概要
妹を預ける先は、烏翠の王族で旧知の弦朗君(げんろうくん)。味方であり味方でなし、敵であり敵でなし。
若者2人はかねての約束通り、月下で酒を酌み交わす。互いの立場を思いやり、行く末に不安と希望を抱きながら――。
「戦場を渡る蝶 ~翠浪の白馬、蒼穹の真珠外伝2~」の続編となりますが、本編だけでも読めるようになっています。
「小説家になろう」「マグネット!」との重複掲載です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「あたえられた環境でいかにふるまうか」
著者の作品は全て読ませていただいていますが、全ての作品に共通するのは、登場人物が自分の人生を自分で選べないというところです。
『螺鈿の鳥』の仙月は宮女として生きていくしかなかった、『チンチロリンとガーシャガシャ』の夫婦は戦争に翻弄されるしかなかった、そして『翠浪の白馬、蒼穹の真珠』のレツィンは人質として烏翠に赴かざるを得なかった。
でも彼らは本当に運命の囚われ人だったのか?
本作品の弦朗君も、王族としての枷から逃れることは出来ません。サウレリも族長代理として最愛の妹を自らの手で人質に差し出さなければならない。そして2人に許された時間はたった一晩だけ、翌日にはそれぞれの人生に戻っていかなければ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!己の立場を弁えつつも、立場を越えた友情を温め合う若者達の静かな一夜
古代中華風の世界観で紡がれながら、異世界ファンタジーというジャンルの印象よりも重厚で味わい深い、とても美しい作品です。
民族同士の対立、王族としての権力をめぐる対立、そんな宿命を負いながらも互いの人柄に魅かれ、敵でもあり味方でもあるという複雑な友情を築いたサウレリと弦朗君。
自分の立場をわきまえつつも互いを思い合い、月下で友情を温め合う二人の様子が漢詩的な情趣溢れる詩を織り交ぜつつ描かれています。
現代ではこういうシチュエーションで成り立つ友情というのは存在し難いこともあり、男同士の静かな熱を秘めた固い絆って憧れますね。
この世界観、この二人の若者に魅了された方は、ぜひ本編の方も覗いて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!情誼を結んだ関係の美しさと切なさ
この作品で描かれている男同士の情誼は、現代の男性が日常の生活を送っていては手に入らないと思わせる。
お互いに立場があり、自身の気持ちを優先することは出来ない中、想いを友に託し、友を想う。こうまで深く相手を信じられるには、それなりの壁を乗り越えなければならないだろう。
それはきっと戦だ。
戦という命のやり取りを通して、極限状況だからこそ手に入る信頼。
それがきっと必要なんだろう。
そう考えると、この作品は美しいけれど、背景を思うと、作品内で語られている以上の悲しさを感じる。
女性の作家さんだからこそ、細やかな描写で、雅な空気を纏った男の情誼を描けたのだろうと感じました。
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