流れる星は暁に抱かれ

作者 結城かおる

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★★★ Excellent!!!

 異世界ファンタジー小説というものは、その世界観を表現するのに、こちらの世界では使わない言葉を書き連ねるものという思い込みを、この『流れる星は暁に抱かれ』は軽く打ち破ってくれた。読み進めていくうちに、「それもそうだなあ、異世界ファンタジー小説といえども、登場人物たちは、こちらの世界に住む自分たちと同じように、温かい血が流れていて、喜びを喜びと思い、悲しみを悲しみと思う人間なのだから」と、気づかされる。


 読者を飽きさせない展開が次々と繰り広げられ、そのエピソードの1つ1つがたとえその結末は悲しいものであっても、なぜか、読者の心は、爽やかな読後感に包まれる。それは、作者の心の中に、温かい他者への思いやりと、人は常に成長していくものだという確信があるからだろう。


 …ということで、『流れる星は暁に抱かれ』を読んでいる間、私は、「そして今夜も、彼ら(桂舜・劉星衛)に逢いたくなる…」状態だったのだけど、読了後もその思いを止めることは難しく、『涼国賢妃伝~路傍の花でも、花は花~』で、また彼らと逢います!
 

★★★ Excellent!!!

涼国の若き公子、桂舜は、宮廷での窮屈な日常を厭い、
夜闇に紛れて逃げ出しては酒場街をうろうろしている。
この文武両道で優秀なはずの公子の困ったふるまいに、
父たる王はきわめて強烈な妙案を思い付き、実行した。

これこそが、暴れん坊将軍ならぬ「暴れん坊主上」と、
かさばった武官あらため「ガンダム」の出会いである。
「何のこっちゃ?」と興味をひかれた読者の皆さんは、
ぜひとも『涼国賢妃伝』シリーズをお手に取られたい。

若かりし日の桂舜と劉星衛の出会いを巡るエピソード。
王の血を引く異母兄妹との情愛とその身分ゆえの葛藤。
権門が幅を利かせて、王家といえど盤石ではない国情。
厳寒の国境の砦で経験した初陣、星空の下での語らい。

型に嵌まらない第二公子・桂舜が成長してゆく武勇伝。
運命はままならない。
そんなもどかしさを抱きながらも、
勢いよく前進していく桂舜の姿に釘付けになりました。

★★★ Excellent!!!

側室の子。第二皇子。この時点で「ああ、この王子様は不遇だな」と思っちゃうのが世の常人の常。
こちらの主人公・桂舜公子もそんな一人。


しかし、不遇とは言えど、胸では炎が燃えている。
全てを救いたいという願いは、目の前の小さな一人を助けるから始まって。
厳ついから安心感がパナい、武官の友人を得てからは、その出来ることが大きくなっていって。
そして、道は王座へと――

作者様の手による別作品『涼国賢妃伝』に登場する王様の、若かりし日の武勇伝。
強かで、それでいて常に正しくあろうとする王が如何にして立ったのかを知る物語です。ご覧あれ。

★★★ Excellent!!!

普段宮廷から一歩も外に出ない天上人たちは
一般市民の暮らしが見たくなるものなのです。
八代将軍しかり、ローマの休日のアン王女しかり。
もちろん『涼国賢妃伝』の主上の若き日、桂舜公子も。

お忍びで自分を隠して、自分の目で見たくなる。
すると、必ず波乱が起きます。
時に護衛が酷い目に遭わされてしまうことも。号泣。

特に胸を打つのは
冬の夜空の下、劉星衛と心を交わす回、
妹明楽が銀の牡丹を置いて別れを告げる回、
体の弱い兄の世子と布団を並べて言葉を交わす回。
心にいつまでも残る名シーンの数々です。

彼がいつしか自分で国を治める日に
この日々が思い出され、良い判断をしてくれますように。
是非、この後は『涼国賢妃伝』を読んでみて下さい。
人は経験によって、変わっていくものですから。

★★★ Excellent!!!

長編『涼国賢妃伝』につながっていく物語なのですが、『涼国』未読、あるいは、この作者の作品自体初めてという方にも、是非お薦めしたいお話です。

後に涼国の王となる桂舜の公子時代のお話です。
当然、時系列としては、『涼国』よりも前になります。
なので、こちらを先に読んでなんら問題ありませんし、『涼国』より短いので初めての方にもお薦めしやすいように思います。
(『涼国』で王様になった姿を知らない状態で読むのも、また面白そう……)

私は、作者の描く「成長物語」がとても好きです。
中華風ファンタジーなので後宮や朝廷の地位の高い人が登場人物の中心になるのですが、彼らが「その地位」を得るまでの苦労、また「その地位」を得てしまったが故の苦労が丁寧に、かつテンポよく描かれており、悲しいこと、悔しいことを経て、最後には一回り成長した姿を感じる、とても健全な爽快感があります。

この話も後に王となる桂舜公子、その護衛劉星衛、桂舜の異母妹明楽公主……それぞれに悲しみや苦しみを経て、成長していきます。

彼らの置かれている状況は、中国や東アジアの王朝を緻密に模した異世界固有のものでありながら、現代の私たちが苦しみや悲しみの中で抱く葛藤として読める、普遍性を持っています。その世界の固有性と、現代の読者が共感できる普遍性。作者が大切にしている価値観(エッセイ『罫線のないノオト』など)がしっかりと守られた作品で、私は「教養小説」として愛読しております。

まあ、堅いこと言いましたけど、普通にアクションあり、友情あり、兄弟愛あり、のテンポのいいお話です。
難しいことを考えずに読んでみて下さい!

★★★ Excellent!!!

 後宮暮らしに窮屈さを感じている主人公の桂舜(けいしゅん)が、主上となるまでの成長譚。
 可愛がってきた妹の婚姻、少し距離を置いてきた兄との愛情と別れ、頼もしい武官との信頼、などを通して桂舜は成長していく。
 
 イベントが適度に続き、時代劇風ストーリーがテンポ良く進むので読者を飽きさせない。
 やや不遇だった主人公が主上となる大団円だが、いくらかの切なさも残る読後感が心地良い。

 中華作品特有の語彙が注意深く置かれ、また、権力闘争のような政治や活劇のテイストもサラッと入っている。
 なので、中華モノに馴染みのない方が最初に触れるには良い塩梅の作品となっている。

 六万字未満の中編なので負担にならず、もっと読みたいと思わせてくれる盛りだくさんの内容なので、是非、一読していただきたい作品です。