手を伸ばした先に、



王は白の少年の条件を

呑もうとしているのにも関わらず、


少年の方から願い下げと言わんばかりに、

林檎を取られ、自分自身で齧っていた。


「……な、なんだそれ」


「お望み通りの反応、どうも。


けどな、これは死を覚悟した人間に

与えられる恩恵であるが、呪いの一種だ。


この国は、まだ生き返ると言うのなら、

下手に干渉したくない」










「まだ、出来るだろ?」


救世主は、先輩面して笑った。




少年は、その言葉の重みを感じながらも、

彼に一礼をした。




すると、少年はその意図を理解し、

左に二歩進むと、


親指を立てて年相応に笑った。

















人に縋ろうとしかしない大衆














壊れかけてまで

国を守ろうとした摂政。















自分のことで精一杯だった時には見えなかった

人々の枯れて、落ちていきそうな姿。






こうしたのは、きっと自分だ。

しかし、それを考えると全てに潰される。






これから、どうするかを考えなくては。












王は進む。




















そして、立ち止まった。

















彼が手を取るのは、

黒でも、白でもなく












「王として認めて欲しい」

――弱り切った摂政だ。










摂政は、

差し出された手に戸惑う。





声さえも掛けられず、

捨て置かれるのかとさえ思った。









こんな落ちぶれた摂政に

   許可などもらわなくても、



彼は誰がどう見ても王なのだ。








反対に、

「今の、この手を握ることは――…」

躊躇い、その眼は左右に揺れ動く。





手を伸ばすも、身体が震え、

その指先に、周囲の興味が集まる。





自分自身が、余りにも惨めに見える






痺れを切らした王は、

摂政の震える手を握った。



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