少年が王へと落ちるまで
幼少の頃の王は、
憧れ以外を拒絶していた。
たくさんの兄達が
英雄の真似事をしているのを見ては
剣技ではなく、立ち振舞いに拍手をした。
成長するにしたがって、
兄達が真似事が実用的に変わっていく。
英雄ごっこから、戦争ごっこへ。
齢14ほどの少年だった。
人殺しと、英雄の違いを
理解出来るほど大人ではない。
彼は、兄達に失望した。
そして、書物の英雄に
かつての兄を見出そうとした。
――しかし、その日々は
父の死、王の死によって終わる。
兄達の真似事は
ついに本物になってしまった。
王位争いで
兄達は惨い殺し合いをした。
自分の憧れが、汚れて、形が変わっていく。
書物を読んでいても、
兄達の刃が鳴り止まない。
耳を塞いでは、
反対に書物が読めない。
物音が煩くて、中庭を横目で見る。
目を疑った。
いや、知っていたけど知らないふりをしてた
とうとう目の当たりにしてしまった。
瀕死の一人の兄を、
たくさんの兄達が取り囲む光景。
――これは、
英雄なんか、じゃ、ない。
気が付けば、足が動いていた。
その兄を助けようと、飛び出していて――
目の前には、欲望の色をした兄達の
無数の鈍い刃が
足に、
無数に、
無数に、
―――……っ、
僕の、英雄と、は
もちろん、周りは隠そうとした。
しかし、噂は、伝播する。
湾曲し、物語となり、語られる。
兄達は悪者として描かれ、
彼は悲劇の王子と謳われた。
悪評のせいで兄達は追放され、
可哀想な王子として祭上げられた彼こそが
王にふさわしいと言われた。
心優しい王、だと謳われれば通りは良いが、
要は一番の臆病者。
城内では兄達を追放した厄介者として
扱われるようになった。
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