第12話 依頼人はパン屋の女店主でした…
「改めて、このパン屋の店主、エミリー・ローレンよ」
「営業屋のリア・シュテーゲルです」
「営業屋店長の黒崎ミズキです…モグモグ…」
露店街にある小さなパン屋。
ミズキ達は、その店の店主でもある依頼人に依頼内容を聞きにやってきた。
歳は今年で18歳。ロングの赤髪を後ろで一つに結んだポニーテールときめ細かい白肌が目を引く美少女と簡単な自己紹介を済ませるミズキとリア。
「エミリーさん、昨日は声を掛けてもらってありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。わざわざ来てもらっちゃってごめんね」
「ったく、ホントだよ…モグモグ」
昨日ビラ配り中にこの女店主と知り合っていることもあり、今日もリアが話を進めていくのだが…
「…いえいえ!これくらい当然ですよ!」
その表情はイラつきで徐々に引きつっていき…
「いや、本来ならお願いする側の私があなた達のところに出向くのが普通だしーー」
「そうそう。謙虚さが足りないよね、謙虚さが…モグモぐおっ!?」
…遂に我慢の限界に達したらしい。
リアは隣で茶々を入れてくる男の頭を鷲掴みにしながら、エミリーにひきつった笑顔を向け。
「すみません、エミリーさん。ちょっとこのバカ店長しばいてきますんで」
「いだだだっ!ちょっ、マジで頭潰れるって!!」
大の大人の頭が今にも割れるのではないかというほどの握力。
「あ、あの…大丈夫よ?別に私気にしてないし」
今の今まで素直で可愛らしい小さな女の子だと思っていた娘が繰り出す思わぬ怪力っぷりに面食らうエミリー。
「ヤバイ、ヤバイ!今ミシっていったって!」
本気でもがき苦しむミズキを尻目に、さらに握る手に力を込めるリアだったが、
「ほら、店長さんのことは置いといて早く本題にはいりましょ?時間ももったいないし!」
「分かりました。エミリーさんがそこまで仰るなら…」
エミリーの必死の説得に渋々納得し、力を緩める。
しかし、
「やれやれ、すみませんね、うちの野蛮な部下が」
自分の頭を握り潰す手の力が弱まった瞬間すぐに調子に乗り出すハルカ。
「あ、あの、店長さん…とりあえずそれくらいにしておいた方が…」
そんな態度をとればどうなるかなど誰にでも想像できるであろうに…
「いやぁ、 お客さんの前で暴力沙汰とかホントないーー」
「あの、ミズキさん、少し静かにしててもらえますか?」
「ぐふぁっ!」
案の定、そのイラつく態度は再び隣の怪力娘の怒りを買い…
「すみません、エミリーさん。ようやくうるさいのが片付きました」
25歳のダメ店長は、見た目13、4歳ほどの少女のノールック裏拳を喰らって呆気なくノックアウトされた。
一回りほど年の離れた少女に一発KOを喰らい、ピクリとも動かない貧弱な青年と…ニコニコと何事も無かったかのような様子を見せる小さな少女。
「さあ、それでは早速本題に入りましょうか?」
「そ、そうね…」
(この人達、本当に信じていいのかしら…?)
そんな光景を目の当たりにし、エミリーは不安を覚えずにはいられなかった。
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