終わりの國から始まる話(上)
蒸気船と廃墟の国
飛行艇國の終わりには、
その終わりを救うかの様に、
或いは壊すかの様に
夜の一隻が、立ち現れる。
夜霧を払う真黒の蒸気船
それが告げるは、飛行艇國の死
終わりの黒船
人々はそう恐れるが、
孤独な黒船の外交官は、
凛然と返す。
「終わりではなく、
続きの為、黒船は来航する」
、、、
その続け方は、
魔術にも劣らぬ化学の禁忌だが、
それを彼は、
全ての希望だと、
誰よりも篤実に伝える交渉人だった。
―――――♠
硝煙と蒸気で廃色になった国
動力である歯車も戦場の血で錆び付いている
悲鳴をあげ、軋み、歪に回り続ける
薄闇を纏った玉座に座るのは、
陰鬱な眼をした少年の王。
「もう、この国は
終わる…の、だろうか…」
小さな彼の独り言は
ぽつり、雫の様に落ちる、
その言葉は、沈むだけだ。
無機質な鍍金の床底に反響さえしない。
しかし、一人がその声を拾う。
「そんな…こと……は……」
彼の世話役かつ、
政治指導をする摂政の声。
声は、王よりも震えている。
しかし、
波紋の様に広がり、
小さな国の民衆全域へと響く。
その様に、王は苦虫を噛む。
金属で作られた球体関節の
機巧の義足を見て、自嘲する。
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