第4話義務感とのせめぎ合い

長い手術だった

待合室には、知らせを聞き

田舎から出てきた彼の御両親

そして弟さんとその家族と私がいた

時折時計を見る以外することもなく

時間だけが過ぎていってたその時

「もうダメなんじゃない?」

明るくはっきりした義母の声がした

この人は何を言ってるんだろうと

反応もできずにいると

さらなる言葉が続いた

「頭をあけてみたら、

 これはだめだって

 また閉じてるとこなんじゃないの

 うふふ」

誰も何も言わない、、

義母を見ると一応泣いているので

それならもっと早く終わってる

はずですから大丈夫ですと

声をかけたものの

今考えると本心が

どこにあったにせよ

そういう無神経さが息子にそっくり


しかも彼の御両親は

手術が終わる前に

こそこそと話し合い

とっとと帰って行った

なんでも近所に配るものを

預かっているから

どうしても帰らなくちゃならない

そうだ

泊まるとこなら弟さんたちの家が

あるからそういう理由じゃ

ないことは確か


でも理由なんかどうでもいい

私と娘は見捨てられたんだと

はっきり悟った

そのくせ私には

よろしくお願いしますと

深々と頭を下げていった

まるで他人にするように


できることはなんでもするから

うそでもそう言ってほしかった

この人たちには何を言っても

無駄なんだろう 

力になるという気すらない

もうだれにも頼れないんだ

私はトイレに駆け込み泣いた


その後次々にお見舞いにくる

オットの関係者たち一同からは

面倒を見てあげてください

と熱心に頼まれた

なにしろ外では決して怒らない

優しくていい人だから、、


頭を下げられる度に

私の心は冷え冷えとしていった

なぜ私がこんな人の面倒を

見なくちゃならないの??

毎日毎日心の中で問い続けた


でも現実的に御両親は田舎だし

もとより面倒をみる気もないし

兄弟二人も家族があるし

近くにいるわけでもない

私に逃げ道があったんだろうか?

私の母でさえ面倒みてやれと

言っていた

彼の外面はまさにパーフェクト



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