第7話精神科と義理の兄弟

病院の帰り道で

殴りかかったあとで

冷静になってからよく考えたら

おれはやっぱりお前のことが

好きだと思ったと

彼に言われたが


もはや意味が分からない

それはDV男の言い訳?

精神科を持ち出されたので

不安になって言ってるだけだろう

彼が私を信じてないというように

私もまた彼の言うことは

これっぽっちも信じられなかった


とにかくなにより離婚届に

サインをしてもらうことにした

ややためらう風を見せたが

私は後戻りをする気はなかった

そしてサインをもらってからは

彼を名字で呼ぶことにした


離婚届の証人の一人は兄に頼んだ

私の話を聞いた兄は

びっくりはしたものの

反対は一切しなかった

そしてもう一人の証人は

相手の兄弟に連絡して

なってもらった方が

あとあと揉めなくていい

と意見をされた


そこで彼に電話で弟さんに証人を

頼んでもらうことにした

しかし彼が話し始めたのは

なんか家でもめてて

俺が家を出なくちゃならないと思う

というまるで自分には落ち度が

ないかのような話しぶり


案の定

弟さんが電話の向こうで

驚いて怒ってるらしい

彼と同じ、なんで見捨てるのか

といったところだろう


どうやら話しが証人のとこまで

いきそうにないので

途中で電話を代わってもらい

いままでの流れをざっと話し

殴りかかってきたことも話したが

きれいにスルーされた

ノーコメントか

無反応か

あなたが怒っているのは

自分に面倒がふりかかるんじゃないか

という心配だけなんだね


それでもとにかくむかつきながらも

お願いしますと離婚届の証人を

頼んではみたが

とにかく精神科の受診が

終わってからの一点張りで

引き受けるとは決して言わない


これはこの一族のノーの答え

電話で話してても

自分たちに都合が悪い話だと

話の途中でも、

いきなりまたねと一方的に電話を切る

そして話はそれっきり


ふざけんな

これ以上踏みつけにされてたまるか!

私は切れた


じゃあこちらで他の方に

お願いするからもう結構ですと断った

おそらく怒っただろうが

もうどうでも良かった

他人なんだから


もし無理やり弟さんに送って

離婚届を握りつぶされでもしたら

一巻の終わりだし

そんな危険はどうしても

たとえ兄に叱られても

おかすことはできなかった

そしてこの弟さんの態度に

また私は深く傷ついた


それでも精神科の受診が待っていた

予約は取れないというし

家族が必ず一緒に受診ということで

くたくたに疲れ

フラッシュバックのように

辛かった感情がふいによみがえり

動悸が止まらない時があったが

とにかく行かなければ

何もかも早く終わらせたかった

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