籠・水・他
年が明けたらペットボトルの圧縮機を買おう。飲み終えた麦茶やコカ・コーラのボトルを綺麗に洗って、飲み口に付いている輪っかすら取り去って純粋な透明色になったなら、水切り籠に綺麗に並べ、静かに消散していく細かな水滴をじっと眺める。それからそれらすべて圧縮機にかけて、真四角にしてやろう。
恋人と別れた翌日、私は図書館へ行き園芸に関する本を適当に数冊めくった後、ホームセンターで中米原産の低木を買った。水を遣り葉を拭き、陽が強すぎれば鉢を動かす私を、友人は人の空白に植物をあてがっているのだと評価した。それが理に適っているというだけの理由で、事実そうであるように思えた。
十日に一度、あの街へ行く。葉脈のように入り組んだ道を歩けばそこに着く。まだ夏の日の朝、駅を離れると蟬の音が静寂を際立たせていた。路地の奥へ走り去る小さな影だけが、視界に入って立ち止まる。どこかで歓声が弾ける。私は軽い眩暈を覚えながら、カーブミラーに映る湾曲した面持を見つめていた。
世界都市時計を見るため走り始めから発情した犬のような音を発していたエンジンが砂埃のせいですっかりイカれてしまってからもまだ五百マイル走らねばならない。道中分裂を繰り返す胚のように増殖していく露店に並ぶ串に刺さった球体は時計の眼球で俺はその灰褐色の視線から逃れられない気がしていた。
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
が、この箱を滅ぼしたんだって。知ってた?
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