第7話
私の落胆の声を聞いて、アキラさんが不思議そうな顔をした。
「あ、まずいですか?」
「こう、いかにも異世界産の物とか、古代遺跡から出たっぽい魔道具なんかは没収されちゃうんですよ……。ちゃんと正規ルートじゃないと牢にぶちこまれて罰金も取られます。
正規ルートとなると代書人を通して国に申請するんですけど、相当待たされますし税金も結局取られますし……」
「なかなか厳しいですね……。
まあそれも治安の良さの現れでしょうか」
「いえ、単に税金かっぱぎたいだけで、難しいことは考えてないと思います」
「お詳しいですね、テレサさん」
「祖父がそういうのに手を出そうとして…だから法律云々抜きにしても家訓でNGなんです」
「なるほど、実感がこもっている、と」
「まあ自分でこっそり使う分には隠せるとは思いますけど、売るとなったら遅かれ早かれ国に見つかりますね……」
「なかなか、お金を稼ぐのも大変ですね」
と言って、アキラさんは茶を一口すする。
私もつられて飲む。
うーん、いつもより美味しい。
「手っ取り早くお金を稼ぎたいときの定番などはありますか?」
「身分によりけりですけど……」
私は一つ一つ考える。
まず、順当なのは……
「魔法使いが手っ取り早く金を稼ぐなら、ダンジョンでのモンスター狩りですね」
「ほほう」
「ただ……」
めんどくさい。
私が契約している、アキラさん以外の召喚獣を呼び出せばダンジョン攻略は簡単だ。
だが結局私の足で歩いてダンジョンへもぐり、暗くジメジメした場所を何回も何回も潜らねばならない。それにモンスターを狩っても、上手く換金性の高い素材を落とすかどうかはバクチだ。そこに浪漫を感じる冒険者も多いが私はそうではない。そもそも剣を振ったり魔法で魔物を倒したりという危なっかしい仕事をしたくない。
「……めんどうなんですよねぇ。モンスターを上手く倒してもお金になるかわからないですし」
「私も、申し訳ございませんが腕っ節には自身が無くて」
アキラさんは残念そうに首を横に振る。
確かに武器の一つも持っていないし、服装もどこかインドアな雰囲気だ。
この人に前衛で戦ってくれと言うのも酷な話だろう。
「いえいえ、気にしないでください。
どうせダンジョンに潜るなんてバクチですし。
それなら本物のバクチ……カードとか競竜やったほうが良いかも」
「ご主人様、競竜とは?」
アキラさんが興味深そうに尋ねてきた。
「陸竜が走って、一等と二等を当てる博打です。
この街の名物で大人気なんですよ、学生も先生達も競竜を見たくて授業すっぽかしそうになりますし」
かく言う私も、競竜を見ながら竜券を買ったことがある。
しかしどれも当たること無く、小遣いをドブに落とした結果になった。
「でもお金無いときに博打なんて転落まっしぐらですから、流石に頼れませんね」
「……それ、ちょっと見に行ってもよろしいですか?」
アキラさんは私の話を聞いて、微笑んでいる。
無表情でわかりにくい顔をしてる人が珍しく、はっきりと。
「良いですけど……竜券は買いませんよ? それともあてる自信とかあります?」
「いえまったく。見るだけですから大丈夫ですよ」
「はぁ……」
まあ、アキラさんはこちらのお金をさほど持ってないし良いか……。
私も熱くなって券を買わないように大金は持って行くまい。
そういうことにして、彼を競竜場に案内することにした。
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