨を伝えてきた。
流石にいつまでも付き合ってられなかったので一旦話は切り上げて馬車で隣町、
スイゲツへ行くことにした。
――隣町までは馬車で約二時間。
それまで何もなければいいが・・・
馬車で約一時間。 ここまでは何事もなくやってきた。
が、こにパーティに限って何も無いわけがない。
案の定トラブルは起こった。
馬車を扱う主人が驚いた表情をしている。
前方をみると女の子が倒れていた。
俺は急いで馬車から降りて女の子に駆け寄る。
春兎に続きヒナ、 フレイも降りてきた。
「おい! しっかりしろ! 何があった!! 」
「お・・・ 」
「お? お、 何だ?? 」
三人は顔を見合わせる。
「お腹、 空いたぁ・・・ 」
――お腹空いた???
三人は再び顔を見合わせるが、ここに放置するのもあれだと思い
一度馬車の中へと引っ張った。
そして馬車は再び動き出す。
「はぐっ・・ むぐっ・・・ 」
「取ったりしないから落ち着いて食えよ。 」
「んぐっ・・・ ぷはぁ生き返った!! ・・・はっ!
すみません見ず知らずの私にこんな食べ物を 」
「ホントよ! それ私たちの昼ご・・・ んんんん!! 」
「ちょっと黙ってフレイ 」
ややこしくなりそうな予感がしたため春兎はすぐさまフレイの口を手で塞いだ。
「もしかして必要なものでした!? すみません! 私そうとは知らずに!! 」
「いいからいいから!! 気にしないで! それよりどうしてあんなところに? 」
「はっ! そうでした! 実は私追われてて・・・ 」
――え・・・ 待って。
その言葉は聞きたくなかったんだけど。
だって、 ねぇ、 ほら。
フラグじゃん? ただでさえ幸運度マイナスが二人いるんだよ?
二人合わせてマイナス80だよ?
お兄さんくらいになったら展開読めてきちゃうからさ。
そうこう話してるうちに再び馬車が急停止した。
—―嫌な予感・・・
「どうしたのさ! 急に止まったりなんかして! 」
――おい聞くな! 馬鹿ロリ神!!
フラグが立つだろうが!!
「いえね、 前方に魔物の大群が一直線に向かってきてる気がしまして。 」
馬車を引いてた主人は不思議そうに尋ねた。
――立っちまった!!
しかもフラグはフラグでも死亡フラグじゃねーか!
「私を追ってきている奴らです 」
「えーっと、 君一体何をしたのかな? 」
「それより、 まずはあの大群を倒さないと! 」
――俺の話はスルーかよ!
って言ってる場合でもないな。
俺は密かに習得していた魔法、【
使った。ってあれ? 何か視界が近くなったり遠くなったり・・・
ヤバいヤバいヤバい! 強制解除!!! オエェ。 気持ち悪・・・
急に制御が効かなくなるなんて、 初歩魔法もいいとこ・・・
まさかこれも幸運度の影響か?
通常なら自分の視点を一定時間ズームすることが出来る
初歩的な魔法だったが今の春兎には扱いが難しかった。
「春兎兄ちゃん大丈夫?? 」
ヒナが背中をさすりに来てくれて春兎は少し楽になった。
—―何でこんな可愛くていい子なの!!
それに比べ・・・
全く、 あんな魔法使ったぐらいで情けない。 それでも男なのー? 」
――コイツ!! 今すぐぶっ飛ばてぇ!!
「で? どのくらいいたのよ 」
「ハァ。 数ははっきり見えなかったが50以上はいるな。
何か狼男みたいなのいたし 」
「気を付けてください! フェンリルです! 」
黒髪の女の子の声に、フレイは反応する。
「ちょっと待って!? 何でフェンリルが来るのさ!
あんたホント何やったらあんな化け物に追われるのさ! 」
「何かフェンリルのことを知ってそうな口ぶりだな 」
「当たり前よ! 常識よ!! 」
――コイツ本当一言多いな。
「いい?? 本来魔族ってのは多くの種族によって構成されてるの。もちろんいい奴もいれば悪い奴もいる。 その後者をまとめるのが魔王であって・・・ 」
「ちょっと待て。 肝心な部分が無い。結局アイツは強いのかよ 」
「当たり前よ!なんせ次期魔王候補、 幹部のうちの一人よ?全部で13人いるって聞いてるけど、 アイツはその中の一人ってこと! どいつも魔力は化け物級。 小さな村なら一人だけでも潰せるでしょうね 」
――そんな重要なことは先に言ってくれよ!
今初めて知ったわ!魔王に直属の部下がいるなんて!
てかもう、 すぐそこまで来てる!!
ヤバいヤバいヤバい!!!
「皆さん私が囮になります。 今のうちに 」
「何を言って!? 」
「私のせいでこれ以上迷惑はかけられません・・・ 」
「分かった。 でも囮にするのは無しだ。 俺が敵を倒す―― 」
――さーてどうしようか。
女の子の手前カッコつけちゃったけど
勝てる算段がまるでないんだよなぁ。
しかも幸運度マイナスだし。
いや、 戻してもらえばいいのでは?
「フレイ、 俺の幸運度を—―」
「無理。 」
「即答!? てかどういうことだよ!! 」
「私の魔法ほとんど一回きりなんだよね 」
―――――クソッタレ!!
勝機が絶望的になってきた。
そんな不安な顔を感じ取ったのか、
今まで会話を黙ってみていたヒナが口をひらいた。
「春兎兄ちゃん、 目の前の敵倒したほうがいい?? 」
「そりゃあ倒したほうがいいけど、 あれだけ数がいたら 」
「大丈夫。 任せて?? 」
ヒナの声と同時に大群が、 到着してしまった。
「こんなところまで逃げて、 早く帰りますよ 」
到着早々フェンリルと思われる男が言葉を発した。
「いやです。 私はあそこには帰りません!! 」
「往生際の悪い娘だ。 俺は仮にも魔軍の中でも7番目に強いんですがね。力ずくにでも連れて—―」
「【
春兎含めフレイ、 黒髪の少女は唖然とした。
あれだけいた魔物の大群だけでなく幹部の一人フェンリルまでも
一瞬で凍り付かせてしまったのだ。
「春兎兄ちゃんをイジメる人は許さない。 【
話を言いかけたフェンリル、 魔物の大群がまたも一瞬で今度は
氷のまま霧散した。
それもまるで何もなかったかのように、綺麗に消えたのだ。
――す、 凄ぇ。
「春兎兄ちゃん、 これでいい?? 」
「凄いなヒナ! 今の呪文! 全部一瞬だったじゃないか! 」
春兎はヒナの頭を撫でながら褒めた。
ヒナはそれを心地よさそうに受け止める。
「まさか、 フェンリルを一瞬で 」
黒髪の女の子も流石に驚いていた。
暫く考えた後、 何かを決意したように春兎に懇願する。
「あの、 よろしければ私をこのパーティにいれてくれませんか?! 」
「んんん!? ちょっと待った!
何を思ったのか知らないけどこのパーティに!? 」
「はい! 私を入れてください!お願いします! 」
少し考えて後ろの二人を見た。
「今更一人も二人も関係ないわよ! 」
「私は春兎兄ちゃんがいいなら、 いいよ? 」
――やっぱそうなるか。
「分かった。でも今は
正式なパーティ加入は帰ってからね? 」
「はい! よろしくお願いします! 」
「さてと移動は、 馬車が無いんじゃあ歩くか。
ここからはもう歩いて30分くらいだし 」
馬車は、 魔物のとのゴタゴタがある前にとっくに引き返してしまった様だ。
「そういえば名前は? 俺は冬月春兎。 こっちが
自称じゃないってば!! というフレイの言葉を無視して
黒髪の少女に名前を尋ねた。
この子も身長が150くらいだろうか。 ヒナよりは若干高い気がする。
「私の名前はアレッタ=シルベットって言います 」
――なるほどアレッタね。 ・・・ アレッタ?
「アレッタちゃんはここに来る前何かやってた?どこにいたとか 」
――かそんなはずは、 ないよなぁ。
「私のことはアレッタって呼び捨てで構いませんよ。
えーっとここに来る前ですか? 魔王の娘をやってました。
キャッ! 言っちゃった! 」
――キャッ! じゃなくて!! 思い出した!!
フレイの姉が言ってた言葉!
今はっきりその言葉を思い出した!
『そうだったわね。 アレッタ。 彼女は魔王の娘―― 』
「あの、 すみません。 やっぱり駄目ですよね。 魔王の娘なんて 」
黒髪の女の子が泣きそうな表情になるのを
俺は慌てて止めさせた。
「大丈夫! 少し驚いただけだから! 魔王の娘でも神の娘でも来いってんだ! 」
「ありがとうございます! 優しいですね春兎さんは 」
こうして黒髪の少女アレッタ=シルベットがパーティに仮加入を果たしたが、
春兎の心は泣いていた。
—―魔王の娘を仲間にしたって知られたら、 一体どうなるんだろう・・・
しかも悪い予感的中して段々ロリパーティ、略してロリパが
出来上がっていってしまう。
しかも三人とも物凄く可愛いから困る。
フレイも普段は煩いが、 表情豊かで可愛いというのを本人に言ったら殺されそうなので絶対に言わない。
春兎は複雑な気持ちを持ちながらも、 三人と一緒に
隣町スイゲツへと移動するのであった。
道中フレイの顔が赤くなってたことを三人は知る
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