終わりの國から始まる話(中)
真水で魚が泳ぐ倫理で、方舟は泳ぐ
「それは、倫理的に正しくない。
分かってるんだろ?」
夏の北風、冷涼な声。
その声は闇を断ち切る。
姿は見えない。
涼やかな声が
青空に響く純潔の水より、透明な声。
白い言葉に、
王は沈んでいた眼光を取り戻す。
摂政も手が震え、
その場で凍り付く。
人々が、空を指差していた。
青空が映る小窓に黒い点が見える。
民衆は、望遠鏡で見上げる。
白い方舟だ。
「……ノア、か。
よく働く紀元前の遺物だ、」
外交官は、先程の従順な様子とは
一転した年相応の声で呟く。
「聞こえてんぞ、ベリル。
相変わらず、
死の続きが云々……飽きないよなァ?」
それと似たような声色で、
しかし、楽しそうに響いてくる少年の声。
聞こえる声に飛行艇の人は動揺するも、
淡い期待を、その舟に寄せた。
黒船の来襲、そして救世たる方舟の漂流。
白の方舟、
有名な救世主が乗る舟だった。
神は怠惰な人間を、
大洪水で一掃しようとした。
その際、唯一の善良とされた少年
神は、彼に洪水を逃れる手段として
方舟を作らせて、生き残らせた。
それが、白き方舟。
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