10月15日
「それで?」
Ⅰが興味深そうに、俺の両目を覗き込んでくる。俺は彼女から目を逸らしたまま、冷え切ったカフェモカをじっと眺めている。
なぜって、この続きを喋ったその段階で、俺の自分語りは終わりを迎えてしまう。そして、自分の話が終わった後にいったい何が起きるのか、俺にはさっぱり分からないのだ。
Lの自殺が確定した今日、自分は恐ろしい偶然と立ち会っているのかもしれない。ここになんらかの必然性を見出したその時点で、俺はと同じように狂い始めてしまうかもしれない。一度踏み外した人間がどうなってしまうのか、俺は嫌という程知っているつもりだ。
俺は一息ついてから、正面を向く。ここは夜の喫茶店で、俺はただおしゃべりを楽しんでいるだけ。Ⅰは少し変わっているが、決して悪い人じゃない。家に帰れず、途方に暮れていた俺に気づいて、彼女は声をかけてくれた。たったそれだけの関係だ。
だけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます