10

帰り道。

——本来であれば、ナニコと歩いていたはずの道。

今、俺の隣にいるのは升野だった。

「そういえばお前、能力が『スクラップ』から『ギフト』に変わってるけど、その——ナニコって人と関係があるのか?」

「俺の能力が『ギフト』に?」

「ああ。今日から変わってた」

考える。……結論はすぐに出た。

「関係あるはずだ」

ないはずがない。ナニコが消えたことが俺の能力に作用しているに違いなかった。……それが何を意味するかはわからないが。

置き土産というやつだろうか。

置かれた方の身にもなってほしい。

「ナニコ……」

宇宙の果てにいるナニコ。俺の手が届かない十五センチ先に行ってしまったナニコ。

ナニコ。ナニコ。ナニコ。

俺が恋した人。

……ああ、苦虫を噛むとはこのことか、と合点が行った。

本当に苦いんだな。

「なあ」

などと考えていると、背後から声がした。

それは、いつの間にか立ち止まっていた升野からだった。

「なあ——」

升野は何かを迷っているような仕草で、伏し目がちにポツリと漏らした。

「……じゃ、ダメか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る