後輩の実力2

「今日はここまで、今日の範囲はテストにかなり出すつもりだから復習しとけよ」

四時間目の現国という、最も辛い時間を乗りこえ、響は思わず軽くため息が出てしまった。

「響、一緒にめ・・・おっと、これから大切な用事があるんだった・・・それじゃ」

友人が響とご飯を食べようとすると、何故か何かを察したような顔をしながら教室を出ていってしまった。

「なんなんだあいつ・・・」

「先輩、一緒にご飯食べましょー」

そう言われ後ろを振り返ると、教室のドアから顔を出した葉桜が待っていた。

「俺は別にいいけどさ。昼くらいほかの友達と食べないのか?」

「そんなに昔の女が気になるんですか?大丈夫ですよ。私って一途ですから」

葉桜はそう言いながら、楽しそうに響の肩を叩いた。

「何の話だ。まぁ、それならそれでいいんだけどな」

「ちょ・・・ちょっと待ってください!」

すると今度は教室の方から呼び止められ、響たちは後ろを振り返った。

「二色先輩じゃないですか。どうかされました?」

「私も響くんとお昼ご飯食べたいです・・・」

「友達と食べないのか?」

「いえ、その・・・ハブられたので」

何とか口実を作ろうと、必死に考えた上のこれである。

「いじめられてるのか!?」

その言葉に響はかなり動揺した。

響がいつも二色とご飯を食べているグループを見ると、何故かこちらに向かってグーサインを出した。

(ハブって、その上で煽るなんて・・・悪魔なのかアイツらは)

その態度に響はかなりの恐ろしさを覚えながらも、それなら仕方ないと二色とも食べることになった。

「葉桜もそれでいいよな?」

(絶対にクラスメイトの余計なお世話の性なんだろうな・・・)

葉桜は完全に他人事の気持ちで、その様子を眺めていた。

「構いませんよ。朝は二色さんとだけ話せてなかったので」

そして時同じくして教室内

「私も・・・」

「みのりはダメ。これからこの子の恋愛相談聞くって約束でしょ?」

「私はこのままだとレースにすら乗れなくなっちゃうの・・・」

「だーめ、1回のイベントくらいの好感度なら何とかなるよ」

おおよそ(重要)全年齢向け乙女ゲームを好むクラスメイトに止められ、神崎は立ち止まる。

「人生は恋愛シュミレーションじゃないの!」

結局、このまま神崎は動くことが出来ず、5時間目が始まるまで、友人の恋愛相談を聞くこととなってしまった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「今日の屋上は・・・まあまあいるな」

風も穏やかで、心地いい日差しが当たる屋上は、この学校でも屈指の人気スポットだ。

「あれってさ・・・」

「ついに後輩も・・・」

響は、何故か当てられる目に気づいた。

「なぁ、俺たち見られてないか?」

学年どころか地域で有名な響、さらには学校では神聖化に近い扱いを受ける二色、そして学年を飛び越えて話題に上がる葉桜がいるのだ。

2人はそのことを分かっていたが、あえてこの場で言うことはなかった。

「そんなことよりも早速、ご飯いただきましょ」

「それもそうだな」

俺はそう言って、今日の朝に買っておいたコンビニ弁当を・・・

「ダメですよ先輩!そんな体に悪いもの食べたら」

「って言っても、母さんは仕事忙しいし、俺も料理得意じゃないからな」

「もしよかった、実は先輩のためにもう1つ作ってきたんですけど・・・」

そう言って、持っていた弁当箱の1つを響に渡してきた。

「くれるのか?」

「はい、元々先輩のために作ってきたので」

響が弁当箱を開けると、そこには色とりどりで見るからに食欲をそそるようなラインナップが揃っていた。

「好きなものがあるか分からないんですけど・・・」

「いいや、俺の好きなものばかりなんだけど。葉桜って俺の好きなもの知らないのか?」

「いえ、本当に知らないです」

そして響は早速、おかずから食べ始めた。

「美味しいな・・・」

作ってからしばらく経っているはずなのだが、肉を噛めば肉感もしっかり感じる、野菜も今採ってきたような新鮮さがある。

「これコンビニ弁当に戻れなくなりそうだ・・・」

「だったら私が毎日作ってきましょうか?自分の分のついでですから」

かなり魅力的な提案に、響は箸を止め、悩んだ。

「・・・いや、やっぱりいいや。でも自分で作ってはみたいな」

「それでしたら少しですけど料理教えましょうか?」

「いいのか?ぜひお願いしたい」

「ではまたいつか教えに行きますね」

「むむむ・・・」

その2人だけの空気に耐えられなくなった二色は唸り声を上げた。

「響くん、私のも食べていいよ」

「でも、それコンビニのパン・・・」

「いいから食べてください!」

二色が響の口の前に押し出し、それを諦めたように響は食べた。

「どうですか?」

「・・・ただのパンだな」

どう?と言われてもただのパンだ。

こうして二色も、必死に食らいついたが(ただのゴリ押し)あえなく葉桜に散った。

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