概要
『この物語には、ひとつだけ大きな嘘が混じっています』
何田何子——通称ナニコの中には、無数の〈十五センチ〉が潜んでいる。
手のひら。
目尻から顎の先まで。
へそから腰まで。
後ろを振り向く時。
拍手をする時。
歩き出したその一歩目。
会釈をする時。
「そんなことないよ〜」と謙遜する時の、手。
国語の教科書を読み上げる時、教科書を顔から十五センチの距離に持ってくる。
まるで黄金比のように、十五センチという取るに足らない距離が彼女の中に無数に隠れている。
——だから俺は、彼女に恋をしたんだ。
手のひら。
目尻から顎の先まで。
へそから腰まで。
後ろを振り向く時。
拍手をする時。
歩き出したその一歩目。
会釈をする時。
「そんなことないよ〜」と謙遜する時の、手。
国語の教科書を読み上げる時、教科書を顔から十五センチの距離に持ってくる。
まるで黄金比のように、十五センチという取るに足らない距離が彼女の中に無数に隠れている。
——だから俺は、彼女に恋をしたんだ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ただ彼女のための15cmを読む
1cmずつ紡がれていくナニコの物語。
限りなく密度の増していく15cmに込められた美しさとたった一つの嘘。死して揺るがず、絶対という言葉は彼女たちのためにあったのかもしれない。そんなお話です。
ショートストーリーという制限の中で簡潔に淡々と語られる世界観と、ナニコの持つ15cmの豊富さに次のページを捲る手が止まらないのは私だけではないと思います。あらゆる要素をふるいにかけて、残った言葉は全てが意味を持っている。一文字一文字を追った先で、進んだ距離分のナニかが訪れることでしょう。
読めばきっと、探したくなる15cm。では、私もナニコの所へ。