転校生×幼馴染×異能力者

「おはよ・・・ってどうしたの?みんな騒いで」


響と神崎が教室に入ると、いつもとは明らかに雰囲気が異なっていた。

男子女子ともに落ち着きがなく、その様子は何か一つの物事に興味を惹かれているようにも見える。


「それがさ、今日から転校生が来るらしくて。しかも女の子らしいからよ!」


クラスメイトが興奮を抑えられない様子で2人に説明してきた。


「女の子か、それにしてもこの時期に転校なんて珍しいね」

「なんせ昔はここら辺に住んでたらしいぞ。篠田も女の子増えるの嬉しいよな!」

「もちろんだ。女子でも男子でもクラスメイトが増えるのに越したことはない」


すると周りの男子から嘆息混じりの溜息が聞こえてきた。


「そうして何人落としてきた!?」

「興味ないとか言って、勝手にあっちから来るのを待ってるんだろ!?」

「そんなつもりはないんだが・・・」


響は、その狂った男子達に、思わず後ずさった。


「相変わらず苦労してるね。篠田くん」

「友人、見てたなら助けてくれよ」


クラスメイトの中でも響とかなり仲が良く、1年生の時からの響の友達である東 友人(ともひと)だ。


「他の所を見てたからね。モヤモヤしてる恋する乙女は見ていて応援したくなるよ」

「言ってる意味が分かんないんだが」

「そういうのがいいのかね・・・」


すると教室の前の扉が開いた。


「お前ら席つけーホームルーム始めるぞー」


担任がそう言いながら入ってくると同時に、男たちは一瞬のうちに席に移動した。


「知ってるやつもいるとは思うが、今日から一人このクラスに入ることになったやつがいる。入っていいぞ」


担任がそう言うと、躊躇いを感じさせることもなくドアを開けて一人の女生徒が教室に入ってきた。

セミロング程度の白に近い銀髪、少し覇気がないようにも見えるが綺麗な双眸、顔は少し丸みがあり、その肌は雪に近いものを感じる。

さらには、その体躯も相俟ってか同い年とは思えないほどの庇護欲を感じさせる。


「軽く自己紹介してくれ」


担任に促されるようにして、女の子は黒板に自分の名前を書き出した。


「初めまして二色 小夜です・・・これからお願いします」


少し緊張しているのか、やや声は小さかったが、今のクラスメイトにはそんなものは関係ないようだ。

教室からは拍手が湧いた。

教室の様子を見た響は能力の試運転を兼ねて、クラスメイトからの二色の印象を見てみることにした。

目をつぶり、対象となる人をイメージした。

「可愛い」

「可愛い」

「尊い」

「なまら可愛い」

「あれが天使なのか・・・?」

表現の違いはあれど、かなり好感が持たれているようで孤立の心配はなさそうだ。

言葉として分かってしまうほどに強い感情が渦巻き、別の意味での心配を感じるほどだった。


「二色の席は・・・っと二色どうした?」


二色は教壇を降りると、窓側の席へと歩いてきた。


「・・・・・・」


と思ったら、何故か俺の席の前で止まってしまった。


「えっと・・・二色さんどうしたのかな?」

「・・・覚えてないですか?」

「・・・え?」

「響くんは私のこと忘れちゃった?」

「どこが出会いましたか?」

「はい」


しかし下の名前で呼ぶような間柄の人でこんな名前の人響の記憶にはない。


「ごめん、分からないんだけど」

「・・・相川 小夜・・・です」

相川・・・相川・・・

「・・・もしかして小学校か中学校で一緒だった?」


二色は黙ってうなずいた。


「そうなのか。ごめん、やっぱり何も思い出せそうもないや」

「そうですか・・・」


二色は少し落胆するように、肩を落とした。


「なんだお前ら知り合いなのか。だったら席も近い方がいいよな」


すると左隣の席だった女子が、早急に片付けを済ませると、二色には見えないように親指を立ててきた。


「私でよければ移動しますよ」


そのまま手を上げた。


「本当か、だったら二色の席はそこに決まりだ。連絡事項もないから解散」


担任が教室を出ていくと、転校生の宿命のようにクラスメイトが群がってきた。


「・・・どうして男は俺の周りを取り囲むんだ?」

「分からないのか?」

「全く」

「もはやお前にとっては運命は操れるのかよ!」

「せっかく可愛い子が転校してきたってのに、初日から絶望させるとはいい度胸してるなぁ!」

「ガッデム!ガッデム!」


話を聞く感じ、どうやら二色のことで怒っているらしい。


「ただ小学校が同じやつを見つけただけだろ?俺だって特に印象に残ってた訳でもないしな」


そんな俺の言葉を裏切るようにして、隣の女子の囲みの中でも質問攻めが盛りあがっていた。


「篠田くんとはどういう関係なの!?」

「私は大切な人だと思ってます・・・」

「それは好きってこと?」

「別にそういうわけじゃ・・・」


しかし二色の顔が赤くなるのを見て、女子たちはニヤニヤとしている。

そして一部の女子はその姿を見て、悶えているようだが、俺にはそんな余裕はなかった。


「本当にどういう関係なんだよぉおおお!!!」


二色の周りにいた女子達の話を聞いていたのか、1人のクラスメイトの悲痛な叫びがこだまする。


「だから元同級生なだけで・・・覚えていることなんて何も無いんだぞ?」

「あんな美少女に覚えててもらえるだけで、十分じゃねえかよぉおおおおおおお!!!」


今にも血の涙を流す勢いで男たちの雄叫びが響いた。


「むむむ・・・・・・」


何やらさっきから二色の元へ行かず神崎が唸っている。


「神崎は行かなくていいのか?」


女子たちの輪に入れていない神崎に、響は声をかけた。


「べ、別に後からでも仲良くなれると思うから・・・」


しかしその様子は、何やら少し苛立っているようにも響には見えた。

試しに神崎に感情共鳴を使用すると、何故か神崎を含めた女子の何人かは敵視に似た感情を持っていた。

少し感情の強さが弱いところからも、その感情は「ライバル視」に近いようだ。

いったい何に対してのライバル視かは定かではなかったが、響の中では少しだけモヤモヤが残ることとなった。


「神崎もあいつと仲良くしてやってな」

「も、もちろんだよ!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


(能力・・・・・・言の葉遊び)

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