流れる星は暁に抱かれ

作者 結城かおる

ほろ苦く甘い成長物語を起点に、涼国の世界へ……。

  • ★★★ Excellent!!!

長編『涼国賢妃伝』につながっていく物語なのですが、『涼国』未読、あるいは、この作者の作品自体初めてという方にも、是非お薦めしたいお話です。

後に涼国の王となる桂舜の公子時代のお話です。
当然、時系列としては、『涼国』よりも前になります。
なので、こちらを先に読んでなんら問題ありませんし、『涼国』より短いので初めての方にもお薦めしやすいように思います。
(『涼国』で王様になった姿を知らない状態で読むのも、また面白そう……)

私は、作者の描く「成長物語」がとても好きです。
中華風ファンタジーなので後宮や朝廷の地位の高い人が登場人物の中心になるのですが、彼らが「その地位」を得るまでの苦労、また「その地位」を得てしまったが故の苦労が丁寧に、かつテンポよく描かれており、悲しいこと、悔しいことを経て、最後には一回り成長した姿を感じる、とても健全な爽快感があります。

この話も後に王となる桂舜公子、その護衛劉星衛、桂舜の異母妹明楽公主……それぞれに悲しみや苦しみを経て、成長していきます。

彼らの置かれている状況は、中国や東アジアの王朝を緻密に模した異世界固有のものでありながら、現代の私たちが苦しみや悲しみの中で抱く葛藤として読める、普遍性を持っています。その世界の固有性と、現代の読者が共感できる普遍性。作者が大切にしている価値観(エッセイ『罫線のないノオト』など)がしっかりと守られた作品で、私は「教養小説」として愛読しております。

まあ、堅いこと言いましたけど、普通にアクションあり、友情あり、兄弟愛あり、のテンポのいいお話です。
難しいことを考えずに読んでみて下さい!

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