情誼を結んだ関係の美しさと切なさ

 この作品で描かれている男同士の情誼は、現代の男性が日常の生活を送っていては手に入らないと思わせる。

 お互いに立場があり、自身の気持ちを優先することは出来ない中、想いを友に託し、友を想う。こうまで深く相手を信じられるには、それなりの壁を乗り越えなければならないだろう。
 それはきっと戦だ。
 戦という命のやり取りを通して、極限状況だからこそ手に入る信頼。
 
 それがきっと必要なんだろう。
 そう考えると、この作品は美しいけれど、背景を思うと、作品内で語られている以上の悲しさを感じる。

 女性の作家さんだからこそ、細やかな描写で、雅な空気を纏った男の情誼を描けたのだろうと感じました。

 6000字程度の作品ですが、考えれば考えるほど、作品世界観に読者を踏み込ませる作品とも思いました。

 じっくり読んで作品世界に耽溺するのもよし、サクッと読んで男の哀愁的格好良さを味わうのもいい。
 是非読んで、楽しんでいただきたい作品です

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