異能系ラブコメの基本的なデート

「・・・どうしてこうなったのよ」


あまりにも予想外の事態に、神崎の口からはそんな言葉が出てしまった。


「偶然に偶然が重なるってのは本当にあるんだな」


今日は神崎と響2人でのアミューズメントパーク「ディスティニーJAPAN」でのデートの予定・・だったのだが


「まさか俺まで福引で当てるとは思わなかったけど、こうして3人で来れたから、よかったよ」


今日から数日前そして神崎が福引を引いてから数日後、篠田くんも福引を引いた結果、まさかの一人のチケットを当ててしまったのだ。


「おかげで私までご一緒させてもらえたし、本当にありがとうございます」


柔らかい笑顔を二人に向かって見せてくる二色だが、やはりその笑顔がムカついた。


「あまり入場門で立ってるのも邪魔だしさ。早く行こう」

「それもそうだね」


3人は入場口でチケットを見せると、園内に入った。


「中学の友達と来て以来だし、久しぶりに来たなー」

「私は初めてです」

「確か俺は2回目かな」

「とりあえず何か乗ろうよ。2人は何か気になる所ある?」

「ジェットコースターとか行ってみたいな」


響は楽しそうにパンフレットを見ながら言った。


「確か日本でも屈指って言われてるやつがあるよ。いきなり行くのはいいけど、二色さんは大丈夫?」

「私は構いませんよ」


ここでは残念ながら、神崎の理想通り2人っきりになることは出来なかったが、神崎自身はそれ以外のことで心臓がドキドキしていた。

自分から言っているのだが、神崎はかなり絶叫系が苦手な部類だ。

しかしそんな恐怖心よりも響と二色を2人にしたくない気持ちが打ち勝ったのだ。

神崎も、二色にも自分の響への感情が悟られていることは分かってきている。

彼女も篠田くんへ同じ感情を抱いてることも私は知っているし、だからこそ二色さんは篠田くんの近くをなかなか離れないだろう。

しかしそうなると、神崎の状況作成が上手く使えない。

状況作成を使うにあたって、大人数に軽いイメージを与えるよりも、1人に対して細かいイメージを与える方が大変なのだ。

二色も能力には気づいていないが、神崎の気持ちを知った上で、神崎を響には近寄らせないつもりでいる。

しかし神崎の中での真の目的の遂行にはなんの問題もないのだ。

予定通りとは行かなかった遊園地デートだったが、また1から計画を練り直し、今の神崎の目的は「響に異性として見てもらう」になっている。

そこに二色が干渉することは難しいし、遊園地、状況作成と揃った今の状況では容易いとすら言える目的であった。


「まだ開園したばかりだし、人も少ないから早く乗れそうだね」

「どれくらい怖いんだろ・・・」

「もしかして神崎ってあんまりジェットコースターとか得意じゃないの?」


完全に口を滑らせてしまった。

神崎はこれを、落ち着いてカバーしようとした。


「ちょっとだけね・・・でも篠田くんもいるから大丈夫だよ」

「そうか、ならいいんだけど」

(違うだろぉおおおおおおおお!!)


なんなんだこの男!前世で修行僧でもしてたのか!?もしくは現世でもなのか!?

神崎が今にも髪を振り回したい気持ちでいると、どうやら次が3人の番になるようだ。


「楽しみだね。響くんは自分で言うくらいですし、好きなんですよね?」

「風が気持ちいいから結構好きだな。だからグワングワンするのは好きじゃないな」

「楽しみ方が変わってるね・・・」


軽く話に加わりながらも、神崎はここでの準備を始めた。

目をつぶり、頭の中で「篠田くんと隣の席になる」を強くイメージした・・・が

能力は発動したのだが、いつもとは少し違う感覚に、神崎は少し戸惑った。

しかしその答えは、すぐに分かった。


「3人はお友達ですかね?でしたらこちらに奥から詰めてお座り下さーい」


・・・3人席

こうして神崎と二色で響を挟む形となり、軽い説明を受けると、ジェットコースターは音を立てて動き始めた。

軽い坂道までは何とかなっていた。

しかし長い上りの後に待っていた・・・


「・・・・・・いやぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」


篠田くんにしがみついちゃえ!とか考えている場合ではない。

叫んでも叫んでも、終わることを知らない殺人マシーン


「やっぱり朝ですし、少し寒いですね・・・」

「寒さより隣の心配したいんだが」

「いやぁああああああああああ!!!」


叫びすぎで息が苦しくなってきたが、そんなことは今の神崎の中では処理しきれない。

ようやく終わりを迎えた時には、頭から抜けるような虚脱感が神崎の体を襲ってきた。

終わってから数秒経ち、ようやく状況を把握出来るようになってきたところで、神崎は隣にいた2人を見てしまった。


「怖かったです・・・」

「分かったからいい加減に離れてくれよ・・・」

(このアマァアアアアアアアアアア!!!)


確信犯・・・ではないらしいが、そんなことは神崎にとってどうでもよかった。

神崎のその様子に、二色も満足しているようだ。

殴りたくなる気持ちを抑え、神崎は2人に笑顔を向けた。


「2人は楽しかった?」

「「まあまあ(です)」」


響とすら、2度とジェットコースターに乗らないことを神崎は強く心に誓った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


(係員のお姉さんに言の葉遊び使って正解でした)


強調された言葉は「3人」と「奥」だった。


(多分私たちが話してたのを聞いてたみたいだったし、奥って言葉は真ん中に響を座らせた時に回転で近づきやすいって事だったみたいだね)


私にここまでの頭脳をくれた親に感謝しながら、私は2人について行った。

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