視えない俺と見えない貴女
勿忘草色の眼は
凍り付いた白になっていた。
過去を思い出すことしか出来ない白亜の瞳
その眼で、愛した町を見下ろして、
貴女は、
鈴の様な声で優しく微笑む、
「君と見た景色だってそこにはあるのに
君はいない。
私の眼には何も映らない
でもね、
君を置いて、
世界は回る。」
そんなことはない、
まだ、
此処に居る。
此処に居る。
その声は、貴女に届く訳もなく
歪な歯車を回す様に、貴女は車椅子を回す。
次第に、先端へ近付く、
風が近くなっていく。
それを止めたいのに、
どうしても止めたいのに。
この手は全てを擦り抜けてしまう。
そう、景色に溶けているのは
まさに俺の方だ。
ふと貴女は、振り返る。
それにつられて、俺も振り返る。
憂色に染まった国民達が、
貴女の死を止めようと集まっている。
そう、貴女は愛されている。
西の魔女を殺した貴女は、
誰よりも愛されている。
東の技師にも、
北の聖女にも、
果ては南の総統にも。
だからこそ、貴女を誰も殺せない。
貴女を唯一殺せる方法、
それは自身が死を望むこと。
そのために、俺は貴女と出会った。
貴女を殺すのでなく、
貴女を、死なせる為に
それ以前にも大勢の人が、貴女と出会った。
けれど、
貴女が選んだのは俺だけだった
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