廃墟は憂暮れ時に、





ノアの読み通り、

会議が終わった時には青空は沈んでいた。





穏やかな夕焼けが、廃墟の国を包む。





これを、夕暮れ、

或いは憂暮れというのなら、


この悲しみも、終わるのだろうか。







奥の間から帰って来た王が玉座に座り、

その傍には側近。




そして、多くの貴族や、騎士が

王を囲う様に並び、黒と白を見下ろしている。




その眼は据わっていて、

終わりなのに、生命を感じる眼。




本当に野菜を見にいっていた少年は、

土に塗れた様子が微塵もなかった。




椅子から席を外し、

形式上、とばかりに王に跪いている。



しかし、白い手袋は外していない。

飽くまでも自身が上である、という証だ。








それなのに、

その態度が相応しく感じてしまうのは、

彼が、あのノアであるという確信からである。









救世主が、膝を折っている。

それだけで十分であった。










ベリルは黒い手袋を外し、王に跪いていた。

その精悍な眸に孕むは、

仄暗く凍てつく、底なしの深淵。





この飛行艇國の人々が取り囲む中、

王は、また、大きく息を吐く。








「――答えは決まった。」







そして、吐き切る。


表情は堂々とした風格が貼り付けてある。

王は、彼らに厳かに一歩ずつ近づく。





答えは決まっているのだ。




そして、

少しだけ斜めへ進む。






一方へ、真っ直ぐに近付き、周囲もそれを見守る。



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