死を否定するは、終わりの使者
死が、近い。
これを救えるのは、王だろう。
しかし、
哀れみの少年王に期待するものなどいない。
歪つで、鈍色で、何もかもが淀んだ空間。
しかし、刻まれる時計の秒針。
その秒針に合わせる様に、
規則正しい靴音が近付いてくる。
飛行艇国に降りた黒船。
その外交官は、
市民の視察を終えると
王の間へ訪れたのだ。
死を意味する船から
降りた彼だけは、
黒死の双眸に、
確固たる意志を宿している。
貴族達や兵士達の様子を淡々と、
しかし、義気と見つめる。
玉座から流れる
薄汚れた赤い絨毯を進み、
王へと続く階段まで着くと、
立ち止まる。
黒い青年は、
目深な軍帽越しに
哀れを詰めた王へ視線を向ける。
――この国の死を、迫られる。
その少年は、淀んだ瞳で、
待ちたくない最期を、
受け入れるしかなかった。
恭しく背徳感を纏う外交官は
精悍で実直な声で、
しかし、淡々と問う
「それで終わりで良いのか」
少年は、眼を丸くした。
――――死神から、
生の宣告を受けられているのだ。
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