報告・連絡・相談

へやで一人頭を抱える僕の傍に何時からなのか君がいて、「なになんか困ってんの?そんなときはネバ瀧さんに相談だ」と云った。ネバ瀧――どこかで聞いた気もする名前だった。いやそんな訳はない。仕方なく僕は君にこう尋ねた。「ネバ瀧って誰」「えー?」君が云った。「ほら君ん家に居るなんか黒いやつ」




街をぶらついていると、ふと親子の会話が耳に入った。「……ねば滝もないってね」ネバ瀧――それは正に今僕を悩ませている名詞だった。それこそ僕をして街を彷徨わせしむる元凶だった。僕は堪らず駆け出した。君が並走してくる。「知ってる?」君は云った。「ネバ瀧さんの単位、バレルだって」石油か?




「知ってるんだぞ」僕は云った。いつものように何時からなのか、傍に君がいる。ネバ瀧――それは君と共に現れ、僕の意識に棲みついたのだ。「ネバ瀧なんて名前の奴いるか!」その言葉はある種禁忌タブーに触れるものだった。「そんなこといったら」君は云った。「私だってそうじゃん」僕は室に一人残された。

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