同時刻花咲戦場
「まずは何から教えるか・・・2人はどこまでお菓子は作れる?」
「基本は大丈夫です」
「私も普通のお菓子くらいなら」
2人の話を聞き、友樹は少しイメージを付けた。
「ふむ・・・2人にもコンペに参加してもらうから、地域の人にも恥を晒したくないし、1人1品に集中してもらおうかな」
「え?コンペって地域の人も参加するんですか?」
「審査員は多い方がいいからな。そうと決まれば何作るか考えてくれ」
しかし2人からは嫌な汗が噴き出してくる。
実はこの2人、ここまでで嘘をついている。
((やばい、そんなにお菓子作れない))
ここに来る前に基本的なことは調べてきたが、実際に作ったことはない。
完全にライバルに見栄を貼った末路だ。
「私はクッキーにしようかな」
先に決めたのは神崎だった。
しかしクッキーを提案された友樹は難色を示した。
「神崎はクッキーか・・・簡単すぎないか?」
「だからこそアレンジや味にオリジナリティが出せるんですよ!」
目を輝かせるように彼女は説明した。
(手作りの味とか知らないけど!)
「だったら私はカップケーキにします!」
(作ったことないけど、真剣な眼差しで見とこ)
「おっ・・・おお、熱意は分かったよ。材料用意してくるから待ってな」
2人のやる気に少し嬉しさを感じながら、2人の前に材料を置いた。
「とりあえず基本は分かるらしいけど、何か聞きたいことはあるか?」
「カップケーキはどこが重要なんでしょうか?」
「カップケーキのどこが重要とか言われてもな・・・時間配分と調合くらいしか思いつかないな」
(これじゃあ言の葉遊びが使えない)
相手が話した言葉からさらに情報を得ることが出来る言の葉遊びだが、これではさらに知ることが出来る情報がない。
(今回は状況作成お休みかな・・・)
こうして2人の間に能力なしのガチンコ勝負が始まったのだ。
(2人もお互いに見合って・・・そんなにコンペに勝ちたいのか)
違うと思う
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「2人とも完成したみたいだな。早速食べさせてもらうぞ」
やはりお菓子ということもあり、完成は終業時間のギリギリとなったが、2人は自分のお菓子をなんとか完成させることができた。
「・・・・・・」
2人のお菓子を慎重な手つきと、真剣な目で判断している。
ここではプロとしての意見が必要なのだと分かっているのだろう。
食べる前に形や色、さらに匂いを確認している。
2人も友樹のその真剣な態度に、思わず緊張してしまう。
「・・・・・・これは2人ともの評価というか、言いたいことなんだが・・・」
友樹の目が私たちを見た。
しかしその目には、呆れが混じっていた。
「お前らお菓子作ったこと本当にあるのか?」
「「すみません、ほとんどないです」」
シンクロしながら私たちが謝ると、ため息をつきながら呆れたような表情を見せた。
「どうして見栄なんて張ったんだ。お前ら競ってるのか?」
「競ってるって言いますか・・・」
「お菓子作れる女の子っていいじゃないですか」
誰にでも分かるような真の理由は言い方になってしまったが、別に見ていなくても戦いは起こるのだと言いたかった。
明らかに分かる2人の言動を聞いた友樹だったが、ピンと来ていないようだ。
「・・・?どうしてそこで女という要素が出てくるんだ?」
((こいつ篠田くん(響くん)と同じ世界の人間だ))
どこかで見たことがあるような茶番劇をしていると、後ろから店長がやってきて友樹の頭をチョップした。
「何をするんだ」
「こっちのセリフだから、どんだけ察しが悪いのよ」
「・・・?なんの話しをしているんだ」
「本当にこれと結婚出来た私ってすごいなぁ。2人とも私は分かってるから大丈夫だよ。困ったら私呼んでくれてもいいからね」
ウインクしながら手を振って、更衣室へと入っていく店長に気恥しさと「苦労してるなぁ・・・」という思いを抱いてしまった。
「2人もそろそろ上がっていいよ。明日からはもう少し口出しながら進めていくから」
「分かりました。お疲れ様です」
「お疲れ様でした」
私たちは軽く頭を下げると、更衣室へと移動した。
「おっ、2人も上がりだね。お疲れ様〜」
「お疲れ様で・・・」
「お・・・・・・」
制服を脱ぎ、半裸になった店長に、私たちは呼吸を忘れた。
形のいい胸に、ほどよくくびれた腰、引き締まったお尻と全世界の女性が羨む体型を実は隠し持っていたのだ。
「あれくらいあればいけるのかな・・・」
「実に・・・ないです」
「2人とも何見てるのよ。別にまだ2人は成長途中でしょ?何よりもね、男を落とすのに身体は必要ないの。それが必要になるのは落とした後よ」
「「し、師匠・・・」」
それにしてもこの2人、能力が使えないとただのポンコツである。
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