『ギフト』を持っていながら、それが周囲に影響をまったく及ぼさず、まるで『スクラップ』持ちであるかのような雰囲気を醸し出すというのは、どういうことだろうか。

なに——通称ナニコは、俺の目には奇妙に映った。好きな人を『奇妙』と形容するのはよくないかもしれないが、そう思ったのだから仕方ない。

もう一度言う——ナニコは、奇妙だ。

学校生活において、彼女は何も目立ったことをしていない。

まず、部活動に所属しておらず、委員会などにも入っていない。特別頭が良いわけでもなさそうだし、授業態度は可もなく不可もなく。たまに眠そうに目をこすっていて、基本的にテンションは低そうだ。かと言って影キャとか根暗という感じでもなく、見ている限りコミュニケーションは普通に取れる。グレているわけでもない。どこか達観したような雰囲気を纏ってはいるが、髪型は軽めのボーイッシュなショートヘア。つかみどころがないが不思議ちゃんという訳でもない。友達といるところを見たことはないが、たまたま俺が見ていないだけかもしれない。ただ、もし友達がいなかったとしても、悲壮感はない。マイペースに人生を送っているという感じだ。

『ギフト』を持っているとは到底思えなかった。


×


それから、俺の観察のテーマは二つになった。

ひとつは今まで通り、ナニコの中にある〈十五センチ〉を探ること。

そしてもうひとつは——ナニコの『ギフト』の正体を探ること。

俺は彼女の登校から下校までの間、怪しまれない範囲で最大限、ナニコの行動を観察し続けた。

見れば見るほど、ナニコは魅力的だった。

彼女の中に〈十五センチ〉は無数にあった。すべての挙動の中に必ず〈十五センチ〉が見受けられた。

無意識にそうなってしまっているのか、それとも意図的にそうしているのかは不明だ。しかし、そのことを知っているのは俺だけだという事実が、俺を高揚させた。二人だけの秘密を共有しているような、甘やかな気分。


しかし、それ以外は何も判らなかった。

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