その色さえ、禁忌


そして、今度は方舟の少年にも

小さな睨みを利かせる。




理由はない。

何となく、上から目線だったから

此方も睨んでみただけだ。




何故か少年は安堵した様に、

犬歯を見せて笑う。




しかし、一瞬だけ表情を陰らせた。





「一つだけいいか?」

飄々とした笑みで、少年は問う。








「この道は、

用意した二つの道よりも険しい



なんせ、道すらない道だからな。





全てを失うか、全てを手に入れるかの二択だ」








王は、白い少年を射抜く様に見る


「ノア様の道なら、どうなってた」




少年は、折った膝を戻す。


すると、穴が開いた天上から

    一つの林檎が降ってきた。





少年はそれを手に取ると、王に差し出す。


変哲もない赤色の林檎だ。




「一週間だけ、

平和で幸せに暮らせる猶予を提供する。


遺言なら、

どれだけ遠い未来でも届ける」





「その後は、」



「そっからは、

全く手を貸さねェし、

黒船の干渉の一切が受けられなくなる」



目を丸くして、少年を見つめた。


黒船の条件が条件だったから、

   余りにも好条件に見える。




「それなら、それを――」


王は、少年の林檎に手を伸ばす。

その林檎に触れる。




触れた指先の熱が、

赤色の林檎を、金色に染めていく。





しかし、

手を伸ばし、その金色になった林檎を


咄嗟に下げて、挑発的に笑う。


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