10月15日

「それで?」


 Ⅰが興味深そうに、俺の両目を覗き込んでくる。俺は彼女から目を逸らしたまま、冷え切ったカフェモカをじっと眺めている。


 なぜって、この続きを喋ったその段階で、俺の自分語りは終わりを迎えてしまう。そして、自分の話が終わった後にいったい何が起きるのか、俺にはさっぱり分からないのだ。


 Lの自殺が確定した今日、自分は恐ろしい偶然と立ち会っているのかもしれない。ここになんらかの必然性を見出したその時点で、俺はと同じように狂い始めてしまうかもしれない。一度踏み外した人間がどうなってしまうのか、俺は嫌という程知っているつもりだ。


 俺は一息ついてから、正面を向く。ここは夜の喫茶店で、俺はただおしゃべりを楽しんでいるだけ。Ⅰは少し変わっているが、決して悪い人じゃない。家に帰れず、途方に暮れていた俺に気づいて、彼女は声をかけてくれた。たったそれだけの関係だ。


 だけど。

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