ダンジョンの女子トイレにて

 今回は、ダンジョンの女子トイレの掃除風景を見てみよう。


 と言っても、実はここは、つい最近まで女性冒険者達が、セルフで掃除を行っていたのだ。

 ただ、それはあまりにも負担であり、また終盤の方のトイレなどは、誰も行く者がおらず、モンスター達も掃除などしなかった為、かなり汚れていた。そこで魔王は、あるモンスターをトイレ清掃員に使命したのだ。


「♪フンフンフ~ン。今日も便器さんを綺麗綺麗よ~」


 そのモンスターは、お尻には悪魔の尻尾、額には立派な悪魔の角を付けた、サキュバスクイーンであった。ただその姿は、つなぎとゴム長靴にゴム手袋、色気も何もなかった。

 一応、胸元は大きく開けていてはいるものの、それでは微妙であった。だがそうしたのは、せめて少しでも色気を出そうとした、サキュバスのプライドだった。


「ふふ、今日もお掃除楽しい……わけないじゃない!!」


 そして、鼻歌を止めたサキュバスは、半ばキレ気味で、手にしたブラシを便器に叩きつけた。


「くぅ……あれから2週間ほどで出して貰えたけれど、なぜかずっとトイレ掃除をしていろって言われたわ。なんなのよ、私が何をしたのよ!」


 そう、以前彼女は、魔法使いの少女を罠にかけ、タップリと弄んでいたため、自分の用意した個室トイレに、閉じ込められてしまったのだ。

 ただその時、その魔法使いの少女も一緒だったため、むしろラッキーと思った彼女は、魔法使いの少女を、思う存分可愛がっていた。


 少女のご飯も、魔法で外から持ってこられたので、それを餌に、色々な事をしていた。本当に、サキュバスは幸せだった。

 徐々に堕ちていく少女、そして満たされる自分の欲望。一生このままでも良いと、サキュバスは思っていた。


 だが、幸せは長くは続かなかった。

 2週間後、その場所から聞こえてくる甘い声の数々に、またしても魔王がキレてしまい、壊れない壁を取ると、そのままサキュバスを引きずり出し、魔法使いの少女と引き離してしまったのだ。


「はぁ……あの子はどうしているのかしら……」


 そして、サキュバスは魔王から、初心者ダンジョン以外の女子トイレの掃除を、命じられたのだ。なぜ初心者ダンジョン以外かと言うと、魔法使いの少女と会わせない為でもあった。


「あっ、サキュバスさ~ん、お疲れ様です」


「あら、エキドナちゃ~ん、お疲れ~」


 その時、サキュバスが掃除しているトイレに入って来たのは、上半身が美女、下半身が蛇をしていて、背中に翼の生えたエキドナであった。


「サキュバスさん。最近元気ないですね。何かあったんですか?」


「ん~ちょっとね……トイレ掃除が億劫なのよねぇ……」


「そう……ですか。あの……宜しかったら、また私が……」


 そう言いながら、エキドナは蛇の下半身をくねらせ、頬を赤く染めている。


「ふふ……そうね。でも、ごめんなさい。そんな気分じゃないの……」


「そう……ですか。でも、私はいつでも……」


 そう言うとエキドナは、そそくさと個室のトイレへと入って行く。ちゃんと『エキドナ専用』と書いてあるトイレに。


(蛇ってねぇ……総排出腔そうはいしゅつくうだから、小と大が、一緒に出て来るのよねぇ……それにアレもねぇ……)


 説明すると、鳥や爬虫類等は、特殊な排泄をする。小と大が一緒に出て来る仕組みであり、また……卵が産まれる場所も、そこからだった。


 つまり、総排出腔とは読んで字の如く、全てそこから出て来る様になっている。便も卵も、その他も全て……。


「あっ! サキュバスさん~お疲れ様~」


「あらお疲れ、ハーピィちゃん」


 そうやって、笑顔で返すサキュバスだが……。


(あの子もエキドナと一緒で、全部……)


 内心そう思っていた。


 そして、ハーピィが『ハーピィ専用』のトイレに入った後、残りの便器を掃除しだしたサキュバスだったが、そこであるものを見つけた。


「あら……これは」


 そこには、血が付いていた。


 女子トイレに血……つまりはそう言う事である。


「ふ~ん……ちょっと、賭けてみようかしら。お腹空いたしね」


 サキュバスの食事は、淫気か、男を知らない少女の体液であった。体液なら何でも良くて、それは女の子の、あの血でも良かったのだ。


 しかし、ここの便器に付いている血が、サキュバスが欲している血かどうかは分からない。それこそ、賭けであった。


 そして、サキュバスはゆっくりと、その血を指に取ると、口元に持っていく。どうやら、まだ乾いていなかったようである。そのまま、サキュバスは血を舐めると、その後直ぐにえづき始めた。


「うぇぇえ!! やっぱり……違う! これ、ヤ(自主規制)の血じゃない!!」


 流石にモンスターとなれば、人間とは勝手が違い、純潔を守っている者などそうそういなかった。


 するとその時、誰かがトイレの入り口から顔を覗かせる。


「誰……?!」


 普通は堂々と入ってくるのに、それは中々入って来ないでいたので、サキュバスはつい、そう怒鳴ってしまった。

 さっき舐めてしまったもののせいでもあるのだろうが、サキュバスは苛立っていた。そして怒鳴られた事で、トイレの入り口から様子を伺っていたその子は、顔を引っ込ませてしまう。


「あら……その魔力……リルちゃん?」


 しかし、流石はサキュバスクイーン。隠れたその人物の魔力を感知し、それが誰かを言い当てたのだ。


 そして名前を呼ばれた事で、再びその子は、トイレの入り口からヒョッコリと顔を覗かせる。


「あら~! やっぱりリルちゃんじゃない! どうしたのぉ?」


 そう、その子は、以前サキュバスクイーンと共に閉じ込められた、魔法使いの少女、リルであった。

 それを見たサキュバスの顔は、満面の笑みを浮かべていた。正に悪魔のような笑みを……。


「あ、あのぉ……おトイレを」


「えっ? 待って……ここは中級者のダンジョンよ、あなたの力ではまだ……」


「だ、だから私……強くなってここまで来たんです! お師匠様の元で再度修行して、強くなったんです!」


 そう、あれから少女はひたすらに魔力を上げていき、遂には中級者のダンジョンにも挑める程になっていた。


「あらぁ……そんなに。確かに、魔力の桁が違うわね。それで? また私を倒すって言うのかしら?」


「うぅ……そ、そうです! 他の女性達も安全におトイレする為に、私があなたを!」


「と言うのは建前じゃないかしら?」


「はわっ!! いつの間に?!」


 リルが来てから、サキュバスは上機嫌である。しかも、動きも機敏になり、あっという間に少女の背後に回っていた。そして後はもう……前回と同じである。


「本当は、私と続きをしたくて、やって来たんじゃないかしら?」


「はぅ……ち、違いますぅ!」


 なんの続きなのやら……とにかく、サキュバスはそう言うと、少女の首筋に舌を這わせていく。


「私は……他の女性達が、あなたに襲われない為に……」


「あらぁ……それなら、あなたがずっと相手してくれても良いのよ? そしたら、他の女性冒険者達は襲わないって、約束するわ」


「へっ? えっ……」


「もちろん、私のお手伝いもしてね? だけどその代わり……」


 少女の耳元でサキュバスはそう言うと、少女の耳に息を吹きかける。その度、少女は小さく身体を震わし、何かを我慢していた。


 そして……。


「も、漏れる……」


 少女はお股に手を(以下略)


「あら……そう言えばおトイレだったわね。ふふ……それじゃあ、またシーシーしましょうねぇ。それと、後でトイレ掃除も手伝ってねぇ~」


「はわっ?! ト、トイレ掃除って何ですか!! 離して下さい~!!」


「誰も掃除しないから、嫌になってたのよね~良い子が見つかって良かったわ~それと、しばらくご飯の心配はしなくて良いわね」


「私、まだ返事してませ~ん!!」


「その割には、抵抗が見られないんだけどね~」


「うぐっ……!」


 サキュバスにそう言われ、少女は顔を真っ赤にして俯かせてしまった。

 2週間……だがされど2週間。サキュバスにとってそれだけあれば、人間の女子を陥落させるには、十分な時間であった。


 いや、実はリルは、3日で陥落されていた。


 つまり、彼女がここのトイレに来たのは、サキュバスの言う通り……。


「あの……痛く……しないで下さい」


 そして、少女はサキュバスに抱きかかえられ、個室のトイレへと消えて行った。

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