今まで通り、






夕暮れに染まった摂政の眼には、

確かに困惑の色があったが、

  それこそ人らしい表情だ。


           虚ろではない。





王は安堵の溜息を吐いて、

  握っていた手を、優しく解く。













「これは我儘だ。

  それでいて、命令だ。」


優しい我儘だった。

それでいて、優しい命令だった。









摂政も、

罪悪感を必死で抑えて、


かつて剣技を教えた頃の表情を作ると、

自然と、当時の感情が戻ってくる。








先程まで、震えていた手も、声も、

全て、温かくなっている。










困っていて、

それでいて、嬉しそうな笑みを、

浮かべた摂政は、







今まで通り、

彼の手を握り返した。










――♠







「手差し出して、

跪いてた俺らの馬鹿らしさったらねェわ」





「?

跪くぐらいで何を言う」





「お前はそうだろうよ

あと、お前キレすぎてて笑える」





「別に怒ってなど、

しかし、理解されないのが、」





「気付くの遅かったんだが、

今回、温和に見えて過激だったからな?」




「実弾は撃っていないが、」





「……は?


まあ、黒船基準で言ったら、

強行はしてねェし、許容範囲か」



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